第21話:リーフ草原③

俺は、たまたまそばを通りかかった4人組の冒険者に話しかけた。


「おーい!君たちー!」


「ハイ?」


メンバーの一人である男性冒険者が俺の方を見ると途端にいやそうな顔をした。


「なーんだ、お前は無魔人の悪徳領主の息子ハロルドじゃねえか!」


「ああ、そうだ。だが、今は俺が領主様だ。」


「だから、敬えってか?ハン!そいつは無理な相談だぜ。」


聖女の格好をした女冒険者も彼に同調した。


「あれでしょ?宮廷魔導士の地位を金で買った国賊なんでしょ?」


「誰がそんな噂を?」


「噂?笑わせないでくれる!?私個人の感想よ。」


俺は呆れて物を言えなかった。


「ふん、貴族の方々が口をそろえてあなたを賞賛するんだもの。大方、たんまりため込んでいた金で噂を流したんでしょ?」


「ぎゃははは!ちげえねえや!!」


四人はゲラゲラ笑い始めた。


すると、ジャブが俺の前に立って、コートの襟を正しながら例のセリフを放った。


「おい、若造ども。俺の名を言ってみな。」


そのセリフ気に入ったのね。


「ほ、法国を裏で操る三大極悪組織のひとつ『スノーラビット』の頭領、ジャブ・ドラゴニア・ケインだ!」


「リーダー!な、なんでそんな奴がここにいるのよ?!」


「俺が知るか!」


「ジャブ、手を出すな。こいつらは、まだ何も知らない初級冒険者だ。」


さっきまでの威勢はどこへやら、冒険者たちは逃げることはできずにその場で座り込んでしまった。


「ちょっとした事情で俺とともに行動しているんだ。」


ちょっと遅れてチャールズとジェネル、モーナ、ソーニャがやって来た。


「おいおい!魔獣殺しのチャールズに人間拷問機のジェネルまでいるぞ!」


おまえら、そんな厨二臭いあだ名付けられていたんかい。


だが当の本人たちは、まんざらでもなさそうな顔を浮かべていた。


「それに、後ろにいるのはフェンリルだわ!!」


「こいつら。ご主人様侮辱した悪い奴!食い殺してやるです!!」


ソーニャとガリーは歯と牙をむき出しにして毛を逆立てて、いつでも襲い掛かる準備をしていた。


「ソーニャ、ガリー、落ち着け。ここはマホウスキー領じゃない。騒ぎを起こされたら俺が困る。」


「ごめんなさい。」


「ゴメンナサイ。」


「わかってくれたならいいんだ。」


「ありがとです!優しいご主人様、大好きなのです!!」「なのです!」


「フェンリルを2匹も従えているだと・・・。」


ここで、ようやく自分たちがどんな奴らに喧嘩を吹っ掛けたか理解したようだ。


「さて、お前たちに聞きたいことがある。」


「なんだ?」


その時、遠くで女性の悲鳴が聞こえた。それと同時に熊の鳴き声が聞こえてきた。


「なんだ今の声?熊か・・・。」


「いってみやしょうハロルドの旦那!」


「ああ、行くぞお前ら!!」


「ハイなのです!」「了解です!」


俺たちは馬車を走らせて現場へ向かった。


・・・・・・・


「お、俺たちも行こうぜ!」


メンバーの中でも気の強い方である聖女マリアは、柄にもなくうろたえた。


「ええ?!どうしてなの?」


まあ、あんなことがあった後だ。無理もない。


だが、俺は知りたかった。奴の本当の強さを!


「・・・あのハロルドがどうやってあんな奴らを従えているか知りたいだろう。」


エメラルドグリーンの目をしたボブカットの女エルフであるアーチャーが頷く。


「リーダーの言う通りです。」


「んだ。んだ。行くしかないべ!」


横にも縦にも広い盾持ちのタンクが頷く。


「はあ、わかったわ!行きましょう!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る