人物紹介:過去編-五章まで(※ネタバレ注意)

【三賢者】

 世界に名を轟かす三人の魔法使いの総称。

 単身で国を滅ぼせるほどの力を秘めていることが特徴。

 畏怖と畏敬の念を込めて、人々は彼等を〈三賢者〉と呼んでいる。


・アルカ

 先代の〈楽園の主〉にして三賢者の一人。そして、世界に二人しか存在しない神人。

 先代と言っても楽園を建国したのは彼女・・なので、椎名は二代目になる。

 椎名と同じ〈大いなる秘術アルス・マグナ〉を使え、単純なスキルの熟練度や錬金術師としての知識量・経験値で言えば椎名を凌駕するが、アルカ自身も言っているように魔力操作の技術は椎名に軍配が上がる。

 才能と言う面でも椎名の方が自分よりも遥かに上であることを認めており、自分には成し遂げられなかったことを椎名に期待しているようだ。

 彼女の正体は、ダンジョンによって滅ぼされた世界の生き残り。ダンジョンは過去に幾つもの世界を壊滅させ、その度に転移を繰り返しているらしく、アルカもダンジョンと共に今の世界に転移してきた。

 そのため、転移先の世界に対する関心が薄く、セレスティアに止められるまでは多くの街を実験と称して滅ぼしてきた経歴があり、災厄の象徴として人々に恐れられている。神人という言葉が生まれたのも、この一件が原因らしい。

 冷酷で身勝手な人物のように思えるが、数少ない友人に対しては人間らしい一面を見せるところがあり、王としての自覚と責任も持ち合わせている模様。ただ、自分の中の線引きがはっきりとし過ぎているために、カルディアを復活させるためにオルテシアを犠牲にしようとしたことがある。

 そう言う意味では、地球や人類よりも楽園を優先すると明言している椎名と似ているのかもしれない。

 その性格は彼女の過去の行動からも窺い知れる。自分の魔導具を巡って人間たちが争う姿に嫌気が差し、二百年ほど引き籠もっていたが、実際のところは椎名と一緒で人付き合いが得意ではなく、丁度良い口実があったので公の場から姿を消したのではないかという疑いがある。

 背格好は椎名と同じくらいで灰色の髪に黄金の瞳をした美しい女性だが、実は元男。呪いの影響で女性に性転換しており、魔法薬で男の姿に戻ることも出来ないらしい。そのため、性別に関することで弄られるのを嫌っている。

 なお、現在はルシフェルの策に嵌まって〈神核〉を抜かれ、椎名の手で蘇生されるも〈魔女王の槍レジーナ・ハスタ〉に保存されていた魂の欠片では完全復活といかず、五、六歳くらいの少女と化している。

 故郷をダンジョンに滅ぼされ、呪いの影響で女になったり、幼女になったりと、ある意味で最も波瀾万丈な人生を歩んでいる人物かもしれない。


・セレスティア

 三賢者の一人にしてアルカと同じ神人の一人。〈青き国〉で崇められる現人神で、その正体は世界樹の巫女姫。

 巫女姫とは、世界樹の力と意志を宿すための器であり、星の力――星霊力を扱うことが出来る。ただ、元が人間の身体であることから星霊力を全開で解放すると、命を落とす危険があるとのこと。

 そのため、自分が死んだ時の保険に用意してあるのが、巫女姫候補だ。

 巫女姫の候補に選ばれる条件は〈星詠み〉を使えることらしく、星霊力の源である〈星の海〉にアクセスできることが条件ではないかと考えられる。適性を持った人間でなければ、星霊力を十全に扱うことが出来ないからだ。

 彼女もアルカや椎名のように呪いに悩まされており、常に後光を纏っているような状態にある。具体的には認識阻害のローブで顔を隠していないと、顔を合わせた人々に平伏されるという問題を抱えていた。

 椎名が天使の素材を使った魔導具で呪いを緩和できることを発見し、いまはそれを身に付けて多少はマシになっているようだが、それでも立場が立場なので平伏される状況に変わりは無いようだ。

 椎名とは再会の約束をしており、本気で二万年待つ覚悟を決めている様子。

 神人は不老不滅の存在なので、理論上は何万年でも生きられるはずだが……。


・カルディア

 三賢者の一人にして〈白き国〉の女王。三賢者の一人に数えられてはいるものの神人ではない。そのことを本人も気にしているようで、アルカやセレスティアの領域に至ることを目標としていた。

 しかし、国の上空に突如出現した〈天国の扉ヘブンズ・ドア〉から天使や幻獣が溢れ出し、国民を逃がすために大結界を発動。その結果、魔力暴走を引き起こし、アルカに命を絶たれることになった。

 だが、死亡したと思われていた〈魔女王〉だが、ホムンクルスとして蘇り、アルカの前に姿を見せる。〈魔女王の槍レジーナ・ハスタ〉との契約でカルディアの魂は魔槍に保管されていて、ガブリエルの手によってホムンクルスに生まれ変わっていたのだ。

 記憶と自我を奪われ、アルカの命を狙うも失敗。椎名との戦いのなかで自我を取り戻すも、〈疑似霊核〉には呪い・・が掛かっていて再び暴走。結局、〈魔女王の槍〉に再び魂を封印されることになる。

 その後、オルテシアが〈魔女王の槍〉と契約し、いまはヴァルハラの管理者として魔槍に眠る英雄たちの魂と一緒に、オルテシア――スカジを支えているようだ。



【渡り人】

 異世界人の総称。アルカもここに含まれるが、様々な手段で異世界から転移してきた人間が他にもいると考えられる。


・レティシア

 アルカによって保護された異世界人。楽園で騎士団長をしていた。

 百五十センチと小柄な体型。短く揃えられた青い髪と幼さの残る顔立ちが特徴の少女。しかし、その可愛らしい見た目に似つかわしくない〈人類最強〉という二つ名を与えられている。

 その正体は〈聖剣の勇者〉で人類の守護者的な立場にあり、アルカを監視するために騎士団長になったと言ったようなことを語っていた。椎名に対しても人類を滅ぼすつもりなら自分が敵になると明言しており、心強い仲間ではあるが完全な味方と言う訳でもない。

 聖剣を使うために必要な〈聖気〉と呼ばれる特別な力を使い、ウリエルを瞬殺した。



【魔法学院関係者】


・学院長

 楽園にある魔法学院の学院長。アルカの最後の弟子で、彼以降アルカは弟子を取っていない。自分の後継者が現れることを期待していたが、誰一人として〈賢者の石〉の完成に至らなかったことから彼を最後に弟子を取ることを諦めた模様。

 アルカの期待に応えられなかったとはいえ、世界屈指の魔法使いであることに変わりは無く、人間のなかではトップクラスの実力者。〈楽園の主〉との謁見を許された数少ない人物の一人でもある。


・エミリア

 詳しくは探索者編を参照。精霊の一族出身の女性で年齢は二百歳以上。

 椎名とは魔法学院で知り合い、臨時講師をしていた。その正体は巫女姫の候補。

 不完全ながら〈星詠み〉を使うことが出来、魔法薬の調合を得意としている。

 椎名と同棲するなどヒロイン力を発揮していたが、〈精霊喰いエレメントイーター〉に襲われてシキと共に椎名の生まれ育った世界――現代の地球に跳ばされる。


・イグニス・アインセルト

 楽園を支えてきた三大貴族の一角、アインセルト家の嫡男で妹思いの青年。家に代々伝わる〈炎の魔剣〉の使い手だがユニークスキルには目覚めておらず、登場当時は焦りから空回りしているところがあった。

 所持しているスキルは〈魔力同調〉で本来は魔導具を少し上手く扱える程度の能力に過ぎなかったが、物語終盤では椎名の魔導具の力を借りているとはいえ、戦場にいる味方を強化し、数で上回るモンスターを相手に一歩も退かずに仲間を指揮するなど、英雄の如き活躍を見せた。

 過去編のもう一人の主人公とも言える存在で、最も成長した人物と言える。


・レイチェル・サリオン

 楽園の三大貴族の一角、サリオン家の令嬢。オルテシアの妹。

 椎名からは縦ロールのお嬢様と呼ばれていたが貴族であることを鼻にかける悪役令嬢と言った感じではなく、平民のアニタにも対等に接し、お茶会に誘うほど親しみがあり、むしろ仲間思いで努力家な一面のある少女。

 ユニークスキル〈赤き神の怒り〉で、炎魔法の威力を通常の何倍にも増幅することが可能。術者の怒りがそのまま魔法の威力に反映されるというスキルで、仲間の危機には大精霊イフリートの業火にも匹敵する威力を発揮する。


・イスリア

 青き国の長老家の娘であり、エミリアの妹。

 召喚術に長けており、大精霊シルフィードを召喚することが出来る。

 精霊の一族の歴史上、大精霊を召喚できるほどの〈精霊使い〉は片手の指で足りるほどで、仮にスキルの補助を受けているのだとしても類い稀な才能の持ち主であることは間違いない。ただ、才能の一言で片付けられないほど修練を重ねており、巫女姫候補の護衛に選ばれるほどの実力を初登場から備えていた。

 それもすべては姉のため、姉を支えるために努力した結果。

 お姉ちゃん大好きっ子である。


・ソルム

 青き国出身の〈精霊使い〉で土の精霊魔法を得意としている。

 登場時は長老家の一角と言う訳ではなかったのだが、セレスティアが椎名に無礼を働いた長老たちを粛清した結果、一族が長老家に昇格。その所為で実家から呼び出しを受けたり、椎名の生徒と言うことで妙な期待を背負ったりと、苦労の絶えない青年。

 椎名の生徒のなかでは一番地味で特筆した能力もないことから、自分には才能も華もないと自覚しているが、親友の――イグニスの力になりたいと陰ながら努力している。凡人であるが故にパーティーを縁の下から支える役割を果たしており、彼の存在がイグニスの成長に貢献していることは間違いない。


・アニタ

 マルタ商会の令嬢ではあるが貴族という訳ではなく、商家出身の平民。

 椎名の生徒のなかで身分は一番低いが、本人はそのことを特に気にしている様子はなく、イグニスやレイチェルも気さくなことから仲良くやっている様子。実際、一番仲が良いのはレイチェルで、ソルムとも立場が近いことがあって一緒にツッコミ役に回ることが多い。

 戦闘スタイルは俊敏さを活かした撹乱を得意とし、罠を発見したり気配察知にも優れている。


・ミラベル・アインセルト

 アインセルト家の令嬢にしてイグニスの妹。はじめてダンジョンに潜った際、覚醒したスキルの影響で魔力欠乏症を発症し、病に伏せていた。しかし、椎名に譲ってもらった〈万能薬〉で快復。

 命を救ってもらったことで椎名に深く感謝しており、淡い恋心も抱いているが脈はない様子。初恋は実らないと言うが彼女もそれは自覚しており、思いを遂げられなくても椎名の傍にいたいという思いで学院に復帰。その後、椎名の生徒になる。

 兄を鼓舞したり父親を叱責したりと、貴族の令嬢らしく強い一面もあり、物語の終盤でも兄に劣らない活躍を見せた。

 ユニークスキル〈黒き神の悪戯〉で人や物の配置を入れ替えることが可能。ユニークスキルだけあって対象や距離などの制限も一切なく強力なスキルではあるのだが、転移ではなくあくまで交換なので、人間、動物、建物なんでも良いので交換したいものと同じくらいの価値(魔力量や大きさなど様々なものから測定されている模様)のものが見つからなければ、配置を交換することが出来ないという制約がある。


・副会長(クリストフ)

 魔法学院の副会長にして、楽園の三大貴族ロガナー家の嫡男。

 しかし、ある事件で父親が失脚し、家も取り潰しとなったところを椎名に救われた。家族は楽園を追放されたが、彼が椎名の研究に協力することで〈青き国〉で不自由なく生活している。

 ユニークスキル〈青き旅人〉で離れた場所に一瞬で転移することが出来るのだが、これが普通の転移ではないことに気付いた椎名は彼のスキルを解析することで〈時空間転移〉の再現に成功した。

 いろいろと不幸な目に遭って恵まれない彼だが〈時空間転移〉然り、ここぞと言う時に大きな結果を残しており、戦後は魔王に気に入られて〈紫の国〉の要職についている。余談ではあるが、戦後は魔王の従者エレノアと世帯を持ち、三人の子供と幸せに暮らしたとのこと。

 なんだかんだと勝ち組人生をしっかりと歩んだようだ。

 余談ではあるが、彼の名はクリストフ・ロガナーと言う。



【楽園の貴族】

 楽園の主より、都市の運営と管理を任されている特権階級。そのなかでも三大貴族と呼ばれる高位貴族が女王(楽園の主)の代行を務め、主に楽園の管理と運営を担っている。

 三大貴族については下記参照。


・アインセルト家

 楽園の三大貴族の一角。三大貴族には基本的に上下関係がなく、女王より与えられた役目をそれぞれの家が務めている。祖先が〈楽園の主〉から〈炎の魔剣〉を賜っており、建国当時は英雄として讃えられていたとのこと。そのためか、楽園の代表として式典に参加したり都市の治安維持に務めたりと〈表の顔〉を担っている。

 アインセルト家の当主がイグニスとミラベルの父親だが、母親は既に他界している。なお、現在のアインセルト家当主とサリオン家当主は魔法学院時代からの旧友らしく、嘗ては同じパーティーを組んでダンジョンに挑んでいたそうだ。亡くなった妻も一緒のパーティーだったとのこと。


・サリオン家

 楽園の三大貴族の一角で、主に〈外の顔〉を担当している。

 現代の楽園で言うところの〈商会〉のような立場を担っており、各国との貿易や外交が仕事。現当主のロゼリアは娘が次期当主に相応しくないと言うだけで屋敷を追い出したりと厳しい顔を持つが、それも椎名に娘を近付けるための演技だった節があったりと、油断のならない人物として描かれている。

 ロゼリアのユニークスキル〈赤き神の陽炎フレイムヘイズ〉は、遠く離れた場所を投影できるというもの。交信も可能でユニークスキルだけあって距離による制限を受けることもないらしく、かなり使い勝手のよいスキルと言える。

 遠見の魔法と幻影魔法をあわせたようなスキルで、戦闘時には幻で撹乱することも可能らしい。 


・ロガナー家

 楽園の三大貴族の一角で、主に〈裏の顔〉を担当していた。

 闇ギルドと繋がっていて、楽園が建国した当時は国を脅かす者を密かに始末したり、諜報活動を主に任されていたらしい。しかし時の流れと共に腐敗が進み、裏社会を利用し、管理する側にあったはずのロガナー家が逆に取り込まれ、最後は闇ギルドと運命を共にすることになる。

 ロガナー家の当主は処刑され、これまで築き上げてきた貴族としての地位や財産も失ったが、椎名の口添えもあって家族は命を救われ、いまは〈青き国〉で平和に過ごしている。


・バルトロス

 楽園の貴族ではないが、ロガナー家とは一蓮托生の仲なのでここに記載。

 ロガナー家のもう一つの顔とも呼べる闇ギルドのボスで、〈魔装〉の二つ名を持つ元オリハルコン級の冒険者。アルカと戦った経験があるそうだが、まったく相手にもされなかったようで椎名に挑むも、為す術なく敗れた。

 どんな魔導具でも条件抜きで装備できる〈万紫の担い手〉というユニークスキルを所持しており、物理・魔法共に高い耐性を持ったメタルタートルの甲羅で作られたフルプレートの鎧と〈壊魔の戦斧〉と呼ばれる魔法障壁を破壊する力を持った武器を用い、力で相手をねじ伏せる戦い方を得意としている。

 実力は人間のなかではトップクラスで、相手が魔法使いであれば負け知らずの実力を持った厄介な敵ではあったのだが、魔導具を〈分解〉できる椎名とは相性が悪すぎた。

 


【ギルド関係者】


・バーグ

 楽園の冒険者ギルドのギルド長。元オリハルコン級の冒険者で現役を退いた今でも高い戦闘力を有している。椎名がブラック大入道と言うだけあって〈怪力無双〉こと東大寺仁に似ており、スキンヘッドと熊のように大きな身体が特徴。


・ヨルダ

 楽園のギルドのサブマスターで、秘書的な役割を果たしている女性。本人もミスリル級の冒険者であり、各国で人がモンスター化するという事件が起きた際には、冒険者を指揮して混乱を収束させた。


・アドリス

 オリハルコン級の冒険者であり、二つ名は勇者。

 エミリアの幼馴染みで、ディルムンドとネリーシャの弟子でもある。

 精霊の一族のなかでも名家の生まれで、その才能は数百年に一人と呼ばれるほどの天才剣士。エミリアほどではないが精霊の寵愛を色濃く受け、薄い金色の髪をしている。しかし、それは彼の才能ではなくエミリアによって与えられた加護だった。

 そのことに気付かず周囲を見下し、増長した彼は破滅の道を辿ることになる。余談ではあるが、セレスティアによって粛清された長老家の筆頭が、彼の部族〈エンバー〉の長老。



【青き国】

 巫女姫を現人神と崇める世界樹の国。

 三十二の部族から選出された長老によって国が運営されており、エミリアの〈フォルメウス〉やアドリスの〈エンバー〉も長老の一角に数えられる。〈精霊の一族〉の特徴としてエルフのように長い耳や人間より長命であることが挙げられ、精霊との高い親和性を生まれ持ち備えている。

 家名を持つ習慣がない代わりに部族間の繋がりが深く、エミリア・フォルメウスと言ったように名前の後に続けて部族名を名乗ることが慣習となっている。この場合、フォルメウス族のエミリアと言う自己紹介になる。


・ディルムンド

 青き国の長老の一人で、粛清の後はセレスティアに長老家の筆頭に任命された。

 夫婦揃ってオリハルコン級の冒険者であるが、ディルムンドの方がどちらかと言うと後方から支援する魔法使いタイプで、妻のネリーシャの方が近接戦闘を得意としているそうだ。


・ネリーシャ

 ディルムンドの妻で、エミリアとイスリアの母親。

 ユニークスキル〈凍れる灰の世界コキュートス〉で炎さえも凍り付かせる絶対零度の領域を作り出すことが出来る。その力はオリハルコン級の冒険者のなかでもトップクラス。夫のディルムンドをも凌ぐ高い戦闘力を有している。

 そこに加え、椎名から譲られたメイド服を身につけたことで、アルカやセレスティアを戦闘面でサポートするほどの活躍を見せた。


・シキ

 精霊殿を守護する巫女の長。セレスティアに仕えている。

 影を操る能力を持ち、過去にはオリハルコン級冒険者として活躍していた。

 ベヒモスとの戦いで重傷を負い、セレスティアに命を救われた(霊薬を提供したのはアルカだが)ことが切っ掛けで〈精霊殿〉の巫女となった。長い黒髪にスミレ色の瞳が特徴で、いつも巫女服に身を包んでいる。

 エミリアと一緒に〈精霊喰い〉に襲われ、現代の地球に跳ばされた。

 椎名から貰った腕輪を大切にしている。



【紫の国】

 魔族の国。魔族はホムンクルスのように人工的に作られた種族だと考えられているが、実際のところは定かでは無い。褐色の肌と頭に角が生えているのが特徴で、ホムンクルスとの大きな違いは子をなすことが出来ること。

 高い魔力量と人間よりも強靱な肉体を持っている点は、ホムンクルスの特徴とよく似ている。しかし頭の角が魔力器官の役割を果たしており、角がないと上手く魔力を制御することが出来ない。


・サテラ・リ・エルメス・カ・リディア

 今代の魔王にして〈紫の国〉の女王。幼い見た目をしているが、それは呪いの進行を遅らせるために魔力を制限していたのが原因。椎名に神器〈カドゥケウス〉を修復してもらい、呪いを解くことに成功した。

 実は〈三賢者〉に次ぐ実力者で、 カルディアの妹分的な存在。魔王城からの魔力供給を受けることで、一時的に神人に匹敵するほどの力を発揮することも可能と、世界最強クラスに恥じない実力の持ち主。


・エレノア

 サテラに仕える従者。嘗ては〈雷鳴〉の二つ名を持つ軍団長だった。

 戦争で角を失い、弟に軍団長の地位を譲った。いまはサテラの護衛兼教育係となっている。なお、椎名から譲ってもらった〈霊薬〉で折れた角は修復され、いまは全盛期の力を取り戻している模様。

 戦後、なにがあったのか副会長と結婚したようで、三人の子供を儲けている。


・ヴォルク

 エレノアの弟にして魔王軍の軍団長。

 二メートルを超える巨体が特徴で、魔族一の怪力を誇る。

 ただ少々脳筋なところがあり、姉のエレノアからよく叱責を受けているようだ。



【その他の国の登場人物】


・コルネリア

 緑の国の女王。十年前の大災厄の影響で苦しい生活を強いられる民を憂いて改革に乗り出すなど〈賢王〉として知られる名君ではあるが、教会派の貴族たちに足を引っ張られ、苦労が絶えない。〈緑の国〉は古代文明の遺跡が多く眠る地で、古代遺物の研究や管理を担っている教会の力が強い。そのため、教会派と呼ばれる貴族たちが議会の半数を占めており、他の国に比べて王の力が弱く、教会の暗躍を見過ごしてしまった。

 その結果、隣国である〈紫の国〉との関係が悪化し、本来は他国のことに口を挟まないようにしているセレスティアからも苦言を呈され、説明を求められる結果となった。臣下に恵まれず、最悪な時期に女王に即位してしまったために本来の力を振るえなかった不運な女王。

 本編後は国の建て直しに奔走しているようで、王族らしからぬ質素な生活送っているようだ。


・ガルバン

 魔女王の姉には多くの子供がいたらしく、その子孫の一人。

 魔女王の姉の孫の甥の孫。ようするに普通のおっさんである。

 自分こそが〈白き国〉の後継者だとセレスティアに助力を求めるも一緒にいた椎名に無礼を働き、シキにぶっ飛ばされた。



熾天使セラフィム

 ダンジョンに出現する天使の多くは自我がなく言葉を話すことは出来ないが、椎名が天使の親玉と呼ぶ特殊個体――熾天使は人間の言葉を介し、自我を持つ。それもそのはずで、熾天使の正体は元人間。

 天使に至るプロセスは明らかとなっていないが、適性を持つ者をダンジョンが選別している模様。ダンジョンで死亡したシオンが蛇のモンスターに転生した経緯からも、なにかしらの条件があるのではないと考えられる。

 椎名曰くホムンクルスに近い存在のようだが、通常のホムンクルスと違ってスキルのような特殊能力を使用することが出来る。そう言う意味では〈原初はじまり〉の六人に近い存在なのかもしれない。


・ルシフェル

 他の熾天使たちが記憶をリセットされて生まれてくる中、自我だけでなく記憶を継承し続けてきた自称ダンジョンの管理者。彼の所有する〈全知の書〉がダンジョンの管理者である証らしいが、誰からそれを渡されたのかは明らかになっていない。

 しかし、ルシフェルは自分を死んでも復活を繰り返す天使バケモノに変えた世界ダンジョンを憎んでおり、創造主に復讐を誓っていた。そのことから彼に〈全知の書〉を与えたのは、ダンジョンを創造した神ではないかと考えられる。

 ルシフェルの持つ特殊能力は、どんな魔法のアイテムでも適性なしに使用できると言う能力。バルトロスのスキルに似ているが、彼の能力は身に付けるものに限定されるのに対してルシフェルの力は魔法のアイテムであれば、どんなものにも適用されることから上位互換のような能力と考えられる。

 この能力を使ってアカシャの言う資格がないにも関わらず〈全知の書〉の力を完全ではないとはいえ、行使していた。

 最後は神にしか使えない神域魔法を〈全知の書〉の力を借りて無理矢理に発動し、塵となって消えた。

 未来の世界で椎名がルシフェルと似た天使を狩ったことがあるようなことを言っていることから復活はしているようだが、まだ記憶の継承を繰り返しているのかは分かっていない。

 なお、椎名の力を目の当たりにして復讐の相手と勘違いしていたことから、ダンジョンの神と椎名には何かしらの共通点がある可能性が考えられる。


・ミカエル

 地上に顕れた熾天使の一柱で、神殿騎士の団長に偽装していた。

 長い時間をかけ準備を進めていた計画を椎名に潰され、を召喚することで文明ごと消し去ろうとするが、結局それも椎名の放った試作型・魔導電磁砲〈カラドボルグ〉の前に防がれ、自身も命を落とす。

 彼の特殊能力は〈星堕としメテオフォール〉――嘗て地上を支配した竜種を絶滅させた星を召喚し、地上にぶつける究極の破壊魔法。文明を滅ぼすことが可能な魔法で、過去ダンジョンによって滅びたとされる世界の多くも、この魔法の餌食になったと考えられる。

 なお、身体を透過させることでどんな攻撃も無効化する〈不可視の光鎧〉と呼ばれる神器を装備していたが、椎名の〈カラドボルグ〉には必中の効果が付与されていたため、意味をなさなかった。現在この鎧はレティシアが譲り受けている。


・ガブリエル

 地上に顕れた熾天使の一柱で、教会の司教に偽装していた。

 元は楽園の貴族だったらしく、病に伏せる妻を治療するために錬金術の研究に没頭するようになった。〈楽園の主〉に対しては自分の願いを聞き届けてくれなかったことに対して逆恨みのような感情を抱いており、熾天使となった後も激しい憎悪をアルカに向けていた。

 なお、その妻と言うのが、椎名が屋敷の地下で見つけたテレジア。しかし、テレジアの姿を見て驚いた様子を見せるも、テレジアごと椎名を殺そうとしたりと当初の目的と行動が一致しておらず、熾天使になった影響で精神を病んでいた可能性が高い。

 最後は魔力暴走を引き起こし、椎名の放った〈黄昏の光ラグナレク・ロア〉によって命を落とす。

 ガブリエルの能力は呪詛・・に関するもので、様々な呪いを使うことが出来る。生命力を奪い自身の力に変えたり、カルディアを操ってアルカを襲わせたのも呪詛の力。椎名が〈星霊因子〉と名付けた力を暴走させ、人間をモンスターに変える特殊な魔素を研究していた節がある。


・ウリエル

 地上に顕れた熾天使の一柱で、オリハルコン級の冒険者に偽装していた。

 要塞の二つ名を持ち、〈最強の盾〉を自負するだけあって彼の能力は神の摂理に干渉し、自分だけを世界の法則の適用外に置くことが出来る。このことによって攻撃に限らず状態異常の類も一切通用せず、世界に存在する力であれば、どんなものでも無効化する。魔法だけではない。星霊力を用いた秘術でさえもウリエルには通用しない。

 だが、世界に存在しない力――聖気を解放したレティシアによって身体を真っ二つにされ、命を落とす。

 目立った活躍もなく命を落とした彼だが、セレスティアでは勝てなかっただろうし、アルカでも倒せたかどうかは分からないほどの強敵だった。レティシアとは相性が悪かったことが敗因。


・ラファエル

 地上に顕れた熾天使の一柱で、各国の工作や情報収集を担当していた。

 姿を自在に変える特殊能力を持っていたが、オルテシアとの戦闘中にアルカに不意を突かれ、為す術なく命を落とす。

 あっさりと退場したため実力のほどは分からないが、ルシフェルを除く熾天使は同格であることから弱いはずもなく、不意を突かれたこととアルカの方が上手であったことが敗因であると考えられる。

 椎名の正体について何か気付いていた節があり、神の意志を継ぐ者――後継者であることを示唆していた。〈天国の扉〉を試練と称していたことからも自分たちが障害となることで、神の後継者を探すことこそが天使たちの本来の目的であった可能性が高い。




後書き

 これにて人物紹介は終了です。明日から本編の更新に戻ります。

 登場人物が増えてきたら、また更新するかもしれません。

 早くて半年から一年先くらいだと思いますが……割と大変だったので。

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