第一章「決意とは?と叫ぶ者あり」第六話
町を離れて茂みの中へ少し進んだ頃だった。
ガサガサ…ガサガサ…
ユキオ達の周りの茂みから音が聞こえ始める、そればかりじゃなく木々の枝の擦れる音も聞こえ始めていた。
「ハクト、フラン」
「…そうみたいね、多分茂みに入る前からかもね」
「襲い掛かって来そうな雰囲気は感じられませんけど」
音の原因だろう相手の気配に一番早く気付いていたのはフランなのだろう、この辺りはさすがと言わざるおえない。あの後時間を見つけては軽めの試合モドキな練習を手伝ってくれたのでその分強くなったとは言え現状は未だフランが一番強いと思って間違いなだろう(実の所ステータスをちゃんと比較した覚えが無い)。
ハクトはユキオと同じ位、そして別の感覚でそれを感じている様子だった。
実の所気付いたのはユキオが一番最後だったりするがその事を確認する事は無いまま先に進むと。突然地面が揺れるような感覚に襲われる。
「っ!」
「向こうから来るみたいね?」
ユキオとハクトはその場で止まって構えるだけだったがフランはその上で気配を探り当てたのかそう言ってきた、その通りの存在が地響きを立てながらやって来たのはその後だった。
(……でけえっ!)
その一言が全てだった、そんな第一印象の中で構えて備えてはいるが未知数でしかない相手への不安はどうしてもあった。
…それが「ゴブリンキング」との出会いだった。
「おめえら…ここがゴブリンの住処だって解った上でやって来たってんなら…」
相手は警戒と威嚇の意味からか凄む様にそう言ってきた。
「待ってください!私達は戦いに来たわけじゃありませんから」
それに待ったをかける様に声を上げたのはハクトだった。
「ぬう……」
そう言われて睨むゴブリンキング。それを前にしてハクトは構えを解いて静かにその目を見つめ返していた。
「……」
お互いの空間の中に静寂があってそれを守る様になのか誰も動く事は無かったさっきまで聞こえていた茂みも木々も静かだった。
「……間違いじゃねえみてぇだな」
それを先の破ったのは…意外にもにらむ顔を綻ばせたゴブリンキングだった。
「おめえら!構えるのをやめろ!」
大声でそう叫ぶゴブリンキング、その声の大きさに耳を塞ぎたくなりそうになるがそれを堪えるユキオの周りで再び木々が茂みが動いたと思ったら周りから…正確には自分達を囲む様にゴブリン達が現れた。
「フランは気付いてたん?」
「ええ」
彼女の中ではもしもの時の算段も付いていたのか不安を感じさせずどころか笑顔でそう言ってきた。
「お前…聖獣だよな?何で人間の姿をしてるんだ?」
お互いの警戒が無くなった事を確認してゴブリンキングがハクトにそう言ってきた。
「解るのですか?」
「隠す気もねえくらいにバレバレだぜぇ?」
言われた事に少し驚いて反応するハクトにキングは笑いながら答えた。
「…そんなに解るものなのですか?」
「まあそれなりに魔力か法力を持ってる奴か俺等みたいな人間から魔物だモンスターだと呼ばれる奴等ならある程度はな」
「…そうですか」
ユキオの邪魔にならない様に、何より襲われない様に正体を隠してと思ってはいたがそれでも全然不十分だという現実に落ち込まざるおえないハクトがそこに居た。
「そんなに心配するな、そうだとしても解る奴は限られてるだろうよ。俺だって最初に聞いた時は驚いたぜぇ?」
その言葉に合わせる様になのか一匹のゴブリンがユキオに近づいてきた。
「俺が最初に見つけやしたがそうだと気付いたのは俺だけだったし、他の皆はそこまでじゃ無かったでやすから」
ゴブリンと言う先入観からすると肩透かしを食らうような低姿勢でそう言ってきた。
「…もっと厳重に気配言うかそう言うのを消す様にとかは」
「しなくても良いと思いやすぜ?まあ人間のやる事だ…そんな姿ってだけでも…やしょ?」
「…そうやね」
ユキオは既に二回起きた事を思い返してそう言って他の二人もそれを思い出して少しうんざりする様子を見せた。
「…それで?ここに来た理由は何だ?」
一しきりの会話が済んだと思ったのかキングが改めて問いかけて来た。
「あの…間違ってたらすいませんやけど…」
「構わしねえよ。ここを襲いに来たわけじゃねえんだろ?」
「それは勿論…言うよりかは…」
「…何だ?」
「あの時そっちがこっちを警戒してる様に感じたのが気になって…」
「ほう…」
この時キングの中でユキオの株が上がった。初対面から今までは「聖獣の付き添いの一番弱そうな奴」程度に感じていたもし襲撃に来たとしたら真っ先に狙うのは彼だろうという事も。
しかしこの一言でその目測が外れた事、そしてそれが間違いでは無い事に関心したからだった。
「フランとハクトも同じように感じたって言ったから確認で…」
「確認でゴブリンの住処に来るってか?俺が言うのもなんだが不用心じゃねえか?」
「まあ…それは…確かに」
「ッハッハッハ…!それにお前からは俺達を魔物やモンスターとして見てねえように感じるが違うか?」
「全く見て無いとは言えんですけど…まあ先日人間に豚呼ばわりされたし」
「豚呼ばわりかよ?そりゃあこっちの方が味方見たく思いたくもなるか…で、それを言ったのは女だろ?」
「…そうですけど?」
「って事はあいつか…」
その時キングの顔に困ったような苛立った様なそんな顔が浮かんだようにユキオには見えた。
「…知ってるんですか?」
「まあな。俺達がここに…追い出されたのはそいつのせいだからよ」
続
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