第27話:おにゃんこ大戦争

ボルヴィキーニ伯爵の娘、ミネーラさんの愛猫ニャンニャンを探していたところ、ダンジョンの外で黒い大きな化け物と遭遇した。


「冗談だろ?」


「冗談違うのです。あの黒い魔物、ニャンニャンと同じにおいするのです。」


「マジかよおい。」


ニャンニャンは、猫特有の威嚇を続けた。


「とにかく、こいつを無傷で届けないとお嬢様から信用を勝ち取れないぞ。」


「旦那!あの化け物を無傷でどうやって?!」


俺は、空気の膜をみんなに付与した。


「手はある。モーナ、スキルでこの場にいる全員を包み込めるか?」


「お任せを!」


そう言ってモーナは、ニャンニャンを含めた全員を大きな闇で包み込んだ。


「ここは?一体。」


「皆さん。こっちです!私についてきてください。」


「え?え?どうなってんだこりゃ?!」


「兄貴、周りが真っ暗なのに全員の姿が見えますぜ!」


「ジャブ、チャールズ、ジェネル、ソーニャ!モーナに向かって走れ!」


5人は俺に言われるがままモーナに向かって走った。


ニャンニャンも獲物を逃すまいと追ってきた。


「モーナ、伯爵様の屋敷の方角を覚えているのか?」


「いえ、ですが、こういうところでの私の勘は冴えているのです。道に迷ったことは一度もありません。」


「信じるぜ!モーナ!!」


モーナはなぜか耳を赤くして小さくうなずいた。


「ちょ、ちょっと待ってくだせぇ!旦那ぁ!!」


「どうした?ジャブ!!」


「まって、ぜえ、おれ、ぜえ、モー走れねぇ・・・。」


んー!ジジイ!!


「ソーニャ!悪いがジャブを背に乗せて走れるか?!」


「ご主人様の命令とあらば・・・。」


「済まねえ、嬢ちゃん。」


疲れからか全員が沈黙してしばらくたつと、モーナが口を開いた。


「みなさん!ここで止まってください!!」


モーナはそう言うと、自分を含めた全員を地上へ戻した。


当然、いきなり出て来たものだから兵士たちは腰を抜かした。


それは、ミネーラも同じだ。しかも運の悪いことに、ミネーラのそばにニャンニャンを出現させてしまったようだ。


そして、ミネーラを見るや否やニャンニャンは、主人に向かって鋭い爪で引き裂こうとした。


「あ、ああ・・・。」


「お嬢様!」


メーテルはミネーラをかばった。スキル発動が間に合わない。そう思ったその時。


ガキイン!金属音がしてニャンニャンの折れた爪がそばに落ちた。


「大丈夫ですか?お嬢様。」


「イロハ!助かりましたわ!!」


イロハと呼ばれた女性は黒髪のポニーテールで、日本人らしい顔立ちをしており剣の見てくれは日本刀そのものだった。


「化け物め!成敗してくれる!!」


「まって!それは私の愛猫ニャンニャンなの!!」


「え?これが、お嬢様の・・・逃げ出した時はもっと小さくて愛くるしく・・・。」


「あ!イロハ、危ない!!」


言い終わらないうちにニャンニャンはイロハに向かって爪を振り下ろした。

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