第二章「親指下げる?中指立てる?」第二話
「グオオオオオォ!」
「ブホッ!ブホホッ!」
大きなゴブリンが吠えたと思えば大きなワイルドボアが吠える、その側にはユキオが居てハクトが居てキョーウンとニンフも居た。
周りに居る人達には何が起きているのか解らないが…只今作戦会議中である!
~実際の会話文~
「どうするんだぁ!俺達は何時でも暴れたって良いんだぜ?」
「それは俺達もだ!走り回ってぶつかる事しか出来ねえけどな!」
「まあその前に何となくな計画だけでもあるから聞いてくれん?」
「おう?まあそうじゃ無きゃ今頃暴れまわっていただろうしな」
「……何で言葉が解るんじゃろう?」
「ハクトさんの力でしょうか?」
「え…解るのですか?」
「はい…何となくですけど」
三者で話が盛り上がる側で不思議がるキョーウンに寄り添ってニンフはそう言い、その通りだが説明してなかった事を言い当てられて驚くハクトがそこに居た。
聖獣としての力なのだろうか「種族による言葉、発声の違い」をチューニングしてそれぞれに聞こえやすい形で自動翻訳されて聞こえる空間を作っていた。
ユキオは転生者故か神きゅんからの加護のおかげでそれが無くても出来ているようだったがその事に気付いていない、多分この先も。
「で?どうするんだよ。言っとくが頭を使う事は出来ねえぞ?俺も手下も」
「それは俺達も同じだ、どうするんだ?」
「まあ、解るかどうかはともかくとしてまず順序立てて言うから」
「解った」
友好関係としては十分なのか素直に従う魔物たちが居た。
ユキオの説明としては「三段階に分けての攻撃」だった。
・第一段階
今回の事で向こうから打って出てくる事は少ないだろうがもしそうでは無く改めて出てきた時は「貧民街を守る事よりも門の中に侵入して暴れまわる事」を重視して展開、行動してほしい。
「それじゃあここはどうするんだよ?俺達がやって来たからどうにかなったようなもんだぜえ?」
最初の説明を聞いてゴブリンキングがそう言ってきた。確かにそうなれば貧民街は蹂躙必至だろう、守れるとはとても思えない。
「だから『攻められないようにする』んや。自分達が守る場所を攻められてるのに攻めるなんて事せんやろ?それでもした時は相手にとって都合が悪いやろうし」
「まあ…そうだな…」
「それが出来なくても『門の向こうに侵入しようとし続ける姿勢を見せる』だけでも守りとしては十分やろうし」
「なるほど…『攻めて来る奴を攻める』って事で良いんだな?」
「せや。それで押し通せるならそれもよしや」
・第二段階
もし打って出てこない場合はこちらから攻める為に『門を壊す』
この場合は隊を二つに分け一つは町の外の向こうか側の門に展開してもう一つはこっちから貧民街からの門を壊す。
「この場合も基本はこっち側から攻める事は同じやけど…」
そこまで言ってワイルドボアに目を向けるユキオ。
「ん?なんだ?」
「丸太を担いでか引っ張って走って門に丸太をぶつけるとか出来る?」
「丸太?まあ俺なら一人でも出来るが他の奴となると…」
そこまで言われてユキオは地面に簡単な絵を示して説明すると「それなら出来るぜ!」と快諾した。
「向こう側で展開した部隊で引き付けているうちにこっちの門を壊してそこから侵入してほしい」
「おう!合図はどうするんだ?」
「合図は…のろし…のろし?」
そこまで考えてはいなかったユキオ。実際のろしのやり方も知らなかったのだがニンフとフラン伝いに話を聞いた人間から「参加したい」という声が出始める中で役割分担を決める中で誰がするかも決まっていった。
・第三段階
侵入しても民衆への襲撃や建物の破壊はしない。代わりに武器を持って襲い掛かって来る相手には容赦なしで。
「何なら入って大声上げて駆け抜けて走り回るだけでも十分や」
「それで良いのかぁ?暴れたりねえ気がするが」
「まあ魔物やモンスターとしてならそうやけど今回の目的は?」
「…あいつをとことん痛めつける事…だよな?」
「そうや。あいつはこの町の名士でこの国の政府にも顔の効く家の生まれやと聞く、そんな人の居る町が魔物に襲撃されて、蹂躙されて、我が物顔で歩き回る事が当たり前になってしまったって聞こえたら…」
「そりゃあ面子丸つぶれだな」
「せや。それを潰し、冒険者としての面子も潰し、仲間となってる奴等も残さず潰し…可能なら全員殺さずに城壁の上で一晩位は吊るしあげて欲しい」
「ッハッハッハ!そんな事されりゃあ俺達だってたまったもんじゃねえな!それをしろって事か?」
「せや。そのうえで向こう側の門を『町の内側から開けて魔物達を迎え入れる』」
「この町は魔物達に占領されたという事を見せつける為って事だよな?」
「せや、そして皆合流して堂々と行進でもここまで帰ってくる。勿論その間でも襲い掛かって来る者は攻撃して良し…どうやろ?」
計画の説明を一通り終えてゴブリンキングとワイルドボアの長は顔を考える様に顔を合わせたがそれもすぐ終わり、それを笑顔に変えてこういった。
『最高だな!いいぞ!』と。
かくして反攻の為の準備が始まった。
ゴブリン達の手で切り倒された丸太をワイルドボアが引きずり、人間が細工や縄を手配していく中で次第に「言葉は通じないが仲間」としての意識が出来ていったのか決行の時には意識は統一し、士気も高かった。
「じゃ!任せた!」
「こっちは任せて!」
決行は夜が明けてから、その為の準備としての行動を夜明け前から始めるユキオ達…
『向こう側の部隊』はユキオを隊長として所謂「手下ゴブリン」と「子分ワイルドボア」が数匹、そしてのろし係の人間が数名。
残りはフランとハクトが残り、キングと長、そして参加を希望した人間の残りで構成された。
もうすぐ夜が明ける…そして…どこか奇妙な襲撃劇が幕を開けるのだった。
続
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