第15話 一路、王都へ

◆◆◆ 第15話 一路、王都へ ◆◆◆



「狼男?」


「ああ、確実に狼男だった」



 俺は戻って来るなりギルドへと顔を出していた。


そこにはまだ夜間業務を行っている夜勤の職員しか居なかったなかったが、報告だけはしておこうと思い、そのままのボロボロの姿で来ていた。



「昔、昔の伝説のような物語の中で聞いたような気はしますが、それは本当ですか?」


「この姿を見れば分かるかと。深夜から明け方近くまで戦い続けて引き分けでした」


「うーむ、やはり本当か。冒険者の中に大きな狼を見たと言うのはその狼男が返信した姿なんだろうな」



自分が再生できる身体だと言う事や、人ではありえない身体能力を持っていて、アイツも同じ以上の能力を持っている事は隠しておいた。


その方が話がこjれないし、討伐する時の協力を得られるのも言わない方が楽だと思ったからだ。



「取り敢えず、場所や姿形、どんな感じだったかなどの報告書を書きましょう。そしてそいつは何処に行ってしまったかなどを出来るだけ詳しく書いてください」



ああ、めんどい……



俺はギルドカウンターの中へと入り、机を一つ借りて必死に思い出しながら隠せる所は隠して出来るだけ詳しく書いた。


鑑定も書かない方がいいか。



それが出来上がる事、朝の冒険者達がゾロゾロと集まり出してきた。



「おッ! 伯爵が中にいるぜ」

「遂に悪さを働いたか」

「多分ギルド職員を殺したんだぜ」

「女に手を付けたか」

「伯爵って意外にデカチ……」


俺が何かあるごとに伯爵と言えって言っていたら、数人の冒険者が伯爵と呼び出した。


勿論、貴族の居る所や店などでは言わないように締めたが、こんなギルドでは少しづつ伯爵と言う二つ名で呼び出していた。


嘘も旋回言えば本当になるんだな。

掃除屋だとか、肉屋などと言われるよりカッコイイ!



「うるせー!朝まで掛かって狼男とやり合ってたんだぞ!エールの一杯くらい持ってこいや!」


伯爵と呼ばれるように、肉のブロックを酒場に寄付し、野郎どもに食べさせたりしていたからか、器量の良い男が直ぐにエールを持って来てくれた。


「ぷはあ!体に染みるぜ! 職員さん、報告書は此処に置いとくよ」




俺は報告書を書きながら思っていた。


アイツの弱点だが、狼男と言う位だから変身するんじゃないかと。

昨日は確かに満月だった。

だから、普段は人間の姿で、満月の夜に変身すると。


だからその人間の姿の時に倒せば良いんじゃないかと思った。


アイツの逃げた方向は北だった。

王都に逃げたのか、それともそこから回って近くの集落に逃げたか。回り回ってこの町に入ってきた可能性もある。


先ずは怪しい男を探し出そう。

この考えが正しければアイツは昼間や満月じゃない時は変身できない。


そこが俺の勝つ方法だと思った。




酒場で軽く肉を食べている時に、ギルドマスターが出社してきて、それから方向書を見せながら口頭で説明をしていく。


ギルマスが言うには狼男は確かに伝説的な話だと言う事だったが、狼に限ればそれは王都レリザーヌ付近でも大きな狼が確認されていると言う事であった。



ビンゴ!


多分奴はこの町か、王都に住んでいる誰かだ!


後は再び再戦して、逃げる奴を追いかければ人間になった姿を見られると言う考えだった。



俺は報告が終わると直ぐに宿へと戻り、マジックバックの中からある物を取り出し土の魔法でそれを変えていった。


幾つもの数を作り、宿屋の飯屋で昼ごはんを食べてから少しだけ寝る事にした。



そしてその夜。



俺は夕方から全力で走っていた!


馬車などはみちが悪い為にゆっくりとしか進まないが、俺がhんきで走れば馬車で1週間かかる距離を数時間で走破できる!


誰も居なくなった時じゃないと出来ない為に、今までしなかったが、今は違う。


あっと言う間に暗くなった王都、レリザーヌへ着いた。

まだ南門はが開いている為、8時頃の閉門まで待たなくてはならない。


満月の前後3日は満月同様だったはず。

と言う事は今日も出て来る可能性があると言う事だった。




南門が見える森の草むらの中に身を潜めて数時間。


やっと門が閉じられた。

そしてそれから暫くすると、暗闇に紛れて一人の人らしき者が少し離れた所で高い城壁を飛び越えて来た!



こんあ高さを超えられる人など居ない!


音も無くその場所まで移動していくと、そいつは森に入ろうとする寸前で止まり、俺の居る方を暫く見て、そして直ぐに戻っていく。



バレたか!


慌ててジャンプして行った先へと俺も登っていったが、そこには人影も無く、ただ無人の生暖かい空気が流れているだけだった。




だが、そこで俺は諦めなかった。


俺がこの場所から出るとすれば、何処から来たのかを考えて王都の中へ初めて足を延ばした。


だが、繁華街に入ると人通りもそれなりに多く、足取りを掴むなど不可能だった。



「ああ、こんな時に警察犬でもいれば…………ん?」


そうだ!警察犬!

狼も元はと言えば犬と同じ鼻が利く種類。俺の匂いをかぎ分けてバレたのか?

俺が風下に居れば分からなかったのかも。


って事はアイツは俺の事が顔も匂いもバレており、逆にアイツの手掛かりはこの王都に居る事しか分かっていないって事か。


負けん!

相手が犬ならば、それなりの事も出来る事を分からせてやる!



俺はそのまま逆走し、城壁を飛び越え、アルシュタット領へ戻る為に森の中を疾走していた。




その日の深夜に戻ると、俺は前世の記憶を辿り作戦を練っていた。


朝になり俺は屋台の串を食いながら商店街をぶらつき、色々と買い物をしていく。



そこでフッと考え、俺はギルドへと向かう。


「すみません、俺王都に行きますので。後は皆さんに宜しくお伝えください」


冒険者の居なくなったギルドで一言だけ言い、俺は宿屋に王都へ行く事になったからと、前金をそのままにして王都へと旅立った。

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