第18話:回復術師の復讐

俺たちを襲った盗賊たちは、ソーニャの妹を鎖につないでいたので、生かして捕らえた4人に知っている情報をどんな手を使ってでもすべて吐かせることにした。


「お前らのボスは誰だ?」


「誰が吐くかよ。吐いたら最後、お前らただではすまねえぜ。」


「そうか・・・。」


「ハロルド様、ここはひとつ俺たちに任せてもらえないでしょうか?」


「ジャブたちが?・・・わかったお手並み拝見と行こう。」


ジャブは、口を聞いたイケメン盗賊を死なない程度に殴った。


「さあ、吐け!」


「ブッ!」


だがそいつは、言葉の代わりに血反吐をジャブの顔面に吐き捨てた。


「吐いたぜ。領主の犬が・・・・。」


ほかの盗賊はケラケラと笑った。


「あ、兄貴・・・。てめえ!兄貴の顔によくも!!」


だがジャブは、血をぬぐいながらチャールズが魔法を放つのを手で制した。


「よせ!チャールズ、こいつをヤルのはお前じゃねえ。」


「兄貴・・・。すいやせん、出過ぎた真似を。」


ジャブは青筋を浮かべながらも冷静さを保とうと必死で耐えていた。


その証拠に先ほどよりも吐息が荒くなっている。


「ジェネル・・・ヤレ。」


「ハイ、ジャブ様。『ヒール』!」


ジェネルは血反吐を履いた奴にヒールをかけた。


「ふん、何をやっているんだか、俺たちにはヒールは必要ないぜ。」


「『ヒール』!」


だがジェネルは、憑りつかれたかのようにヒールをかけ続けた。


「お、おい!ヒールはいいって。」


「いいえ、あなたには必要な処置です。『ヒール』!」


「や、やめろ!な、なんか顔がムズムズする。」


「『ヒール』!」


すると、徐々にヒールをかけられた奴のイケメン顔がゆがみ始めた。


「や、やべるぉ!ご、ごれいじょうは!!」


「『ヒール』!『ヒール』!!『ヒール』!!!」


「やべで!やべでぐれ!!なで、なでこんなごどを!」


ヒールをかけられた男の顔は、細胞が増殖しまくってイケメンの面影はもはやなく、みるも無残な状態になっていた。


「・・・・目が見えるうちに真実を教えてやる。」


ジェネルはそう言って、腰につけてあった緑色のポーションを飲んだ。


すると、同顔だが黒髪でよりアジア人らしい顔つきの男に変貌した。


「て、てめえは!上越(じょうえつ)直志(なおし)!!死んだはずじゃ!」


日本人だったのか。


「死んだと嘘をついたのさ。この金髪イケメン野郎に復讐するためにね!」


「くっ!」


「・・・僕にはこの世界にできたガールフレンドがいた。あっちの世界でもこっちの世界でも孤独に生きてきた僕に寄り添ってくれた素敵な人だった。」


「・・・・。」


「でも、そこに君という僕を学生時代にさんざん虐めて来た金髪イケメン野郎が僕の彼女をさらっていった!でも、それは酒が入った彼女が男の誘惑に負けやすくなる上に、僕が不細工でドジだったからまあ、許す!!」


ジェネル、もとい直志は額に青筋を立てながら強くうなずいた。


「失意におぼれている僕を笑いながら、「彼女はもらっていくぜ。」と言ったけど、その後に彼女を幸せにしてやるから安心しろと君が言ったから、バカにしながら笑ったことは・・・まあ、許す!」


直志は、激高しながらもまたもや強くうなずいた。


「でも、でも!僕は見てしまった!!お前が、嫌がる彼女をいたぶりながら無理やり手籠めにしようとしているところを!」


モーナは、あまりのひどさに口を覆った。


「ゆ、ゆるじで・・・。」


「許さない!虐めて来た連中が脳裏によぎって足が動かなかった自分が許せないが、僕との約束を破って彼女をひどい目に合わせたお前はもっと許せない!」


「・・・・。」


「お前がいなくなった後、彼女はふらついた足取りで崖から飛び降りたんだぞ!僕の静止を聞かずに!!」


「ぞ、ぞんな・・・あでは、あいづが「やっばり直志がいい」っでいうがら。むがづいで」


「言い訳は聞きたくない・・・。彼女は飛び降りる直前に憔悴した表情で僕にこう言ったんだ。」


そう言って直志は元イケメン盗賊の顔に掌を向けた。


「や、やべで・・・。」


「私の純潔を汚したお前を殺せと・・・『ヒール』!『ヒール』!!『ヒール』!!!」


「やべでぐれ!やべでゲヤル!!」


イケメン盗賊は顔が爆散して死んだ。


ほかの盗賊三人はあまりの惨状に震えあがった。


「ふー・・・私情を挟んでしまい。申し訳ありません。ジャブ様。」


「いや、いいんだ。そのために俺たちのようなところに来たんだろう。いずれにせよこれでこいつらも少し喋りたくなっただろう。」


ジャブがすかさず言葉で畳みかける。


「さあ、しゃべる気になったか?若造ども。」


三人は無言でうなずいた。


「じゃあ、もう一度聞くぞ。お前たちのボスは誰だ?」


「俺たちのボスは、・・・ヴッ!」


彼は突然、自分の首を両手で抑えて苦しみだした。

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