第六章「決闘と血闘と」第六話

 日が高く昇り、時間的には昼前だろうか?そこには…

『動けるようになった体を確認するように練習する頭』と

『その相手として摸擬戦を受けながら鉄の棒を振るうユキオ』の姿があった、

 後遺症と呼べる物は幸い無く、完治と呼べる位に治った事を確認した頭はリハビリも兼ねて体を動かし始め、何時ぶりだろう愛用の剣を手に振るい始めた。

 一方のユキオは頭より早く体調が戻ったのだがハクトが経過を見守ってる間する事も無かったので改めて本当に駄目か確認する為にフランに勧められた鉄の棒を時間の許す限り振ってみる事にした。やはり勢いが樫の棒よりも強くて振り回されて止めようとすると体が持っていかれて動きが止まるか最悪持っていかれてバランスが崩れる事が多かった。

(やっぱ無理かなぁ…)

 そう思ってると槍使いの女戦士から「石突をつけて棒の重さはもっと軽いのにして…」という提案をものにして見つけたのは「青銅の棒の両端に鉄の石突をつけた棒」でそれを振るってみると思いのほか持っていかれない事を確認してこれにしようという事になりフランからも「それで良いよ」と言われ槍使いも役に立ったと思ったのか嬉しそうだった。

 その後頭のリハビリが始まりその中で手ごたえを確実にする為に練習する中で摸擬戦を数回する事になった。

「やっぱりなまってるなあ~」

 苦笑いをしながらそう言うも行為そのものは楽しそうでユキオもそれが嬉しく思った。

「あ…そうだ」

 そんな日々が終わりを迎えようとした時に摸擬戦を終えた後頭が不意にユキオに声を掛けて来た。

「何?」

「あの子…ハクトだっけ?」

「そやけど何?」

「あの子……人間なの?」

「え…」

 いきなりとは言え言ってる事は間違いない訳でだがそれを素直を認めたらまた…そんな不安がユキオの中で膨らんでいく…しかし。

「別にそうだったら襲って捕まえようとか思ってないよ。それをしようとしたらあいつらと同じになっちゃうからね」

「あいつら…」

「聞いたよ?聖獣…白馬を捕まえてそれをネタに近づいて私達をものにしようとしてたって事」

「それは…」

 そう言われてハクトと初めて出会った時から今までを思い出す。そしてその気持ちからだったのか視線が自然とハクトの方に向く、それに気付いたハクトが近づいてきた。

「ユキオ?どうかしましたか?」

「実は…」

 そう言って耳打ちする仕草をするとハクトは従う様に耳を近づけて小言でその事を伝えるとやはりハクトも驚いて頭を見た。

「…どうしてそう思うんですか?」

「ん~…はっきりとは分からないけど空気が違うって言うのかな?そしてその空気を知っててね…」

 頭の中では答えは解っている様子でそれは間違ってない様に見えたユキオは…

「するなら止めんよ?」

「ユキオ…分かりました」

 そう言うとハクトの体が輝いてそれが収まると何時ぶりか解らない程久しぶりの白馬の姿になり全員が驚いて近づいてきた。

「……」

 それを前にして頭は「ほらね」と顔で言いながら微笑んでいた。

「あの…空気を知っているって…」

 白馬の姿になっても言葉は話せるハクトはそのまま頭に問いかけそれが更に他の皆を驚かせたが頭は動じなかった、その事に慣れている様に。

「実はさ。こうやって皆で集まって行動するようになる前に一度出会った事があって助けた事があったんだ。どこだったかはもう覚えて無いけどね」

 頭は堂々としていた。

「あの時は一人旅であちこち行っててその中でね。それで聞いた話で「光の聖域」の事を聞いてね。伝説でしかないから無いのかもしれないけど何も目的も無くふらつくのもって思ってここに来て…そこで情報が無くなっちゃってそこからね、皆と集まってこんな事をするようになった事」

「……」

(そう言えば闇の聖域があるなら光の聖域もあるよな?場所は…)

 改めて、そして言われてみれば当然な疑問が今更のようにユキオの頭の中に浮かぶ…そこへ。

(実は近いんだよね)

 神きゅんがポツリ呟く様にそう言う声が聞こえた。

(え?)

(でもこっちも安全じゃ無いけど急ぐほどじゃないから。聖獣達には迷惑かけるけど)

 寂しそうで苦笑いを浮かべてそうな声で神きゅんはそう言った。

(ハクトが目指してたのって…)

(そうだね。でも途中で見つかってその後はって事)

(…そっか。大丈夫なんやね?)

(大丈夫だよ。そうじゃないとしてもそれ以上にあっちの方が問題だから)

(解った)

 そこで会話は終わったのか声はそれ以上聞こえてくる事は無かった。

「聖獣って他に居たりするん?」

 頭に改めて確認の意味を込めて聞いた。

「それはわからないかな?私の覚えてる限りだとハクトで二人?目だし。他の場所に散らばってるなら話は違うだろうけど」

「…そっか」

 仮にそうだとしてもそれを探して見つける時間は無いように思えたユキオはその選択肢を選ぶ事を行動の中に入れる事はしなかった。

「ハクトは…」

「私はユキオについていくって決めてますから」

「そっか…じゃあその先に居たらその分だけやな」

「そうですね…」

 聖獣と仲良く会話する人間。それも「神々しい存在の側には相応しくないかもしれない相対的ブ男」だがそこにある空気は「信頼以上の物」を感じさせるには十分な物だったのか皆はそれを微笑ましく見つめる事だけだった。

 その後、ユキオとハクトが相談して「体に触れても良い」事を確認してそれを皆に伝えると全員一旦戦々恐々と言った様子をした後、恐る恐る近づいて触れて…和む姿がそこにあった。

(何か感じる所があったけど、これもそうだったのかもね)

 それを遠目で見ていたフランはそう思い、最後の番になって体に触れた。

「ハクト…」

「何ですか?」

「…よかったね」

「え?」

「ユキオに出会えた事がだよ」

「…はい」

 この少ない会話で二人の間にも友好が生まれ始めた事に頭は気付くのだった。


 続

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