第4話:回想

「こ、ここはどこだ?」


辺りを見渡すとそこは何もない真白な空間だった。


「俺はたしか会社で仕事して、5徹して倒れてそれで・・・。」


「目が覚めたようですね。海原拓斗(かいばらたくと)。」


声がした方を振り向くと、いつの間にかそこに整った顔立ちにスレンダーな体をした美白美人を絵にかいたような若い女性が薄布をまといながら浮いていた。


「あなたはもしや女神様?」


「理解が早くて助かります。私は、とある世界で知恵の神をやっています。ディプートスと申します。」


「俺は死んだのか?」


女神が悲しそうな顔をした。


「ええ、残念ながら・・・死因は働きすぎ、つまり日本人にありがちな過労死です。」


「転生先はどこだ?」


「あの、現世に未練とかはないのですか。」


「ないです。」


「あ、ない。・・・オホン!まあ、いいでしょう。」


女神は、多少呆れながらも空中にステータス画面のようなものを浮かびあがらせた。やはり俺と同じことを考えている奴は多いようだ。


「では、この家はどうでしょう。」


そう言って女神は俺の前にも同じ画面を目の前に出してきた。


色々書いているがまあ、簡単に言えば剣と魔法の中世ヨーロッパ風の世界で貴族の長男として生まれるそうだ。


俺は、なるべく楽をしたいためざっと目を通した後に、この世界では最強とされる基準であるLv5の全属性の魔法とユニークスキルの両方を最初から使えるようにしてほしいと頼んだ。


「だめです!」


女神から意外な言葉が飛び出た。


「な、なぜです?」


「そんなことは、私の上司でもあるこの世界の創造主が許しません。ですが、ユニークスキルが12歳で使えるようにすることは許可されています。ただ、その際魔法は一切使えなくなりますけどね。」


魔法が使えなくなるのは痛いが、この際贅沢は言っていられない。


「わかった。で、ユニークスキルは何が残っている?」


「すでに何人かが同じ世界に転生されているので、私が転生する人のために授けるユニークスキルが空気操作というスキルしかありません。」


「空気操作?意外といいのが残っているじゃないか!」


「そうとも言えません。このスキルは、ある程度空気に関する知識がある現代人にとってはありがたい能力なのですが、その知識がない世界に行くので迫害される危険性が高いのです。」


「なるほど・・・わかった。そのスキルで良い。」


「それと、何かしら脳に刺激を与えないと前世の記憶が覚醒しないので気を付けてください。」


「まじかよ、普通にその世界で前世の記憶がないまま一生を終えることもあるってことか。」


「ええ、それでも行きますか?」


「ああ、もう覚悟は決まった。転生させてくれ。」


「わかりました。では、よき来世を!」


その言葉を最後に俺の意識は途絶えた。


・・・・・・・・・・・・


「そういえば転生前に女神とあんな会話もしたっけな。説明分にあまり目を通さなかったのが仇になったな。」


嘆いていてもしょうがないと思った俺は、荒野が広がる道をひたすら歩き続けた。


すると、岩陰からぞろぞろと人相の悪いぼろきれのような服を着た男たちが現れた。

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