第18話 第二フェーズへ
◆◆◆ 第18話 第二フェーズへ ◆◆◆
まあ、予想通り。
カレンはレベルが高いがそれは聖女のホーリーやヒールを使って依頼者を癒していた成果で高かっただけで、一切戦闘をする事が無かった為に、魔の森では置物状態だった。
「お兄、ちょっと強すぎない?それでもアレと互角だったの?」
俺が魔物を倒す所を見せてみたが、本意を一度見せるとオーク辺りでは一瞬で爆発して血煙になってしまう。
それを見たカレンが俺に言ってきた。
「ああ、パワーと身体能力は向こうが少し上で、魔法は使えないから俺が上だな。あと再生能力も持っていたぞ」
「魔法が回復させられたらじり貧じゃん」
「それは傷を一瞬で俺も再生出来るから同じじゃね?」
「それで秘密兵器を考えた訳ね。一度使って見せてよ」
俺は小瓶をマジックポーチから出して、前で威嚇するオークに投げつけた。
「おー効いてる!効いてる!」
「だろ、ここの出来が違うんだよここの出来が」
頭の横をトントンして見せた。
「だけど…………こっちにも影響が…………」
「うん…………逃げろ!」
俺はカレンをお姫様抱っこをして脱兎の様に逃げた。
これだけ広範囲に影響があればアイツにも効くだろう。
こうして俺らはパーティーを作り、時々狩りをして、新しい罠を考えていく。
一週間が過ぎ、俺は約束の情報を得に、あの高級ホテルのバーへとやってきていた。
「して、この御方は…………」
「俺の妹のおまけだから気にしなくてもいい」
でっぷりとしたオリバー商会のオリバーさんの前で、高級なアイスを食べているカレンを見て固まっていた。
「会頭さんこんばんわ~」
「黙って食っとけ」
「ほーい」
またアイスに夢中になるカレンを放置して俺らは話を始めた。
「何か動きは?」
「ああ、もう一度調べたんだが、この国には18歳の高貴な方が二人いた。一代貴族の子供であるマロニーと王の孫、次期王となる長男の三男が18歳だと分かった」
「流石だな」
「既に内偵者を入れている」
「お、早いな」
「すみませーん御代わりくださーい!」
「ッ、次の満月まで三週間。当日の前後三日間は変身するらしいからな」
「内偵にも伝えてある。」
「当日はどうするんだ?」
「どちらかがアレだと絞られた羅、罠を用意するつもりだ」
「薬だとか?」
「一番良いのは眠り薬だろう」
「オレンジジュースくださーい!」
「ッ! あ、ああそうだな」
「それを食事の時に仕込められるのか?」
「その為の内偵だ」
「お肉も食べたーい!お肉を一つ焼いてくださーい!」
「ッ……追加の情報があればいつでも」
「あ、ああ、期待してくれ。次は一週間後に」
オリバーは肉をムシャムシャ食べるカレンを見ながら行ってしまった。
「後はどちらかがアレで確定するといいな」
「アイス追加でお願いしまーす!」
「太るぞ…………」
「う…………」
それからまた毎日冒険者の仕事を頑張った。
カレンもそろそろ何かをさせようと、先端がトゲトゲのモーニングスターを持たせると、レベルの高さもあって、ゴブリン程度であれば一撃で仕留める事が出来るようになった。
出来る事はある程度分かっていたので、ギルドの注意は無視しました。
回避と攻撃の連携を中心に教えると、カレンには意外にセンスがあった。
「だってゲームで慣れてるもん。お兄を抜いちゃうぞ
!」
何か可愛い妹が出来たようで、とても嬉しかった。
まあ週一でやるんですけど。
そして何度目かの週一が明日に迫った日、また密約の集会が行われた。
そこで分かったのは、満月が近づくにつれて落ち着かなくなっているこの国の王の孫であった。
「まだ確信はないのだが、どうも王の孫であるルガル殿下が怪しいと」
「満月の前の日に、何人か城の回りに見張りを出せれますか?」
「良いだろう、手配しておく」
二度目と言う事もあって、隣でバクバクと食べるカレンには気を逸らす事無く密会は終わりを告げた。
そして速めに週一の気持ちい事を終わらせた俺は、ぐーずかと眠るカレンを置いて、城壁の影に隠れていた。
勿論、風下を選んでだ。
数時間経つと、奴は狙い通りに現れた。
誰かと言う事は分からないが、城壁の高さ約6mを一気にジャンプする男はそういないだろう。
俺は確かめる為に王城へと急いだ。
時間は日を跨ぐ前だと言うのに、まだ町には出歩いている人が多く見かけられていた。
「綺麗な月夜ですね」
俺はタバコを吹かしているいる一人の男に声を掛けていた。
「でも怖い目に会うかもしれないですよ」
俺らは合言葉を決めていた。
「して、ここから出て来たのか?」
「ええ、ここからでは無く東の城壁から出たみたいですね。仲間からの連絡がありました」
「上出来だ、帰りもどのように帰って来るか見張っていてくれ」
「分かった」
俺はチップとして金貨10枚を渡すと、男はまた見えない位置に隠れて行った。
ビンゴだ!
オリバーの作戦だと、夕食時に若者を呼んでのパーティーを行い、そこで薬を飲ませると言う作戦だった。
だが、感づかれる恐れが高い。
匂いや味に気が付いて食べない恐れがある。
一応その事は伝えてあるが、俺は独自に町の外で待機し、出て来た所で勝負を掛ける。
二段構えの作戦だった。
勿論、捕縛出来ればそれに越した事はない。俺の財布からも協力金として白金貨を一枚オリバーへと渡している。
一度失敗すると警戒して暫く出てこない恐れがあるのだ。二度目は無いと思っていた。
それから時は過ぎ、再び満月の夜がやって来た。
オリバー主催の若者の貴族と商会の次期会頭を集めたパーティーは無事開催され、そこへ注目のルガル殿下もやってきていた。
つまらなそうに参加をしているが、回りの若者たちは貴重な出会いに熱心に会話をしていた。
「殿下、こちらを召し上がって見ますか?」
香辛料がたっぷり詰まったカレースープを俺は教えていた。
これならば眠り薬も分からないだろうと俺は思ったからだった。
「うん、頂こう」
ルガル殿下は気にも停めずにそのスープを飲んだ。
現場そ仕切る男はヤッタと思っていた。
だが、いつまで経っても殿下は眠る素振りを見せなかった。
そして何かに気が付いたのか、突然帰ると言って貸し切ったレストランを出て行く。
それを早馬を通じて城壁内で待機していた俺に連絡が入った。
「まさか、薬の耐性があるのか?」
「それは分からないです。だが、表情は険しかったらしいですよ」
「ありがとう。この情報を持ち寄ってまた作戦を練ろう」
伝令は静かに帰って行った。
第二フェーズへと俺は気持ちを切り替えた。
今まで文献を調べた事を纏めれば、狼男は俺の天敵だと言う事は分かっていた。
そして狼男はその嗅覚で敵の存在を確認し、突然行動を起こすとも書いてあった。
次期は5月。
また生暖かい風が吹いている中、俺は誰も居ないのを確認し、城壁の外へと超えて行った。
またあの長丁場の闘いをしなければならないかと思うと、少し嫌な気持ちになっていた。
だが、天敵だけあっていつ何時俺がやられるかもしれないと考えれば、やれるのは今が最適だろう。
俺は準備を行い、奴を待った。
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