第17話:盗賊VS盗賊
「ジャブ、チャールズ、モーナ、頼んだぞ!」
「任してください!」
ジャブは鎖鎌ではなく普通の剣を抜いて構えた。
「兄貴の恩人には指一本触れさせねえぜ!!」
チャールズも同じく剣を構えた。
「が、がんばります!」
モーナは腰についていた短刀を抜いて構えた。
そして、3人は勇猛果敢に挑んだ。
ただやはり3対5、回復薬のジェネルが傷を負わされるたびに回復させているとはいえ、押されているな。このままいくとジェネルの魔力が先に切れるかも。
事実、ジェネルは今にも倒れそうな表情をしている。
「おかしいですぜハロルドの旦那!」
ジャブは器用にも剣を交えながら話しかけてきた。
「どうしたジャブ!?」
「こいつらさっきから切っても切っても回復しやがるんでさあ!」
見ると確かにジャブが切った盗賊の傷口がみるみる塞がっていく。
「確かにおかしい、あっちにはヒーラーらしき人物もいないし、ポーションを使っている奴もいない。こりゃ誰かひとりでも生け捕りにして情報を聞き出すしかないな。」
「ご主人は戦わないのですか?」
「俺の技はどれも強すぎる、あまり敵に手の内を明かしたくない。・・・待てよ、あれだったらバレないかも!」
「・・・?」
「よし、ここはひとつ試してみるか。」
俺はジャブとジェネルに向かって掌を向けた。
「旦那!何を!?」
「今お前たちには、俺のスキルで防御力強化のバフをかけてみた。これで幾分か無茶ができると思う。」
「ありがてえ!恩に切るぜ旦那!!」
「さすがは兄貴の恩人だ!これで百人力だぜ!!」
「あの!ハロルド様!私にもそのバフを!!」
「ああ!すまない!」
モーナにもバフをかけてあげた。
するとモーナは戦闘中にもかかわらず恍惚な表情を浮かべた。
「ああ、ハロルド様の愛が全身に・・・。」
「ひえっ。」
今のは、聞かなかったことにしよう。
「すきありー!」
モーナは敵の叫び声にハッとして真上から振り下ろされる剣を短剣で受け止めた。
短剣は勢いに耐えられなくて折れてしまったが、そのまま振り下ろされた剣はモーナの頭に直撃した瞬間に折れて、その破片は宙を舞い地面に突き刺さった。
「な、か、かってえ!なんだこの女は?!」
「ふふん、みたか!これがハロルド様の愛の力よ!」
「愛だ?そんなもん、犬獣人を虜にした俺の愛で塗りつぶしてやるわ!」
そう言いながら彼はモーナに向かって襲い掛かった。
「いやー!こっち来ないでー!この変態!!」
モーナはそいつに向かって勢いよく張り手をした。
「ブロンソン!」
俺のバフがかかった状態で張り手をしたものだから、それをもろに喰らった男は首がものすごい勢いで回転し、首が180度回った状態で倒れた。
「あ、た、倒しちゃった。てへっ。」
可愛くごまかしてもダメだからね。まあ、可愛いから許す!
それを見てほかの仲間は全員逃げようとした。
「まずい!逃げちまう!!」
「任してください旦那!」
そう言ってジャブは背中に装備していた鎖鎌を取り出して柄を両手に持って構えた。
「『北越神技(ほくえつしんぎ)・懲戒束(ちょうかいそく)』!!」
北越神技という、どっかで聞いた技名を叫びながら鎖鎌を投げると、鎖鎌の鎖がどこまでも伸びて行き、四人を拘束して彼らを引き戻した。
「よくやった。4人ともご苦労さん。」
「いえ!ハロルド様の力がなければ、私たち今頃この世にいません。」
「全くでさあ、助けるつもりがまた、助けられちまったぜ。」
「ホント凄いっすよ!ハロルドの旦那!」
「同じく。あなたが不思議な術を使わなかったらジリ貧でしたよ。」
「いやー、あはは・・・。」
ここまで、賞賛されると正直くすぐったい。だが、優越感に浸っている暇はない。
「さてと。」
俺は盗賊たちの方に向き直ると表情に影を落とした。
「聞いての通り、俺はこの領地の主ハロルドだ。俺を襲った罪を見逃してやる代わりにお前たちの持っている情報、洗いざらいしゃべってもらうぞ。」
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