第22話:リーフ草原④
俺は悲鳴がした方へ行くと、そこには鎧のような外皮をまとった大きな熊がいた。
襲われようとしている彼女は、そばにある荷物を見る限り恐らく商人だろう。
熊は今まさに女性に襲い掛かろうとしていた。
「あれは・・・熊?」
「まずいですよハロルドさん!あれは、アーマードベアです。」
「どれくらい強いんだ?」
「討伐可能な冒険者のレベルは・・・3です。」
「まじか、ダージリンの奴がやっと倒せるレベルかよ・・・。」
だが、一匹だったら俺のスキルでどうにかできそうだ。
そう判断した俺は、まず男性とその取り巻きたちを空気のドームで攻撃から守った。
ガキイン!
アーマードベアの爪は俺の空気の膜に当たって砕けた。
アーマードベアは、一瞬何が起きたのかわからず困惑したが、すぐに野生の勘で俺の仕業と判断したのかこちらに向かって吠えた。
「おつむは悪くねえか。だが、こいつは防げるかな?」
そう言って俺は、空気の刃を複数枚飛ばして向かってきたアーマードベアを固い外皮ごと切り刻んだ。
バラバラになったアーマードベアは、そのまま物言わぬ屍になった。
「すっげー!あのアーマードベアをたったの一撃で倒しちまったっす!!」
「さすがですぜ!ハロルドの旦那!!」
「さすがご主人様なのです。」「さすごしゅ!」
「ハロルド様の凄さには驚かされますよ。」
「ふふん、ね!すごいでしょ。ウチの領主様!!」
俺は、何が起きたか解らず呆けている女性に近づいた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・今のは君がやったのかい?」
「ええ、まあ・・・。」
「信じられん。長年冒険者と取引しているが、アーマードベアを瞬殺する冒険者は初めてだ。改めて礼を言わせてもらおう。助けてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
「うっ・・・。」
男の連れらしき人物は、先ほどのアーマードベアにやられたのか胸に深い傷を負っていた。
「これはひどい。待っててください!」
そう言って俺はジェネルを呼んできた。
「ジェネル、ちょっと来てくれ。」
「ハイ、ハロルド様。」
「じぇ、ジェネルだと?!あの、人間拷問機と呼ばれる人物を、君が・・・なぜ・・・ゴフッ!」
「安心してください。彼には回復だけさせるように言っておきます。ジェネル、頼めるか?」
「お任せください。ハロルド様!」
ジェネルは、まず腰に付けたポーチから薬品らしきものを取りだして、傷を負った男の傷口にかけた。
「ふぐうっ!な、何をした?」
「様々な薬草を混ぜて作った消毒液です。これをせずに傷をふさぐと病にかかりやすくなるんです。」
「な、なるほど。」
「いきますよ・・・・『ヒール』!」
ジェネルが何度かヒールをかけると、みるみるうちに男の傷がふさがっていった。
「い、痛みが消えた。」
「もう大丈夫ですよ。」
「あ、ありがてえ!」
「お礼はハロルド様に言ってください。彼がいなかったら、あなたたち二人はアーマードベアに殺されていたんですから。」
「ああ、そうだな。ハロルド君、本当にありがとう。この恩は必ず返すよ。」
「大したことはしていませんよ。あ、でしたら教えてほしいことがるんですが・・・。」
「やっと追いついたぜ!」
「大丈夫でしたか?」
「お、生きてるべ。結構丈夫なんだな。」
「もう・・・むり・・・もう・・・じぬ・・・。」
冒険者四人組が追い付いてきたようだ。
エルフ娘は全力疾走に慣れていなかったのか、何もしていないのに虫の息だった。
「なんだ。おまえら、ついてこなくていいのに。」
「いや、あの・・・その・・・。」
リーダーがバツの悪そうにしていると、彼らの後ろから聞き覚えのある咆哮が聞こえてきた。
「お、おい。まさか・・・。」
「ああ、連れてきちゃった。」
彼らの後ろには、先ほどより大きなアーマードベアが3体ほど駆けてくるのが見えた。
「おいおい、勘弁してくれぇ!!」
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