第15話:タフ・ボーイ

俺は今、世紀末状態と化した領民と対峙していた。


『どうすんだこれー!これじゃあ、外に出られねえ!』


「おい!てめえらどけ。こいつは俺が倒す。」


世紀末漫画で見覚えのあるフルフェイスヘルメットをつけた筋骨隆々の男が鎖鎌を持って前に出てきた。


「おー!やっちゃってください。ジャブの兄貴!」


「こいつを倒して俺が領主様だ。」


やりたくはないが、ここで威厳を見せなければ世紀末と化した領民は従わないだろう。


「ふん、やれるもんならやってみな。」


「ホザケ!」


「ハロルド様危ない!!」


俺は、自分の目の前に刃を通さないほどガチガチに固めた空気の膜を作った。


ガキイン!!!


案の定、鎖鎌の鎌は折れて吹き飛んで、彼の後ろの地面に突き刺さった。


「なにぃ?馬鹿な!比較的折れやすいミスリルとはいえ、鎖鎌にレベル5の耐久力上昇の付与魔法をかけたんだぞ!」


「ん?おまえ、付与術師なのか?」


すると、鎖鎌を持った男はうなだれた。


「・・・そうだ。だが、てめえの先代からもらっていた給料は据え置きで一日50G。黒パンと具のないスープがやっと食える程度の生活だ。おまけに俺には食べ盛りのガキもいる。そんな時、領主が息子に追放されたと聞いて直談判しに来たまでだ。」


「鎖鎌で襲おうとしたくせにどこが直談判だよ。」


「うるせえ!どうせお前も権力が欲しくて先代を追放した口だろ!だから、その地位を俺に譲るように言いに来たんだよ!」


「待て待て!俺はお前たちと争うつもりはない!俺はこれから、お前らにこれから食わせる食料と保存のための塩の調達に行くんだよ。」


「信じられるか!」


言葉で言ってもダメそうだから俺は態度で示すことにした。


俺は両手を挙げて彼らを空気の膜で包み込んだ。


「・・・な、なんだ!!おい、何をしやがった!!」


「あわてるな。いま、楽にしてやる。」


「くっ!俺はどうなってもいい・・・せめて俺のガキだけは・・・あれ?寒くねえ・・・。」


「ほんとだ!むしろあったけえぞ!!」「な、なんなんだこの魔法は!?」


「フレー、悪いがこいつらに水と食料を。」


「かしこまりました。」


その言葉にモヒカンたちは黙った。


・・・・・・・・・


「ヒャッハー!水だ!!食料だぁあああ!!!」


「魚に野菜、肉まであるぞ・・・これ全部持ってっていいのか?!」


鎖鎌の男は目を丸くした。


「まだあるぞ、待っている仲間や家族にも分け与えてやってくれ。」


「あー、あ・・・ありがてぇありがてぇ。」


ジャブは涙を流して俺に何度も頭を下げた。


「それと、その恰好じゃ寒いだろう。今、服を持ってきてやる。モーナ、悪いがクローゼットから俺の元家族が来ていた服を取ってきてくれ。」


「かしこまりました。」


モヒカンたちはざわついた。


「い、いいのか?」


「良いんだ。先代が迷惑をかけたお詫びだ。」


しばらくしてモーナがほかのメイドたちと一緒に服を持ってきた。


「おそらく全員分はあるすべて持っていけ。」


「「ヒャッハー!!」」


「何から何までホントに済まねえ!」


「だが、施されっぱなしってのも男が廃るぜ!なあ、兄貴!」


モヒカン領民の一人がそう叫ぶとジャブは頷いた。


「ああ・・・なあ、領主様。」


「なんだ。」


「俺たちの中には腕に自信のあるやつが何人かいます。そいつらを護衛に雇わせてもらえないでしょうか?もちろん俺もあんたの護衛としてついていきますぜ!」

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