第二章 「最初の村とブ男気質と俺の職」
第二章 「最初の村とブ男気質と俺の職」 第一話
ハクトと一緒に旅をする事になって数日が過ぎ…森を抜けた先に早速村があった。
『トレロ村』
そう言う名前だと着いてから知る事になるのだが…ついて早々は別の問題があった。
「……」
やはりなのか村に近づく程にそわそわしている…いや不安そうにするハクトがそこにはあり、足も遅くなっていった。
「……」
それを見て…ユキオは思っての事なのか…
「……え?」
「手でも繋ぐか?」
「……」
この世界にやって来て変な憑き物が落ちたのか気が変ったのか前の世界ならまずしない言動を自然とする彼が居た。
「……はい」
それを見て一瞬固まるハクトだったが少し微笑んでユキオの手を取った。
二人が手を繋いで…『男二人が手を繋いで歩く光景』がそこにありそのまま村の中に入った…当然だが視線を感じる。
「……」
だが二人がそこから受ける印象は別のものだった。
ユキオは…「ハクト美人やから目が行くよなどうしても」と視界の中のこっちを見て色めく女性達を見つけながら歩き。
ハクトは………正直不安や恐れは消えてない。人の視線全てが「獲物を狙う目」に思えて仕方がなかった。
村に入ってから震えが強くなってる気がする位手からの震えが強くなった気がしたユキオは…
「…大丈夫?」
「え?」
それが間違いないのか少し驚いた様子でハクトは反応する。
「どうしてもなら村出ようか?」
「それは…ユキオの為になりませんから…」
「でもハクトは怖いんやろ?」
「それは…」
「手が震えてるで?」
「……」
ユキオを心配させてしまっている事に落ち込むハクトは頭を下げて動きを止めてしまった。
「……俺は別に」
向き合ってハクトに何か言おうとしたその時…
「ちょっとあなた!」
いきなり女性の声がして、ユキオが目を向けると怒っている女性が。それが一人では無くその声を合図になのか集まり始めていた。
「……大丈夫?」
ユキオを押しのけてハクトに近づく一人の女性、それが全員になりユキオを押しのけてハクトを囲む女性達になるのに時間はかからなかった。
「え…あの…えっと…」
ハクトを心配する女性達…は建前で「お近づきになりたい」理由がありありと感じられる雰囲気がそこにあった。ユキオは居ない事になっているようにユキオ自身も感じていたがその中で怯えて戸惑い困っているハクトを見ている中でユキオの中で膨らむものがあり…それがある程度まで行った時口から一つの言葉がこぼれた…
『盛りのついた雌共が息巻いて』と。
その瞬間その場の空気が冷たく固まった。
ハクトへの好意をそのままの熱意でユキオへの敵意、いや殺意に変えて向けるように怒りと不快感を隠さない女性達とハクトの目に映ったのは……
『目の光を失った行雄』だった。
「ちょっとあんた!いきなり何言って…」
「怯える相手に気遣いも無く詰め寄って囲い込んで…それを見て思ったんやけど何?」
「自分がこの人よりもブ男だからって何妬いてんだか…」
侮蔑の笑いと言おうかそれをユキオに向ける女性の一人、それは他の人も同じ気持ちだったのか個人差こそあれ似た反応をした。
「何や?この人を俺が口説いてるとでも思ってたんか?」
「そうじゃ無いなら何?」
「そのつもりや無いけど。あんたらがそのつもりやったって言うなら「口説く」言うんは「脅す」って事なんか?」
「そう見えるのはお前が…」
顔向けて顔を見て話す事も無駄でさっさと終わらせたいのか態度と言動が荒くなってき始める、しかしユキオは動じなかった。
「ユキオ…」
いや、実際には違った。ハクトには全く別の印象を感じていた。
『絶望と諦めと…それに近い色んな気持ちの塊の人間』がそこにいるように感じたからだった。
「とりあえずどいてんか?ハクトを怯えさせたままにするんも嫌なんで」
そう言ってハクトに向かおうと進むユキオを押しのけようと手を出してきた女性の手を…
パァン!
思ったより大きな音が出たが、そんな事も気にせずにユキオはその手を払いのけて進む。
「っまあ!女性に向かって何て乱暴な!」
「これだから良い男じゃないブ男は…」
色んな罵詈雑言をかける女性達をハクトに近づいて手を取ってさっさとその囲いから出ようとするユキオ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
その時に手を払いのけられた女性が手を痛そうにして怒り口調で声を掛けて来た。
「男として最低よな…」
「解ってるならさっさと…」
「そんな最低の男がここに居るわけなんやがなあ!」
振り返ってこの世界に来て初めて、いや元の世界でも無かったかもしれない位の怒号とも言える顔と声で女性達に怒鳴るユキオがそこに居た。
「っ!」
その剣幕に気圧される女性達を目の前にして。
「いい加減しろ言っとんねん!手を払われるだけで済むだけありがたいと思えや!」
「……」
「それとも何か?顔面一発でも殴らんと気が済まんかぁ!?」
完全に振り返って指の骨を鳴らすような手の握りをしながらユキオは怒気を弱めずに続ける。
「………っふん!ホモの癖に!」
言うに困ってなのか吐いた言葉がそれで。それを最後に女性達は動きを止めてハクトの手を引いてユキオが去って行くのを目で追うだけだった。
続
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