第16話 運命の出会い
◆◆◆ 第16話 運命の出会い ◆◆◆
色々と集めたい物もあり、俺は歩いてアルシュタット領を出た。
そして暗闇になってから全力で盛りの中を走り抜け、閉門前には王都であるレリザーヌへと辿り着く事が出来た。
俺の考えではこうだった。
金持ちが何かの拍子に呪われ狼男になった。冒険者を殺すのは、自分自身の力を見せつける、単なる遊びだ。
もう一つは、貧困層の奴が金を持っている奴、つまり冒険者を殺して憂さ晴らしをしている。
中堅層はお金を稼ぐ事を考えて、商売に走る気がする。
依って、狼男は王都の貴族か大手の商人、又はスラムに住む貧困層のどちらかだと考えた。
だが、先ずは宿屋だ。
夜も遅いので少し良い服に着替えて高級ホテルに行って見た。
皮のバックを持って受付へと行くと、もちろん部屋は開いており、すんなりと部屋へと案内された。
金貨4枚と言うお高い金額だが、今の俺には関係ない。
部屋は広く綺麗で、一階にはお風呂も付いていた。
直ぐにお風呂へと入り、部屋でスーツに着替えてホテルのバーへと向かった。
少し見た目が若すぎるが、何処かの商店の息子には見えるだろう。
一人で蒸留酒とお摘みを頼んで飲んでいると一人の男がやって来た。
でっぷりと太った、いかにも商人の様な感じだった。
「失礼、少し情報の交換でもしませんか?」
「君は誰だね?」
人を値踏みするような目つきで俺を見て来た。
「とある商会の関係者としか言えませんが、私だけが持っていてもお金にはなりませんので、持っている情報を交換して、儲け話に乗りませんか?」
そこで腰のポーチから一枚づつ金貨を乗せていった。
一枚、二枚、三枚、四枚…………十枚を積み上げる。
単なる物乞いにでも映っていたのか、俺が金貨を積み上げていくと、男の目が明らかに変わっていた。
「乗ろうじゃないか。して儲け話とは何だね」
よし!掛かった。
俺は考えていた話をしていく。
「この辺りで狼男の話を聞いた事がありますか?実はこの町に満月になると狼男に変身できるさも高貴な男性が……18歳になられるらしい男性がいるとの情報がありまして」
「狼男? バカな、お伽噺じゃあるまいし。獣人じゃないのかね?」
「それが何例かの目撃情報もありまして。18歳の高貴な男性としか分かってはいないのですがね。その狼男を密かに欲しがっている御方がおりまして。」
「う――む、信じられぬ話だが、何人かが目撃しておるのならそれもまた信じられる話ではあるな。して、その代金は幾らになっておるのかね?」
乗って来たな。
だから商人は分かりやすい。
「その代金ですが、白金貨20枚に」
「何と!」
そこで自分が少し大声を上げた事を分かり、回りを見渡していた。
「白金貨20枚とは確かか?」
元の世界で言えば2億円ってとこか。
大金持ちじゃ出せれない金額じゃない。この辺が引っかかる感じになるよな。
「ええ、私どもが懇意にされているお方ですので、それは確かかと。ですが、私どもにはこの町に伝手がございません。ですので、この町に顔が利きそうである先生にお話を」
「18歳の高貴な方と言えば数は限られるぞ。一代男爵の息子……王族お抱えの商人の孫もその位であったか……それに王の孫もか…………してその代金の内容はどういうものだ」
「期間は半年。生きたまま捕らえられれば白金貨20枚ですが、狼男の状態で死んでいれば白金貨1枚。私どもへの配分は1割でどうでしょうか」
「1割でいいのか?死んでいれば大金貨1枚だぞ?」
「旅費で無くなりますが、それでもこの町に伝手が出来ますので……将来を見越せば黒字ですよ」
「うむ、良い話だ。だが、私はこの町に住んでいないんだ。5の町に住んでいるんだが、この話を他の者に話をしてもいいのか?」
「ええ、信頼できる方ならば。お判りでしょうが、余り大きく話が広がると、本人が隠れてしまいますからね」
「ああ、もちろんだ」
「私はこのバーに週に一回今の時間に来ますので、続きはその時にでも。私はマーク商会のマキと申します」
「私は五の町に住んでいるオリバー商会の会頭をしているオリバーだ。週に一度は必ず私か、部下に来させよう」
こうして俺の罠は完成した。
後は冒険者をしながらスラムの中へ入って調べよう。
一晩経って俺はギルドへ行って拠点の変更を届け出た。
アルシュタット領とは違い、流石は王都だけあって洗練された職員であったが、冒険者は何処も同じ素行も悪く脳筋だらけだ。
一人手荒い歓迎を受けたが、力でねじ伏せて直ぐに収まった。
狼男の事でイライラしてるんだ、構わないでくれ。
俺はスラムの様子を見る為に町へと出て人に場所を聞きぶらついた。
色んな商店があり、見ているだけでも楽しくなって来る。
あっちこっちをキョロキョロして見て回り、他から見ればお上りさん状態であるが、本人は一切気にしていなかった。商店街が終わる頃に道を挟んでバラック小屋が立ち並ぶスラムが見えていた。
その道には馬車が結構な勢いで走っているが、スラムは大きな道も無く馬車なんか通らないんだろうなと離れた所から観察を行っていた。
すると、何処からか声が聞こえていた。
「もうイヤー!私は自由に生きるの!」
甲高い若い女の声が何処からか聞こえて来た!
だが、直ぐ横を馬車が通っており、何処から聞こえたのかが分からない!
あっちか?いやこっちだったか?
気が抜けていた事もあって全く分からない!
ガサッと音が背後で聞こえ、振り向いた瞬間!
頭ほどある垣根の植え込みをハードルの様に飛び越えてくる黒い服の女が正面にいた!
足が俺の顔の横に通過し、余裕で避けようとした、その瞬間!
真っ白なパンツが見えてガン見してしまう!
最近、致していなかった事もあり、俺の目はその純白の存在から目が離せずに硬直していた。
「むぎゅ!」
そしてドッキングするように女の股間が俺の顔面にメガヒットした!
そのまま背後に倒れ、顔面騎乗の状態に!
久しぶりの女の香りに天国に居るかのような気分にさせられ、スーハースーハーと思いっきり息を出し入れしていた。
「いやん!ちょっと!息が荒いんですけど!」
「
「ああん!もごもご言ってるし!そこは敏感だからあああん!」
俺の顔に乗ったまま悶えている女。
今までの女性二人とは明らかに何かが違う。
身体がゾワゾワしている。
良い香りと何か違う感じが混ざっていた。
「カレン!何処に行ったの!戻りなさい!」
スカートの中の楽園に何処からか声が聞こえてきた。
その声に反応するように女は急に立ち上がる!
「ヤバイ!シスターが来たわ!逃げるわよ!」
女は立ち上がった俺の手を引いて分からない小道に入って一緒に逃げていく。
俺まで逃げなくても良いと思っていたが、そのカレンと呼ばれる女の横顔が可愛くて、俺は何か楽しくなって一緒に逃げていた。
これが長年の付き合いになるカレンとの出会いであった。
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