第三章「初依頼 初戦闘 初仲間」第四話

 初任務完了。その後村に戻ったユキオ達はアルバート達の案内でこの村での拠点にしてる宿屋を案内されてそこを第二の拠点とする事にしたユキオ達はその後ギルドへ向かって依頼の達成報告と報酬を受け取った。

 この世界では「討伐、採取による対象を依頼を受けた時に貰う球体に近づける事で回収が可能で規定数を越えると色が変わりそれにより達成を確認出来る」というシステムが取られていた。

 なので「倒した魔物をその場か持って帰ってから解体~」とか「採取してきた物の品種、品質の選別」などをする必要もない。ただ達成報告時に「今回入手した中からこれが欲しい」という申請を行えばその分を報酬から天引きする形で貰う事が出来る為それを見越して多めに回収するという事も珍しい話では無いそうだ。

 ハウンド、そしてワーボア共に「一体銅貨一枚」の価値がありそこから解体等で細分化されたそれぞれはそれを合計とした計算の下に価格も細分化されているという。

 もっとも、この辺りの詳しい話を知りたいなら「冒険者ギルド」じゃなく「商業ギルド」に行く方が手っ取り早いのだがそこまでとは思わなかったユキオは二、三浮かんだ疑問をぶつけてその答えだけを聞くだけにとどまった。


 かくして初依頼を無事終了したユキオ…その夜…

「っっっかぁ~~~~!?」

 新しい拠点となった宿屋の一階にある食堂兼酒場でアルバート達と祝杯を上げていた。

 近くに海も川も無いから海産物こそないが肉と野菜と穀物と…食べられる虫(これにはユキオも最初は驚いていたが先の野宿の中で慣れていた)…

 そして何より…酒!酒!酒!

 酒を片手にやっとちゃんと調理された料理を食べる事が出来る喜びを誰から見ても大袈裟な位に噛みしめるユキオがそこに居た。

 乾杯の前から並ぶ料理に興味津々でそして小さい樽型ジョッキにはエール。乾杯の声の後一気飲みしてユキオは大きく声を上げた。

「お!良い飲みっぷりだな!」

 それを見て嬉しそうにアルバートが声を掛けて来た。

「いや~何時ぶりか解らんからな!飯も酒も!」

「野宿の時にも何か食ってたんだろ?」

「こういうちゃんとした料理は無かったって」

「そうですね…私は初めて見ました」

 嬉々としてる横で落ち着いた様子でサラダを食べているハクトが居た。

(白馬だから菜食?)

 と気にして注文する前に耳打ちするユキオにその気遣いを嬉しく思いながらも「こっちで選びますから」とやんわり断る姿を微笑ましく見るソニヤの姿があった。

 結果的にハクトは雑食だった事が後で解るのだがその時はそれに気付く事は無く、ただ団欒がそこにあった。

「お前は飲まないのか?」

「何をですか?」

「何って…酒に決まってんだろ!」

 ユキオが早速おかわりしてる横で静かに食べているハクトにアルバートは声をかける。

「お酒は…飲んだ事ないですから」

「そうなのか?折角の初依頼達成記念なんだ。いっぱいぐらい飲んでもいいじゃねえか?」

「……」

 ハクトとしてもその気持ちはある、そして実はお酒は縁遠い物では無かった。

 神話におけるお酒の位置は例えば「ギリシャ神話のネクタル」の様に「神酒」「霊酒」として珍重されたり神々が愛飲する物として扱われる事もあり「極上の薬」としても扱われる事も少なくない。

 殊「聖獣としての自分」にとってもそれは同じでそれはこの世界も同じような価値にあるからと言うのもあるだろう。

「…じゃあ…一杯だけ」

「お?じゃあ頼むか!」

 そう思いながらも自分だけ乾杯をしてなかった(そういう事がある事を知らなかったのが一番の理由だが)事もあって頼む事に。

「大丈夫?飲めないなら別に…」

 その光景が「アルバートが無理強いした」と思ったのかソニヤが助け船のつもりで声をかける。

「無理に飲めって言ってる訳じゃねえだろ?」

「そう見られても仕方ないわよ?」

「そんなつもりは…」

「そう見えなくもない…」

 言われて反論しようとするアルバートにミルがそう言葉を挟む。他の皆に比べるとペースは遅めだがエールを飲んでいた、口数は終始少ないがこれでもしゃべる方だったりする。

「まあまあ、飲めんかったら残りは俺が飲むからええよ」

「ユキオ?」

「無理に飲むなって俺も思ってるし。そこで気に入らんとも思わんし」

「そうだぜ!俺だってそうだ!」

 アルバートに助け船のつもりでそう言って待ってたと言わんばかりにアルバートが乗って来た。

 その直後に運ばれていたエールを手に取るハクト…そして…

「……えーと」

 ゆっくり手を上げて…それが何なのか察した全員が中に残ってる量はまちまちだが改めて…

「「「「「乾杯」」」」」

 ジョッキをぶつけて声を合わせてそう言った。

 それが嬉しいと思ったのかユキオの前でしか顔を崩さなかったハクトが初めてアルバート達全員を前にして頬を緩めて、ゆっくりとエールを口に入れていく。

「一気に飲まんでええよ」

 ユキオがそういう側から…

「っ!げほっ!けほっ!」

 口を離してむせるハクトがそこに居た。

「酒と炭酸の同時攻撃やから慣れて無かったらまあそうなるから」

「…はい…でも」

「…ん?」

「……おいしい…です」

「…そっか」

 そこから酒の席にハクトが入る事になった。結果を言うとこの場で集まった中では酒には弱いようだった…のだが…

「はぁ~…」

 ある程度お酒が回って来てから顔が紅潮して吐息を漏らし始めるハクトを見て…

(……おい……男かよこれが……)

 とユキオ以外が軽く戦慄を禁じ得ない程の色気を出しているハクトに別の意味で圧倒される光景がそこにあった。

「大丈夫か?」

「ええ…まだ…」

 気になって声をかけるユキオに応えるハクトだが体は少し揺れていた。

「でももうそろそろ飲まない方が良いぞ?何なら水を挟むか?」

「……そう…ですね」

 ユキオの問いかけにハクトは素直に従った…実はこの時にはもうかなり酔っていて翌日途中から記憶が飛んでいる事をハクト自身から聞く事になる。

「お前…慣れてるな」

「何が?」

「酒にって言うの?そういうのだよ」

「まあ、強いかはともかく好きなんは確かやし…そうやな…」

「何だ?」

「…この世界の酒を飲み漁るんも悪くないかもな」

「じゃあこの村から出る事も考えないといけないよな、どこに向かうとか考えてるのか?」

「それは考えてない、と言うか正直今がどこでどの辺りかもよう解らんのや」

「……お前、本当に「よく分からない」まま旅を始めたんだな」

「そうやね。やからこの出会いはありがたいって思ってるよ」

「へっ…そっか…」

 ユキオの言葉が嬉しかったのかアルバートは笑顔でそう返して他の皆もそう思ってくれたのかそれぞれに笑顔だった。


 かくして初依頼達成記念の小さな宴会は幕を閉じた。


 続

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