第24話:ボルヴィキーニ伯爵領
「ハロルド様、なんでここにアーマードベア、しかもキングが3体もいたのでしょう?」
「そっすよ。兄貴のオブジェクトナビゲーターが壊れたのと何か関係があるんすかね?」
「それも調べたいがともかく、まずは海水をマホウスキー領まで安定的に運べるルートを確保せねば・・・。ジャラさん。」
「なんだい?」
「ここからボルヴィキーニ伯爵領までの道が書いてある地図は売っていますか?」
「ああ、あるぜ。ボルヴィキーニ領と言わず法国全土を網羅する巻物が。助けてくれたお礼だ!一枚持っていきな。」
「おお!助かります!!」
「よかったですね。ハロルド様。」
「ああ!」
ジャラや冒険者たちと別れた後、俺たちはその地図を頼りにボルヴィキーニ伯爵領の手前までやって来た。
法国内にある貴族領の大半は大きな壁で囲まれている領地がほとんどだ。
このボルヴィキーニ伯爵領も例にもれず、威圧感のある壁がそびえたっている。
「ここがボルヴィキーニ伯爵領で間違いないな?」
「ヘイ、ハロルドの旦那。門の上部にある紋様が、リヴァイアサンとトライデントの組み合わせになっているのはボルヴィキーニ伯爵領だけでさぁ。」
「よし、いくか!」
俺は緊張の面持ちで門の近くまでやって来た。
・・・・・・・・
俺はしがない門番だ。たまにやってくる来客の荷物や身分の確認をしたり、いざという時のための剣技を磨く毎日だ。
「ふわぁ・・・ねむ。」
ここ最近は平和だから、剣技の練習をした後なんかは疲れからか、心地いい風が俺の眠気を誘う。
だが、その眠気は隣にいた同僚の発言で吹き飛ぶことになる。
「おい!寝ぼけてる場合じゃねえ!スノーラビットがこっちに向かってくるぞ!!」
「んあ?・・・え!?お前今なんつった。スノーラビット?寝ぼけてるのはそっちだろったく・・・。」
俺は、眠い目をこすりながら馬車を守る集団に目を疑った。
「おいおいおい、まじかよ・・・しかも2体のフェンリルまでいるし、その後ろにある馬車はマホウスキー男爵家の物じゃねえか!どんな組み合わせだよ。まさかあいつら、伯爵様と戦争でも起こす気か?!」
「だが、それにしては数が少なすぎるが・・・とにかく、応援を呼べ!」
「お、おう!」
・・・・・・・・・
「止まれ!マホウスキー男爵が何ようだ!!ここから先は偉大なるボルヴィキーニ伯爵様の土地だ!今すぐ引き返せ!!」
その声を合図に、城壁の上からライフルらしきものを持った兵士が続々と現れて、俺たちに銃口を向けた。
「ハロルドの旦那、応援を呼びましょうか?この数、武器の質からして今の俺たちじゃかなわねえっすよ。」
そう言ってジャブは丸い玉を取り出した。おそらく、この世界で通信するための魔道具だろう。
「待て、ジャブ。俺はこいつらと戦争しに来たわけじゃねえ。」
「すまねえ。出過ぎた真似を・・・。」
「聞け!兵士たちよ。俺はマホウスキー男爵家当主、ハロルド・レオン・マホウスキーだ。俺はこの土地の通行券をもらいに来ただけだ。戦争をしに来たわけじゃねえ!」
「信じられるか!お前たちは代々、伯爵様を苦しめてきた。」
「ハイそうですかと渡すわけにはいかん!」
ボルヴィキーニ伯爵との確執はよほどなのか、話が全く通じない。
「どうすれば通してもらえる?」
「ジャラ様の名刺があれば全員通してやるよ。」
「ま、あの信用第一のジャラ様から名刺をもらうなんて無理な話だけどな。ハハハハハ!!」
え?そんなんでいいの?ガバガバ過ぎない?ここの兵士。
「名刺ならあるぞ!」
「ほらな、やっぱり名刺を・・・・えええええええ!?!?」
兵士の一人が、近づいてきて俺から名刺を奪い取り恐る恐る確認した。
「傾けるとキラキラする・・・ほ、本物だ!!あんた、どうやって信用を勝ち取ったんだ?!」
「俺が言うのもなんだが、盗んだとは思わないのか?」
「と、とんでもございません!これはジャラ様から信用をいただいた証。もし盗んだ場合、自動的に爆発する魔法が掛けられているのです!」
「ば、爆h・・・。」
「そうでないので、我々は本物だとにらんだのです。」
そう言うと、二人の兵士と城壁の上にいる門番たちは、慌てて武器をしまって敬礼をした。
「「ようこそ!ボルヴィキーニ伯爵領へハロルド・レオン・マホウスキー男爵様と御付きの方々!!」」
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