第五章「この世界の変った所と村を去るまで」
第五章「この世界の変った所と村を去るまで」第一話
「んあ~」
部屋の前での騒動を終えてその後始末を終えてから改めて動けるまで体調が戻ったユキオは朝食の後村の復興の様子を見る為に宿屋を出て回っていた。
最初にお邪魔したあの家の家族とも再会して確認した後実際被害のあった場所を回っていく中でユキオが輸血した事で助かった人の家族とも出会って改めて感謝される事もあり、この村に初めてやってきた時に自分に向けられた視線や周りの空気は好転の一言で纏められる程にまでなっていた。
その夕方、ユキオは浴場の湯船の中に居た。
宿屋には所謂「公衆浴場」というものがあり。湯船に張ったお湯を浴びて体を洗ったりその中に入って浸かったりする形で場所や費用によっては複数の宿屋が共同で使用する形もあるという。
そんな浴場で…ユキオの居た世界と違った所は…
「まだ疲れが残っていたりする?」
「え?…いや…その…」
「回復魔法が必要な程じゃないとしてもしっかりとった方が良いわよ?」
「それは…わかってるけど…」
裸で湯船に浸かっているユキオの隣に裸のソニヤがいて。視線を他に向ければ…
『体を洗っている最中のミルとエイ』
『体を洗うのを手伝ってるアルバートと慣れてないのか時々変な声を出すハクト』
そして他にも宿泊客だろう人が居たが…はっきりしている事は一つ。
『この世界の公衆浴場は「混浴」が基本』だという事だった。
正直慣れてない、目のやり場に困る。とは言え男女に別れた浴場と言う物はこの世界には無いという。「設備の設置と維持の費用が問題」という事らしくよっぽどの大金持ちか費用を抑えられる要素のある所でない限りは男女に分けて設置される事はないそうだ。
体にタオルを巻いたりして体を隠す事もしない。それも普通で当たり前と思っているのか綺麗な体や豊満な体に視線が集まる事はあってもそれ以上は無くそれは男女に違いは無い。
一つ約束事があるとするなら「浴場内で所謂「行為に至ってしまう」事は全面禁止」となっていてその時は早々に浴場から出ていく事になり、当然だが「襲う事があればそれを止める行為一切は正当防衛」という暗黙の了解もあったりする。
万が一それを犯した時は「浴場の使用禁止」最悪「宿屋出禁」となり、少なくともその村や町の全ての宿屋で泊まる事は出来なくなるという。
そんな一定の秩序を保ちながらこの空間はこれが当たり前となっている。
「別に見る位構わないわよ?こんな所なんだし」
「それはそれ!言うか昨日今日ですぐ慣れる訳無いやろ?」
「…それもそうね」
体を乗り出して胸が当たりそうな位に顔を近づけて言ってくるソニヤに顔を背けて目だけを向ける事で精一杯のユキオに揶揄うつもりは無いのか体勢を元に戻した。
(豊満だったけど着痩せしていたのか)
と改めて思う位により豊満な体のソニヤがそこに居て。
その先で体を洗っているミルはソニヤ程では無いが所謂「シュッと」したスタイルで。
隣のエイは筋肉質では無いが痩せている訳では無く脂肪が無さそうな体で。
いつも着ている鎧そのままと思う位の筋肉ダルマと言うと大げさかもしれないがそれ位に大きいアルバートの前には男から見ても惚れ惚れする位に綺麗な体のハクトが居た。
「んっ!」
「おいおい!まだ慣れてねえのか?つうかいちいち変な声出すなよ」
「すいません…でも…んっ!」
背中を洗われている中で時々変な声(艶っぽい声?)を出しているハクトがそこには居てそれは初めて風呂に入る事になってから少しは収まったとは言え変わる事は無かった。
思えばこの宿屋に来るまで風呂に入る事は無く、水浴びをした事はある位だったので何週間ぶり位だった。先の家でも水浴びをした程度だった。
「で?これからどうするの?」
「…この村を出るとして目的地が解らないとどっちに行けばええか解らんから」
「場所のイメージはあるんでしょ?」
「あるで?でもそれがどこにあるかまでは知らんし…」
「地の底の闇の中で脈動する心臓…だっけ?」
「せや。それだけしか知らん言うんが現状やしなあ」
「それだけじゃ確かに解らないわよねえ」
「せやねえ…」
体は癒されるが頭の中までは癒されない理由を前にユキオはとりあえず考えるのを止めてくつろぐことにした。
風呂から上がって夕食は…改めて祝杯を!と言うよりは毎夕食が晩酌を兼ねているので毎日そうだった。
「飯をがっつく」と言うよりは「酒のアテを食べ比べる」形ではあるがそれでも人から見れはよく食べる方で食事量としては実はアルバートと同じくらいだったりする。
「…そや」
「何だ?」
「この村を出る前にご馳走を振舞いたい人がおるからそれをってな」
「それって誰だよ?」
「俺が連れて来た家族居たやろ?あの人らや」
「ああ…でもその前に村長に会いに行った方がよくねえか?」
「え?」
「会いたがっていたぞ?感謝したいってよ」
「感謝ねえ…」
「感謝される様な事はしたと思うぞ?してねえって思うのか?」
「そうや無いけどそこまで大袈裟には…」
「それでも会う位はしといた方が良いぞ?それとギルドにもな」
「ギルド…そっか」
「どうした?」
「いや次何処行こうって目標が解るかもしれんって」
「ソニヤとそんな話してたよな?確かにその方がいいな」
「じゃあ明日にでも行ってみるよ」
「おう」
会話はそこまでとアルバートは食べ続けユキオは飲み続け、他の皆はそれを微笑ましく思いながら談笑しながら食事を楽しんでその夜は更けていった。
続
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