第六章「決闘と血闘と」第三話
日が落ちてきてその間にも主にユキオに対しての質問が続いた。
その中で彼の言った事に疑問を持っていた槍使いが勝負を申し出てくる事になり生死を掛けて程では無いがもう一度決闘する事になるユキオ。
しかしフランが強かった事の体感もあってなのかその一撃一撃は弱く軽いものに思え結果的には改めて証明すると共に情報を交換しつつ教え合う事になった。
不信と言う程では無いが槍に好印象を持っていなかったユキオはここで認識を改める事になる。
そんな中でハクトに対する目は意外なほど少なく…いや、正確には視線に乗る意識が村の時とは違っていたという方が正解だった。
『細くて弱そうな女みたいな奴』
女の自分がそれをというツッコミがありそうではあるが腕に自信のある彼女達にとってそう見える程だったのだから好印象と呼べるほどでは無かった……日が沈むまでは。
ユキオと槍使いが話し合ってる中で痺れを切らせてなのか他の女性が勝負を申し出てくる、ユキオは塞がっているのでその矛先は自然とハクトに向かい。結果的には残り全員を向こうにしてハクトは戦う事になったが。結果は人数差から来る劣勢を覆す事は出来なかったが相手に有効打と呼べる物を一度も出させる事も無く、その上で舞うような格闘術に認識を改めると同時に見惚れ始める者が出始め終わりを迎えた。
「そう言えば一つ感謝する事があったよ」
夜になり、食事と明かりの為の炎を囲む様に夕食を取っている中でふとフランがそう言いだした。
「感謝?」
「あいつらをやっつけてくれたって事」
「あれはギルドの人達が主にやった事で…」
「そうね、でもユキオ達も戦ったでしょ?」
「それはそうやけど」
「しつこくて何度追い払っても懲りない上にさ…」
ユキオの言い分は解った上でそう言いだしたフランの顔が不快の色が強くなっていく。
「あいつら、アタシ達を自分の女にしようとする気満々でさ。そんな力も財産も無いくせに全然懲りなくて…」
それが全員の総意なのか他の皆も頷いていた。
まあ確かに思うだろうなとユキオは思っていた。
『強くて美しい女戦士集団』
一言で言えばその通りで、全員の服装も「防御力よりも機動性」と言わんばかりに軽装で服の上に皮装備、所々に鉄板をつけて程度で人によっては腕なり脚なり肌が露出して、人によっては「ビキニアーマーに片足突っ込んだような恰好」も居た、スカートスタイルの人が居ない事だけ位だろう。
「…ユキオもそう思ってたりする?」
そんな気持ちに気付いてかフランが声を掛けて来た。
「思うけど俺には勘弁やな」
「どうして?」
「それをしてどうする言うかその先言うかが無い以上は、それにそれよりもする事あるし」
「それが北に向かう事?」
「せやね、こんな事無かったら町に着いてたんやないかな?」
「そんなに近くは無いわよ?馬でも無いと」
「そっか…」
(馬ならある訳やが…)
ハクトに視線を向けながらユキオはそう思った。もしあの時ハクトの提案を受けていたらこんな事は無かったのかもしれない。
「目的地とかあるの?」
「あるけどまずはこの大陸の北の港やね」
「その先って事なんだ…」
「せやね……アーロフ大陸シーン地方って解った時は周りの人が驚いてたけど」
「アーロフ大陸シーン地方…」
そこでその場所に何かを感じたのか反芻するようにフランが言った。
「…道を知ってたりするん?」
「……まあね、でも……」
何か含みのある反応だった。道を知ってる事は確かなんだろうが。
「姐さん…興味があるならアタシ達の事は」
その答えなのだろうか?他の一人がフランに声をかける。
「そうはいかないよ、あの子の為もね」
それを即答で否定するフラン、ひょっとしたら前から何回かあった問答なのかもしれないとユキオは感じて、同時に疑問が浮かんだ。
「…あの子?」
「…ユキオには話しても良いかもね、本当はアタシは旅をしてたんだ。今日みたいに強そうな相手や興味を感じる戦い方をする人に決闘を挑んだり名の知れた魔物の退治や巣窟の探索とかしてさ」
遠くを見て、思いだしてと言う方が正解かもしれない様子でフランはそう言って話を続ける。
「そんな中でここに聖獣がいるって聞いてね、それを探している中でこの皆とあいつらに出くわしてしまってね。困ってるのはお互い様って状態になったから暫く居つく事にしたんだけど…」
そこまで言うとフランは急に立ち上がった。
「来なよ。その子に会わせるから」
「…うん」
フランに案内されて小屋の一つの中へ…そこには寝たきりの、彼女達と同じ位の年の女性がいた。
「あ…うあ…」
フラン達に気付いて顔を向けて声を…だが体は動かず声も出なかった、唇がまともに動いて無いように見えた。
「…この人は」
「元々皆の頭だった人だよ。アタシと共闘する形で戦ってたんだけどある日の傷が原因でそれから…」
そこからは聞くまでも無いだろうと思ってそれ以上は聞かなかったユキオ、しかしそれ以上に気になったのはその頭の女性の容体と現状だった。
「…少し触っても?」
「良いけど、ユキオは医者なのかい?」
「いや、「献血士」って言っても解らんやろうけど医者でも薬師でも無いし回復魔法も使えないよ」
「献血士…それがどうしようって?言っとくけど回復魔法も効果が薄かったし薬も探したけど見つからなかったよ」
「それ以外の方法で助ける事が出来るなら…まあ診てからやね。ハクトを呼んできてくれる?」
「いいよ」
そう言ってフランは小屋を出ていきユキオは頭に近づいた。
「う…あ…」
「無防備な状態で見ず知らずのブ男にいきなり体を触られて良い気はせんやろうけど…ごめん」
聞こえているか解らないがユキオはそう言って額に手を置いて、もう片方は近い方の手首を軽く握った。
「……」
目を閉じて意識を集中させると見えて来た赤い川…しかしそれは初めて見た物だった。
(…濁った川?)
印象としてはそんなイメージだった。黒いというか何というかとにかく「綺麗な川」という印象を感じさせない何かだった、それに意識を集中させていく中でフランはハクトを連れてきて他の皆も興味があるのか付いてきていた。
「っ!?」
それがある程度過ぎた時に相手のウインドウが見えた。BPの所に警告を示す表示がされてそれを開けた時にユキオは驚き…その病名を呟いた…
『破傷風』と…
続
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