第六章「決闘と血闘と」第五話
姿勢を戻して手の位置を戻してユキオは目を閉じた。
(できるとしても基準が解らん…まずは…)
そう思ったユキオは「先遣隊」としての400ml輸血をする。
額に置いた手から流れ出る感覚と手首を握った手から流れ込んでくる感覚に初めて恐怖を覚えるユキオがそこにいた。
『今、自分の中に自分を殺してしまうかもしれない物が流れ込んでくる』
と言う感覚は生まれて初めてな事もあったのだがその前でも「輸血し過ぎで気絶」は何回もありその結果が死でも仕方ないと思える気持ちは最初から今もある。
しかし今は別の恐怖に襲われそれに慣れていない事に戸惑い恐れる自分を否定できなかった。
自分の目の前には二つのウインドウ。「自分のBPと相手のBP」そして「それぞれの血液状況と量」が記されていた。
現状相手に関しては「血液量問題無し。破傷風感染の為に警告」が表示され自分の方は「一切問題無い」となっている。これがどこまで続きかつ「相手の警告が無くなるまでにどれだけかかり自分の体にどれだけの負担が耐えられるのか?」という見えないがはっきりとした目標があった。
(入れた物が帰ってきた分と今流れ込んで来た分次第やな)
「流し込んだ血液が感染されている」「流れ込んだ血液に感染される」という二つに対しての答えをユキオは待っていた。
神きゅんの言葉に間違いは無いだろう、その先の問題「自分の体と力」だけにおいての基準はこれが初めてと言う事もあって未知数でしかない為にどうしても段階を踏まざる負えなかった。
「流し込んだ血液が無事でその通り道で中和、回復している」
「流れ込んだ血液を中和、感染を阻止で来ている」
という二つが叶った時に改めてと思った時に…目の前の二つのウインドウの前に一つのウインドウが浮かびそこにこう書かれていた…
『「血闘(けっとう)しますか?」はい/いいえ』
(血闘って何?)
と一瞬疑問が浮かんだがそれが何を意味するかはすぐに理解した。
ここまでの時間は実は短く数秒の事でしかないのだがユキオの中では最低でも数分以上の事の様に感じて…その中で二つの問題の答えが解ると…
「…ハクト」
目を後ろに向ける程度に顔を動かしてハクトに声を掛ける。
「何?」
「もしもの時は俺にまず。大丈夫そうならこの人にも」
「…わかった」
それだけを確認して気持ち…覚悟と言った方が正解な気持ちを共有した事を確認して視線を戻して気持ちを改める様に深呼吸を一つ…そして…
(……血闘…開始!)
心でそう念じると今まででは感じた事の無い位の勢いで「流し込むというより吸い込まれる」ような感覚と「清流が流れ込む勢いが濁流が流れ込む位に変わる」感覚に全身から一瞬力が抜けそうになるが何とか踏みとどまる。
流し込んだ血液は…神きゅんの言った通りの働きをしていた。
流し込んだ血液は破傷風による神経毒を蹂躙と言わんばかりに撃退しながら体を駆け巡り、それに押し出される様に流れ込んだ血液を迎え撃つようにユキオの体内の血液は同じ以上の速度で撃退していった。
ユキオに見えるイメージで見える川の濁りが目に見えて綺麗になっていくように見えた。
「っ!」
しかし、物事はそのまま順調にとはいかなかった。
『兵は国の大事』と言う言葉がある。
『戦争は勝敗に関わらず被害と消耗しか残さないから大事と捉えなけれえばならない』という感じの意味なのだが今のユキオの状態がその状態だという事に気付いたのは疲労感を感じ始め体の力が抜け始めているのを感じた時だった。
血液量は変わらない、しかし「量は同じで質が悪化する」という状況がそこにあった。既に相手の表示は「警告」から「注意」に変わっていた。しかし対応していく中での避けられない消耗によって「BP変化なし、各数値減少」という状態がそこにはあった。
「ユキオ」
そこから来る異変をハクトは察知して背中を支える様に手を置いて力を注ぎ始める。それによって体調が改善した事を感じて顔を向けようとすると。
「私よりも!」
ハクトとしては強い口調で一言そう言い、そうだなと思い集中を続けた。
何分それが続いただろう?実際の献血において「400ml献血は10~15分」と言われ「成分献血は個人差と量による変動があるが1時間程度」と言われている。
今ユキオが宣言してから10分が経過しようとしている、血液のイメージは完全に治り「綺麗な川」がそこにはあり。注意表示も消えた。
顧みてユキオの方は最終まで警告は勿論注意表示される事も無いまま全ては終了し…
『血闘は無事終了…戦果は勝利』という中でそれは終わった。
「……」
手を離すユキオ。その瞬間後追いで一気に汗が噴き出て力で緩衝しきれなかった分がどうしてもあったのだろうか完全に手を離すと同時に崩れ落ちるユキオを抱きかかえるハクトがそこにあった。
「…終わったよ」
「…ええ」
強い疲労の中での精一杯の笑顔をユキオが浮かべ。それを安心させるようにハクトが笑顔で答えた。
「頭は…」
その様子を見て一人が声を掛けて来た。
「出来る事はした、治ってると思う、後は…」
そう言うだけでも気を失いそうな程衰弱している自分に気付きながらもポツリポツリユキオはそう答えた。でもそれで良かったのか皆の顔が一斉に明るくなった。
「後は私が。でも今は」
言葉を続けるようにハクトがそう言い、それが何を意味するかを知った戦士たちは開いてる小屋のベッドにユキオを寝かせ。改めて安らかに寝ている事を確認する。
ユキオが目を覚ましたのは翌日で、体はまだ少し重かった中でハクトは経過を確認しつつ対処できるように側に居続けた。力によって体調(と言うよりばデバフ)を解消する事は出来るがそのものを治す事は出来ないがそれが出来た以上はユキオが出来る事はもはやないと言ってもよく。
結論を言えば発症してから今までの中での体の損傷を回復できるのかは本人の問題でしかない以上は出来る事は少なかった。
そしてその出来事から数日の過ぎた頃……
続
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