第16話:護衛の確保
世紀末な連中をまとめる男ジャブは、俺に対して恩義を感じたのか護衛として自分を含めた何人かよこすと提案してきた。
「どうします?ハロルド様。」
「良いんじゃない。ちょうど護衛がもう少し欲しかったところだ。一人一月150000G でどうだ?」
「じゅ、150000Gだと?!」
今までの会話から1Gを1円と仮定して、俺が務めていた会社の一カ月の給料を参考にしたんだが・・・。
「少ないか?」
ジャブは顔と手を振った。
「と、とんでもございません!むしろ多すぎます!!」
「そうか、ならよかった。給料分はきっちり働いてもらうぞ。」
「お任せください!このジャブ、領主ハロルド様をしっかりとお守りいたします!」
付与術師ジャブのほかに、茶髪童顔の回復術師ジェネル、先ほどからジャブを兄貴と慕うモヒカンで刺付き肩パットを装着した剣士チャールズが仲間に加わった。
用意された馬車にモーナ、ソーニャと乗り込むと出発の合図を出した。
ちなみに御者は回復術師のジェネルだ。
「よーし、行くぞ御前ら!出発だ!!」
「「おーっ!」」
俺たちは領民やフレー、残ったメイドたちに見送られながらボルヴィキーナ伯爵領を目指した。
馬車に揺られること数分、モーナが何かに気づいたようだ。
「ハロルド様。」
「なんだ。」
「周囲から私たちに敵対する男性5名、馬車に近づいてきます。」
「ジャブ。」
「ハイ、なんでしょうハロルド様。」
「周囲を警戒しておけ・・・。」
「わかりやした。聞いたかお前ら、何かあったらすぐに対処しろ。」
「おう!」「了解です。」
草むらが動いたかと思うと、下卑た笑みを浮かべた男が5人現れた。
盗賊の一人が持つ鎖には見目麗しい犬獣人の少女がつながれていた。
「ガリー!」
ソーニャが勢い良く馬車から飛び降りた。
「ガリー?」
「鎖につながれているのは、私の妹なのです!」
「なんだって?!」
少女はソーニャに気が付いたとたん涙を浮かべた。
「あ・・・う、お姉ちゃん。」
「ゲヘへ・・・荷物とそのワン公を置いていきな。」
「そうすれば生かしてやる。」
すると、ジャブが剣を構える俺の前に立って、コートの襟を正しながら例のセリフを放った。
「おい、若造ども。俺の名を言ってみな。」
おい、どっかで聞いたぞそのセリフ。
「んあ?な、あ、あんたは?!」
「知ってるのか?」
「知ってるも何もこいつは、法国を裏で操る三大極悪組織のひとつ『スノーラビット』の頭領、ジャブ・ドラゴニア・ケインなんだよ!」
「な、なんでそんな奴がここに?!」
ほ、本物の極悪人だったー!!
「えー!お前、付与術師じゃないの?子供もいるというのも、貧乏暮らしも嘘なのか!?」
「嘘じゃねえっす。据え置きの給料じゃガキは食わせられねえってんで、副業で10年ほど盗賊やってたらこの地位にいただけっすよ。」
「し、しかもそんな奴とフランクに話しかけるあいつ・・・いったい何者だ?」
すると、今まで沈黙を貫いていたフードをかぶった男が口を開いた。
「なんだって構わないさ。今ここで、こいつら全員を倒せば我々は晴れてあのお方に不死の力を分けてもらえるのだから。」
あのお方?ソーニャの家族を捕まえてるし、もしかして俺が追っている十字傷の男と関係があるのか?
「ん?おい、お前犬獣人の奴隷はどうした?」
気が付くと、盗賊の一人が所持していたソーニャの妹が消えていた。
「あ、あり?鎖がちぎれてやがる!あいつどこいった?!」
「ハロルドさん。どうです?私の能力は?」
みると、モーナがどうやら能力を使って奪われたソーニャの妹を取り返してくれたようだ。
「パーフェクトだ!モーナ。」
「感謝の極み!」
「お姉ちゃん!」
「ああ、ガリー。無事でよかったのです。」
「く、くそー。野郎ども!いてもうたれー!!」
男たちは、戦意を鼓舞するための雄たけびを上げた。
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