第14話:隻眼メイドのスキル

「モーナのスキルってなんだ?」


「『シャドウ・オブザーバー』です。簡単に言いますと、先ほどの私たちのように自分と傍にいる対象物を亜空間の中に招き入れてその状態のまま移動できるのです。」


「中はすごく真っ暗だったけど、モーナが見えたから全然怖くなかったのです!」


「話しぶりからすると、モーナしか見えない暗闇の世界を移動して任意で現実世界に出てこれるようだな。」


「ハイ、その通りです。さすがご主人様!」「ご主人凄いんだよ!一を教えたら十まで覚えるくらいに!」


「いや、買いかぶりすぎだよ二人とも。」


「うーん、でもそれだけでは・・・おいそれと外に出すわけには・・・。」


お前は過保護なオカンか!!


「フレー様、このスキルにはもう一つ能力があります。」


「どんな?」


「自分や仕える主君に敵対心のある連中が近づくと事前に察知できる能力です。」


「ほう、すごいじゃないか!」


「えへへ・・・。」


「まあ、それならば大丈夫そうですね。では、いってらっしゃいませ。ハロルド様。」


「ああ、いってくる。」


・・・・


俺は分厚い手袋に分厚いコートでしっかりと防寒対策をした。いくら能力のおかげで寒くないとはいえ、極寒の中で防寒対策をしてないと怪しい人と思われるからだ。


「ご主人様、どうでしょうか?」


モーナは、裏地が長毛熊(ちょうもうぐま)というこの地域に生息する毛の長い白熊のような生き物の毛でできたフード付きで裾の長い藍色のコートを着ている。


ちなみに下は、防寒対策のため黒のタイツにこれまた長毛熊の毛皮でできたピンク色のロングブーツを履いていた。


「うん、すごく可愛いよ。」


「はうっ!か、可愛いだなんてそんな・・・。そ、ソーニャさんの方がもっとかわいいと思いますよ。」


モーナは何故か赤くなりながらもソーニャを指さした。


ソーニャは、基本的にモーナとおそろいで嬉しいのかこっちを見ながらずっと舌を出してしっぽをブンブン振っていた。もうすっかり仲良しだ。


「わあ、ホントだ!カワイイ!」


「ワン!」


・・・・・・


「あの・・・ご主人様、私・・・そのー・・・。一緒についていきたくてフレー様にああ言いましたが、ハロルド様のこと、ちゃんと守れるのでしょうか?」


「心配するな。モーナ、お前の能力は素晴らしい。たとえ野盗の類が来ても、お前とソーニャと俺でやっつけられるさ。」


「は、ハイ!・・・ふふふ。能力を褒めてくれたのはハロルド様が初めてです。」


「そうかそうか・・・ん?モーナ、どうした?顔がさっきより赤いぞ。熱でもあるのか?」


「ふえ?だ、大丈夫でございまする!」


「・・・無理すんなよ。」


俺は玄関のドアを開けた。


出迎えてくれたのは冬のひんやりとした空気ではなく。肝が冷えるようないかつい野盗集団だった。そいつらはあろうことかほぼ全員モヒカン頭だった。


「ヒャッハー!!」


叫ぶ、複数人のモヒカン頭。


「新領主様だ!領主を追い出したって噂は本当らしいな!!」


サングラスの紫モヒカン。


「強い奴は大歓迎だが、何もしてくれないのはいただけねえなー!」


至極まっとうなことを言う袖なし革ジャンを着たモヒカン。


「お出かけですかレロレロレー!」


そう言いながら、短刀をなめる変人。


「金とその女を置いてトンずらしな!命だけは助けてやる!!」


そう言いながら鼻息を荒くするモーニングスター持ちのデブで巨漢なモヒカン。


「つーか寒いから中に入れやがれー!!」


上半身裸の肩パットとどう考えても寒そうな格好をしている人。


「水と飯よこせー!!」


ぼろきれをまとった只のおっちゃん。


「な、なんじゃこりゃあ・・・。」


「だから言ったでしょう?安易に外には出せませんって。・・・へっくち!」


寒さで可愛らしいくしゃみをするフレー。


「ふ、フレー・・・この野盗集団どこから湧いてきた?」


「ズビ・・・彼らは野盗などではありません。私の見知った顔が多いので、かれらはれっきとした領民だと思います。」


俺はあまりのショックで突っ立ったままこう思った。


『俺の領民たち・・・世紀末状態になっとるぅー!!』

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