第26話:お嬢様の愛猫探し
ボルヴィキーニ伯爵領の娘が飼っている猫が逃げ出したとのことで、俺は捜索の手伝いを買って出た。
「けどよー。旦那、探すったってどうやって?オブジェクトナビゲーターは、ぶっこわれたれたままですぜ。ほら・・・。」
そう言って、ジャブは未だにあらぬ方向に針が行ったり来たりするオブジェクトナビゲーターを見せた。
「ま、まま、マカセテ・・・マカセ・・・マ゜ッ!アッ!!」
「妙ですな。ここは魔物が跳梁跋扈する土地ではないはずなのに・・・。」
「ともかく、俺に考えがある。愛猫探しの件は任せてほしい。」
「お願いします。」
「ミネーラさん。ニャンニャンが使っていたエサ皿とかありますか?あれば持ってきてほしいのですが。」
「ハイ、ありますよ。メーテルお願い。」
「かしこまりました。お嬢様。」
しばらくして、メーテルがエサ皿を持ってきた。
「何に使うつもりですか?」
俺は、ソーニャとガリーを呼んだ。
「ソーニャ、ガリー、このにおいを頼りにニャンニャンを探して出してほしい。」
ソーニャとガリーは、エサ皿の匂いを嗅ぐために鼻をヒクつかせた後に満面の笑顔で敬礼した。
「了解なのです!」「なのです。」
「ミネーラさん、ニャンニャンの特徴はわかりますか?」
「ハイ、真っ黒でつやのある毛にカギしっぽ。赤と青のオッドアイです。」
「わかりました。お前ら、行くぞ!!」
「「おー!!」」
俺たちは、ニャンニャンの捜索を開始した。
だが、相手は猫だ。人間が行けそうにないところを自由気ままに動き回るために、捜索は困難を極めた。
あっという間に3日が夢のように過ぎた。
「もはや、ここまでか。」
「ご主人、ドウクツ見つけたのです。」
諦めかけたその時、ガリーが何かを見つけたようだ。
「匂い、ここで途切れているのです。」
ガリーが指さす先には、朽ちた石煉瓦の豆腐建築があった。それは、後ろが洞窟にめり込んだ状態だった。
「ここで、いろんな生き物の血の匂いが混ざっていて、ニャンニャンの匂いがわからないのです。」
「これは一体?」
「こいつは、ダンジョンというものでさぁ。」
「ダンジョン、モンスターが自然湧きしたり、貴重なお宝が眠っているというあの・・・。」
本物を見たのは初めてだ。
「グギャッ!グギャッ!!」
鳴き声がしたかと思うと、ゴブリン3体とそれより一回り大きなゴブリンが現れた。
「ゴブリン!」
「奴らのオスは、人間の女性の匂いにつられてくるっす。」
「だがこの程度の数、俺たちだけでもなんとかなりそうだぜ!」
ジャブとチャールズが剣を抜いた。
「無理すんなよ。」
その時、突然黒くて大きな物体がゴブリンたちを押しつぶした。
「ぐわわああおおお!!」
それは、大きな雄たけびを上げて目の前の俺に向かって攻撃してきた。
「うぉ!」
俺はとっさに後ろに下がって攻撃をかわした。だが・・・。
「あちっ!」
胸に3本の切り傷を負ってしまったようだ。幸い、傷は浅くすぐには死にそうにもない。
「大丈夫ですか!?ご主人様!!」
「ああ、大丈夫だ。ジェネル、俺にヒールを!」
「ハイ!」
「信じられない・・・のです。」
「どうした?ソーニャ。」
「ご主人様・・・・あれが、私たちが探していたニャンニャンなのです。」
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