第二章 「最初の村とブ男気質と俺の職」 第七話

「献血士?なんだそりゃ?」

 ユキオの職業が決定した後さっき声を掛けて来た人に挨拶のつもりで声を掛けた時に返ってきた質問に返した返答がこれだった。

「まあそうですよね。でもこれで良かったって思ってますよ?」

「ま、認められない職業じゃ無いってんなら文句はねえな。でも誰かがからかうと思うぞ?」

「まあそれは仕方ないですよ」

「…そこまで解った上でって事か…じゃあ本当になにも言えねぇな」

 困り顔で男が言う。その男と同じテーブルの椅子に座る他の人は…

「あら~♥イイ男」

 ハクトを見て色めく「妖艶でグラマーな魔法使い?」が居て。

「……」

「……」

 こちらを見定めているのか睨んでいる様に見る「ハクトと同じ位線の細い体の盗賊?」と「弓使いのエルフ?」がいた。

「…それでこれからどうするの?」

 ユキオと男の会話が終わったのを確認してから魔法使い?が声を掛けて来た。

「これから武器と防具を買いに行こうって思ってます」

 …思えばギルドに来てからずっと他人行儀の口調のままのユキオ。神きゅんと話した時だけだろうか?砕けたのは。

「案内しようか?」

 ユキオがそう言うと躊躇いも無く魔法使い?がそう言った。

「いいんですか?」

「私は良いわよ?皆は?」

「俺はいいぞ?気になる事もあるからな。エイとミルは?」

「俺も構わない…気になるのは同じだから」

「私も…」

 エイとミル…それは盗賊?とエルフ?の名前なのだろう。男がそれぞれに顔を向けて名前らしい事を言った。

「そう言えば名前はまだ…」

「お?そう言やあそうだな。俺はアルバートだ!」

「私はソニヤよ」

「ユキオです」

「ハクトと言います」

「ユキオとハクト…名前も何処か変わってんな」

「どこか別の国か大陸から来たの?」

 名前を聞いて疑問を言うアルバートに乗るソニヤ。

「まあそんなもんです」

「そう…」

 それ以上は聞くのは野暮だと思ったのかそれ以上聞く事は無く案内する為に全員が席を立ち、ギルドを出て行った。


「それで?目当ての武器はあるのか?」

 案内されながらアルバートに声を掛けられるユキオ。

「まあせめて使い勝手の良い物か使い慣れている物があればとは思ってますけど」

「あるみたいだな…ま、そこから先は行ってからだな」

 そうこうしてる内に武器屋に到着。防具も扱っていたので「武具屋」と言った方が正解だろう。

 店内にはいかにもな武器防具が並び改めて「違った世界に来たな」と思うユキオがいて、選び始める。

「そう言えばハクトはどうやって戦うとかあるん?」

「私は…殴って蹴ってですかね」

「殴って蹴って…ああ」

 ハクトの言葉を聞いて思う所があったのか近づいて指をちょいちょいするユキオ。それを見て顔を近づけると…

「…馬の蹄鉄みたいな何か?」

 そうユキオが言うと。

「まあ、そんな所ですね」

 それが正解とハクトは笑った。

「あら~♪」

 そんな光景に何か感じるソニヤがそこに居て。「何話してんだ?」と疑問だけ浮かべるアルバートが居たがユキオが四人から離れた時に…

「…アルバート」

 エイがアルバートに声を掛けた。

「何だ?」

「お前には感じているのか?」

 その声と表情から真剣さを感じてユキオに対しては穏やかな笑顔だったがその瞬間戦士の顔になる。

「…お前も何か感じたのか?」

「ああ。ミルは俺達よりももっと何かを感じているのだろうがな」

 言われてミルの方を見るとエイよりも真剣な、というよりは警戒している様に見えた。

「…敵だと思うか?」

 それを察してアルバートがミルに近づいて声を掛ける。

「敵では無いと思う。でも…」

 そう言うとミルは手をかざす。そこには「ユキオとハクトのステータスウインドウ」が出て来た。ギルドに登録されると登録したギルドに対応した優先順位で表示される。

「この数値とレベルだけから感じる印象とは違う」

 そこには「いかにも冒険始めてばかりの「レベル1の冒険者」のステータス」が記されていた。勿論二人ともレベル1である。

「……そうだな」

 それと二人を見比べながらギルドで初めて向かい合った時の「得体の知れなさ」を思い返していた。

「……お」

 そんな四人を置いてユキオが探しているとあるものが目に留まる…それは「一見何の変哲もない樫の棒」だった。

「…あのー」

 それがお目当てだったのか口元を緩めてそれを手に取ると店主だろう人に声を掛ける。掴んで持ち上げるとそれなりに重たい、あくまで木としてだが。

「はい、何でしょうか?」

「試し振りって…駄目ですかね?」

「それをか?そっちにその為の場所があるからそこなら良いですよ?」

「はい、では」

 それを確認すると四人から見て嬉しそうな顔でそっちに向かって行くユキオが居た。

「おい、あれって…」

「見ての通りだと先の折れた槍?かしら?」

 それを見て驚くアルバートに説明するようにいうソニヤ。

「失礼な!壊れ物を売るなんて事しませんよ!」

 それを聞いてなのか店主が声を上げる。

「まあ、槍の先をつける前の物ではあるんですがね」

「あれで良いってのか?」

 疑問しか浮かばないアルバートはそれにつられる様に追いかけていくと。

「よっ!ほっ!ふっ!」

 手慣れた様子で棒を振るユキオがそこに居た。しかしその動きは「槍の扱い」とは明らかに違っていた。

「ハクトは何か決まった?」

「まだですね。どれが良いのかよく変わらなくて…」

 そう困った様子で言ってきた。

「試しにどう戦うか体を動かしてみたら?」

「え?」

「動きに合わせてどうするか決めてみるとか。まあ始めたばかりだから間違っても次の参考にってさ」

「…では」

 そう言ってハクトは体を動かす。元の姿が白馬なのだが旅立つ前に言った事は間違いないのを体現するような動きだった。

「ムエタイっぽいね?」

「ムエタイ?」

「鞭のような蹴りと肘うち膝蹴りを主体の格闘技やけど…それやったら」

 一しきり動いて確認したのか動きを止めてユキオがそう言うと店の中に戻って店主に説明しながらハクトの武器を選び、合わせて自分の分の防具も探し始める。


 結果、装備は以下の様になる。

 ユキオ:樫の棒、皮鎧、小手、脛あて

 ハクト・攻撃用グローブと靴、皮鎧、攻撃にも使える小手と脛あて(肘と膝もカバーして攻撃も可能)

 となり、その後改めてギルドでハクトの登録。蹴りもするから特殊な職業では無く存在する「拳闘士」では無く同じく存在する「格闘家」にしようとユキオが提案するが「ムエタイってユキオが言うならそれでいいですよ?」と言われて「謎職業コンビ」という意味で「職業:ムエタイ」となった。

 尚、ハクトの戦闘スタイルはあくまで「ムエタイっぽい」のであってその通りでは無い。

「決まったみたいだな」

「はい」

「…それと。ハクトに対してと俺達に対しての口調が違い過ぎねえか?」

「え?…まあ、その」

「他人行儀は無用だぜ?こんな仕事じゃ何時まで居られるかも解らねえからよ」

「……それもそうやね」

「…おう!」

 一通りを済ませてギルドを出ようとする二人にアルバートが声を掛けてきてこんなやり取りがあった。

 これ以降よほどのことが無い限りは他人行儀なユキオは無くなる。

「で、これからどうするんだ?」

「今日は買い物があるんでそれをして帰るつもりや。依頼を受けるとするなら明日からやね」

「そうか。面子に困った時に俺達が開いてたら助けてやるからその時は声を掛けろよ?」

「はい、そん時は」

「おう!」

「じゃあね」

 アルバート達とそこで別れを告げてユキオ達は市場に向かった。


 続

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