第三章「初依頼 初戦闘 初仲間」

第三章「初依頼 初戦闘 初仲間」第一話

 家を出てこれからが改めての始まりだと決めたユキオとハクト、これからは宿にも泊まってもっと人の中で生活できるようになろうと決めてまず向かったのはギルドだった。

「……」

 とは言えである、初めての依頼どれが良いのか解らない中で選ぶのはやはり難しい。幸い難易度ごとにクラス分けがされてあるので最下級を選べばまず問題は無いだろう。その上であるのは「討伐」か「採集」だった。

「討伐でええ?」

「はい」

 一通り見てハクトにそう問いかけるユキオにハクトはそう答えた。


『村周辺に出没する……ハウンド討伐』それがユキオ達の初めてのクエストになる。


「……」

 依頼の受理を確認して出ようとする中で改めてあの時別れたハウンドの事を思い出す。この戦いが決別となるのだろうとどこか思いながら。

「お?何にするか決めたのか?」

 そう依頼に対しては大袈裟な決意と緊張を感じ始めようとしていた時アルバートが声を掛けて来た。

「これにしようって事になった」

 そう言いながらユキオは依頼の内容をアルバートに見せる。反応は好意的だった。

「ま、最初だからな。こんなもんだろう、何だったらついて行くぞ?」

「え?他の依頼は?」

「今は無いな。それにお前等が気になってたのもあったからな」

「…どうする?」

「私は構いませんよ?用心は大事だと思いますから」

 ユキオとしては歓迎したいが念の為にハクトに確認、同じ気持ちだったようだ。

「じゃあ…でも…」

「心配すんな!別に取り分を横取りするわけじゃねえし。何なら俺達で近い所で出来る依頼を探して協力し合えば良いだけの事さ」

「そんな都合よくあるんかねえ?」

「ま、それは見てからだな。ちょっと待ってろ」

 そう言ってアルバートは依頼の張り紙がある掲示板に向かった。

「…討伐なのか」

「うおっ!」

「っ!?」

 それと代わる様になのか不意にユキオ達の後ろから声を掛けて来たのはエイだった。

「…エイさん?」

「ああすまない。癖だ」

「癖って…」

「と言うよりは意識して存在感を消せるからってだけよ?」

 そう言いながら近づいてきたのはソニヤでその側にはミルが居た。

「採集言うても何を探せば良いのか解らんし、何よりこの先求められるんは「生き残る力」って奴やと思うから」

「それもそうだな。これから先も旅を続けるなら魔物、それに時としては人とも戦わないといけなくなるだろうしな」

「そう思うよね?」

「それと、買ってきた装備の試運転も、かしら?」

「それが一番かもな」

「そう…アルバートは?」

「手伝ってくれるって。何なら近い所で出来る依頼を探して…」

「おう!見つけて来たぞ」

 噂をすれば影とでも言おうかアルバートが近づいてきた。

「ワーボア?」

「まあ人型の獣だな。獣の腕っぷしと人型だからそれなりに素早くて頭も働く。まあコボルトやゴブリンよりはましだけどな」

(早速というか改めてお馴染みの名前が出て来たな)

 そう思うユキオがそこに居て、全員で改めて依頼とどこに向かうかを確認し合う。結果的には村の西方、ユキオ達が入って来た村の入口を南側として(と言うよりはここで初めて地図を確認出来た)西側の森近くから森の深部手前までという事にして出発した。


 数日振りに村の外へ。ハクトは…久しぶりに安心できるのかなと思い目を向けるユキオの目にはそこまでは思ってなさそうに見えた。

「ねえ~」

 それは一重にソニヤがそばに居るからだった。あの時の女性達程色めいてはいないが迫っているようには見えた。

「な、なんでしょうか?」

 用心は必要と思いながらもその時は誰か止めるだろうと思って静観するユキオがそこに居た。

「…村で噂になってる事って本当なの?」

「噂…ですか?」

「ええ…二人はホモなんじゃないかって話」

「ホモ…」

 その言葉の意味が解らずに首をかしげるハクトがそこに居て、それを聞いて驚くユキオが居た。

「男同士で、恋人同士って事…どうなの?」

 いきなり結構な事を聞き始めるソニヤだったが意外にも他の皆は止めようともしなかった。

「…なあ」

「何だ?」

 流石にと思ってユキオは一緒に歩いていたアルバートに声を掛ける。

 ちなみに今の陣形は「前衛:アルバート、ユキオ 中衛:ソニヤ、ハクト 後衛:エイ、ミル」となっている。

「いきなりあんな事を聞いてるけど…」

「ああ、いつもの事だから気にしてねえよ。それにそれ位の事で態度を変えるような奴じゃねえし。俺もな」

「それ位…」

「何だあ?本当にホモだって言うのか?」

「別にそのつもりは無いで?ただそう言うのはよう解らんから」

「分かんねえって…どういう事だよ?」

「そのままの意味や。恋愛とかよう解らん」

「……お前」

「まあでも、ハクトは大切にしたいと思ってるからその為にホモだって言われるなら別にええよ」

「……」

 月夜にハクトが感じた程では無いが男として何かを感じるアルバートがそこに居た。恋愛に縁が無いわけじゃ無いが相対的には縁遠い事は自覚しているが好きな人がいなかったわけじゃ無く、振られた経験も無いわけじゃ無いが。そんな彼から見てユキオに別の得体の知れなさを感じさせた。

「ま、今はそれよりも…か」

 しかしそこは経験の差なのか任務中という緊張からの切り替えの早さからかスルーする事にしたアルバート。

「せやね。そう言うんは…ね」

 そこまでの思案が相手に会ったのかを確認する事無くユキオはそう言った。本当にそれよりも今は…

「っ!待て!」

 エイが不意に声を上げ、ミルが弓を構えていた。その一言でその場の空気が変り、全員が構える。ソニヤとハクトの間にあった空気も瞬間で消えて、ユキオは…

「…あれか」

 構える自分の目に何かが近づいてくるのが見えた。

「そうだ。しかし…」

 その目に見えたのはハウンド…では無くワーボアだった。

「俺達の取り分が先か。無理なら逃げるか隠れるかしろよ?」

「うん」

 咄嗟にそこまで判断して声を掛けるアルバートにユキオは答え、視線を送ると同じような事をソニヤに言われたのか目が合ったハクトは頷いた。


 視線を戻してその先はもうワーボア達がはっきり見える…そして…


 ユキオとハクトの初めての戦いが始まった。


 続

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