第二章 「最初の村とブ男気質と俺の職」 第六話

 翌日、ユキオは子供達の案内で冒険者ギルドに向かった。

「話の流れ的には商業ギルドなのでは?」という声がありそうだがこれから先は自力で売る為のネタを集めて行かないといけなくなる以上はその為の免許の方が良いだろうという事になり、「買い取り時の手数料の発生」は商業であれ冒険者であれ他であれギルドに登録された事が確認された時から無くなるという。


 …という説明を冒険者ギルドに着いて受付の人から改めて確認の意味で聞いている中でもユキオの周りにはいかにもな冒険者たちがパーティーを組んでいたり依頼を確認していたりしていた、そんな中でもハクトは注目され(やっぱり女性達は前程では無いが色めいている)それから逃げるにも全方位的なのでユキオの腕にしがみつく様に握って側に居た。


 で、改めて問題が発生する。「職業…どうしよう」である。

「すいません、適性検査的な物はありますか?」

 登録の為の書類を渡されて、幸い文字の読み書きはこの町に来てからの出来事で問題無い事が解っていたがその部分まで来て手が止まる。

「適性検査ですか?という事は何かの職業を目指してやって来たという事では無いのですか?」

「ええ、まあ…買い取りの時の手数料が無くなればと言うのと狩りや採集の為を無断でしたと思われないようにしたいだけですので」

「そうですか…」

 そうやって話してると…

「なんだぁ?戦う為に来たんじゃねえのかぁ?」

 いかにも「いかつい脳筋戦士」な男が近づいてきた。

「必要ならしますけどその為のあれこれがって…」

 つっかかるような口調でやって来た相手だったが別にケンカを売りに来たわけでもなく、何よりこの時点でユキオもハクトもなにも装備していない事も相まって「弱い者いじめにもならん」と思ったのか少し落ち着いたように見えた。

「武器なら使える奴で良いし魔法なら…ってそこから解らねえってか?」

「ええ、まあ…」

「かぁ~!おいおい!そこから解らないってのに何で冒険者になろうって思ったんだよ?」

 至極もっともな事を言ってくる。

「冒険とまではいかなくても行きたい場所がありますし、それにその道中で敵に襲われないとはとてもとてもって」

「まあ…そうだな…」

 そう言いながら改めて二人に目を向ける男。

(ヒョロでノッポで女みたいな奴と少しはましだが小さい奴が冒険者ねぇ…)

 それで何か思った事があったのか顔を向こう側に向けるとパーティーだろうか?三人ほどの集団にアイコンタクトでもしているようだった。それが終わると。

「…ま、頑張ってみな。何か分らないなら聞きに来ると良い」

「ありがとうございます」

 それが最後と相手は離れて行った。

「…それで適性検査は」

 受付の方に向き直って改めて聞くユキオ。

「出来ますよ、ちょっと待ってくださいね?」

 そう言って一旦離れると占いの水晶玉のような物を持ってきた。

「これに手を置いてください。適性の職業に反応して発光しますので」

「そうですか…では」

 言われてユキオ、続けてハクトと手を置いていく…すると…

「あれ?この反応は…」

 受付には珍しかったのか、二人ともそれぞれに発光はした…したのだがその色が珍しい色だったのか驚いた様子だった。

「職業は…」

「え~と…ちょっと待ってください?」

 そう言って奥の部屋に入って行った。それを見て周りが一瞬騒然とする。それはさっき声を掛けて来た男性と仲間もそうだった。

 少しして受付が戻ってくると…

「別の場所に案内いたしますのでついてきていただけますか?」

「…はい」

 言われるままに別の場所へ向かうユキオ達…

「…あいつ、一体何なんだ?」

 さっきの男性がそれを見て呟く。それは対面した時に感じた感覚も含まれての事だった。

(強くは無いだろう……だが得体がしれない)

 戦士としての勘がそう言ってる様に感じたあの時の感覚も含んで。


 向かった先は小さな聖堂のような場所だった。そこには司祭だろう人がいた。

「ここは…」

「結論を先に言いますと…お二人の職業は「不明」と出ました」

「不明?」

「はい」

 中に入って振り返り受け付けはそう言ってきた。

「不明ってあるんですか?」

「ええ、ごくごくまれで私は初めて見たんですがあの装置を使う時の説明でその様に言われまして」

「…登録できないという事は無いんですよね?」

「それはありません。ですが特殊な職業になってしまうのでその分人の目に留まりやすくなってしまうかもしれませんがそれでよろしければ」

「私は構いませんが…ハクトは?」

「私も構いませんよ」

「…という事でお願いします」

「解りました…司祭様」

「うむ」

 確認した後受け持ちを交代する意味で司祭に声を掛ける受付、それを受けた事を確認して受け付けは「解りましたらまた来てください」と言って出て行った。

「では…始めましょう」

「お願いします」

 司祭はまずユキオの頭の上に手をかざした……すると。

「…ん?」

 何かを感じたのかそう言う司祭。

「…どうかしたんですか?」

「いや…これは…本当に珍しい…」

 困った事が起きたわけでは無さそうだが少し嬉しそうでもあった。

「今、神の声を聞きました…「職業はその者が名乗りたい物を」と」

「神…が?」

「うむ」

 続けてハクトも同じような事をしてそれも同じ結果だった。

「名乗りたい物を…か」

「神はそう言われています。それを止める事は出来ません」

「………」

『なりたい物』…答えはあるにはあるがそれで良いのか?と思ったがそれで良いのかと思っていると…

「良いんだよ?」

 ユキオ達の後ろから声がして振り返るとそこには…

「おお…神」

「神きゅん?」

「…神…きゅん?」

 そうそこには神きゅんが居た。司祭は一目見てそう解ってうやうやしく応対しようとした直後にユキオの砕け過ぎた反応に戸惑うしかなかった。

「久しぶり…だね?」

「そうやね」

「ハクトも…大丈夫?」

「ええ…あれ?私の名前は…」

「ハクトで良いんでしょ?だったらいいよ」

「そうですか」

『神と友人のように接するなその男二人』がそこに居て司祭は混乱した。

「司祭様の言った通りでええって事?」

「うん、いいよ…良いって言ったよね?」

「は…はい…」

 混乱ばかりの中でどうにかそう答えるのが精一杯の司祭がそこに居た。

「……よし!じゃあ決めた」

「何にするの?」

 少し考えてそう言ったユキオ。神きゅんにそれを伝えると笑顔で「良いんじゃない?」と言ったのでそれにする事にした。

 ハクトは…戦い方やその為の装備を見てから考える事にした。

「じゃあ行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」

 ユキオと神きゅんがそう言い合ってユキオ達は聖堂を後にした。

「…困らせちゃってごめんね?」

 部屋を出て行った後司祭の方に振り返りながら神きゅんはそう言う。

「いいえ、私はあなたを信仰する身。まさか神自身が降り立ってくるとは…」

「こういう所ならどうにかね…でも…」

「……事態は深刻なのですか?」

「うん…そうだね」

 神きゅんが行雄から聞いた事は信仰する者達に知られている。一時はその中でどうにかという声もあったのだが状況が状況である事と求められる事を前に恐れる物やあろう事かこれを機に信仰を辞めてしまう者もあらわれる始末だった。

「…彼はまさか」

「うん、その為だよ…でも」

 それを察して問いかける司祭に神きゅんは答えた直後、全身が光ったと思ったらそこには…「人で言えば変わる前と同じくらいの年齢位の女神」が居た。

「あの子の近くだとこの姿になれなくてね」

「それは何故に…」

「解らない。でもそれをどうにかする力も今は無いから」

「……」

「…あの子の事お願いね?それだけしか言えないけど」

「……それは、これからの行動によると思われますが」

「そうなんだけどね…」

 そう言って扉の方に顔を向ける「本来の姿の神きゅん」の顔はまるで「弟を心配する姉」の様な「息子を心配する母」の様な顔だった。


 元に戻り改めて受付の書類の記入にはいるユキオ…職業にはこう書かれ。それを提出、すぐに申請された。


 ここに『献血士 ユキオ・モチヅキ』が誕生した。


 続

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