第13話 確信と離脱

◆◆◆ 第13話 確信と離脱 ◆◆◆



「ちょっと!マキシ私に何をしたのよ」



半分怒り半分不安で、俺が魔物の場所を聞こうと思った時、食いつく様に俺の間近に顔を寄せて聞いて来た。


「何もしてないよマジで。前もこんな事があったんだよね」


「それを早く言いなさい!で、その人はどうなったのよ」


「それが、実家に帰るって言って会ってない」


「身体はどうなったかも分からないの?」


「うん、それっきりだよ。会うたびに綺麗になっていったけどね」


「それは……毎回会う度にしてたって事よね」


「まあ、そう言う事だね」


「じゃあしなかったら元に戻るの?」


「さあ、毎日してたし」


「若いわね…………じゃなくて、今日もしちゃうの?」


「リンさんがしたいなら、俺は毎日でもしたいけど」


「むぅ卑怯ね。言わせる気?…………あ、何か聞きたい事あったんじゃないの?」


「ああ、魔物ってどの辺に多いの敵って思って」


俺はやっと本題に入って少し安心していた。



「此処は森にも魔物は居るんだけど、本命はダンジョンよ」


「ダンジョン!」


「ええ、マキシはソロでやっているんでしょ。ここのダンジョンは全てみんながパーティーを組んでいるのよ」


「それは何故?」


「相手も必ず2匹以上で現れるからよ」



へーそうですか。

一対複数なんて何度も経験しているし、いざとなれば一気に凍らせる事もできるでしょ。


表情を変えない俺にリンは飽きれていた。



「もう良いわ、関係無いような顔をして……聞いた私がバカだったわ。そうでしょ」


「うん、一晩で俺の事を良く分かってね。リンさん分かってるう」


「バカにしないの。してあげないわよ」


「じゃあ頑張って稼いできます!」


「あっ!ちょっと!…………日人の話を良く聞かないで行っちゃって…………場所を聞いてないでしょ、もおっ!」



俺はギルドを出たは良いが、結局場所を聞いていなかったのを思い出し、そこら辺を歩いていた冒険者を強引に呼び止め、ブルッているのを無視してダンジョンは何処で、どうやって行くかを聞いていた。




 ダンジョンはデロイトの町の南門でギルド出張所で台車を借り、それを引いて歩く事1時間余り先に言った森の中だった。


広い道が作られてあり、迷う事も無かったが、ダンジョンは自己責任で入れという看板が掛けられてあり、ギルド職員などは誰も居なかった。


広さは高速道路のトンネル位はあるので、デカい台車が余裕ですれ違える。


考えてみれば、オークやミノタウロスの上位種がいて、更に大きくなっていると言う事だけにダンジョンも広く高くないと立っていられないわな。


だが、此処には一つラノベや漫画、アニメと違う事があった。


中はぼんやりと明るく…………無かった。

進めば進む程に真っ暗になっていく。俺の異世界常識が崩れていった。


だが、闇夜でも穿きり見える俺は無問題!

一人死国の闇の中で、台車を引いて入る不気味な奴。

それは俺だけだった。


ゴトゴトと音だけを鳴らして近づくと、出て来る奴らが灯りで俺が照らされるとビクッ!としていた。

それも全員。


中は迷路のようになっているが、かなり広い為に迷っている感覚は少ない。途中大広間などや、突き当りで通れない事もあったが、一階層で初めて敵にぶち当たったのはそれから1時間も敬意かしてからだった。



「うぉりゃあ!」


2mもの剣を持ったゴブリンソルジャー、炎を出すゴブリンメイジ、オーク並みの力がありそうなゴブリンキングが6匹も出て来たが、一瞬で全ての足を折って首を踏みつぶしていく。


炎に一瞬だけ当たったが、全く熱くもかゆくも無かった。レベルが弱いのか、俺が魔法耐性が高いのか……


耳を削ぎ、貫き手で心臓付近にある魔石を抜き取る。



「ああ臭い臭い、ゴブリンは臭いから嫌だよな」



魔法の水を出して綺麗に手を洗っていく。


その戦闘を皮切りにオークが出始めた。

ただでさえデカいオークの中にハイオークと呼ばれる指揮官のような豚がいて、ブーブー言いながら手下のオークに指示を出していた。


こいつらは肉なので、頭を張り手で吹き飛ばして、ジャイアントスイングで血抜きをしてみた。



「ああ汚い汚い、涎がい付いた。洗え洗え」



台車にハイオークを含む6匹が乗せられた。


次もオークの群れだった。

残念ながらハイさんがいない。オークだけの群れでハズレだが5匹を追加した。



またオーク!


ああオーク!


来た来た!ハイオーク5匹!これは当たり!!



台車がいっぱいになった。





「ねえ、台車が小さいんだけど!もっと大きなモノを貸してくれよ!」


全力ダッシュで暴走列車のようにギルドまで戻り、一番デカい台車を借りてトンボ返りでダンジョンへ!



「オラオラ!俺は肉の宅急便!邪魔する奴はハムにするぞおお!」


血抜きがしやすいように頭だけ狙い、全てジャイアントスイングで血抜きをする。

広いから出来るこの芸当!回りに血が飛び散るが、ゆっくりと吸収されていくらしいので気にしない!



この日、一階層にはオーク以上の魔物は出て来なく、4往復して俺はこの日一番の稼ぎ頭だった!


「ふふふオーク、グラム銅貨2枚で全てで3700キロ。ハイオーク、グラム銅貨4枚で全てで2400キロ!

計算すると金貨74枚と金貨96枚!合計170枚~☆彡」


ゴブリンの稼ぎがゴミクズのようだ。


このオーク祭りは、ギルド始まって以来の大収穫だった!



クリーンなんていう便利な魔法は無い為、大金を支払って金持ちの入るお風呂屋で全身を洗う。

何?金貨5枚?どうぞどうぞ


次に更に胸を露出したリンと高級店へ行ってハイシャトーブリアンのミノ肉をお鍋で頂き、うどんのような物を入れてコカトリスの卵を入れ、ちょっと雑炊風にして頂く。

デザートは魔法職人が作る高級アイス。何故かバニラの味がする。バニラの木がこっちにもあると知った。


そして違約金を支払い宿を高級宿へと変えた。

一晩金貨5枚だが全く問題無い!


そしてエロエロなリンが気を失うまでやりまくった。

吸い付く様な肌が最高に気持ち良い。






「で、何か変わった?」


「おっぱいが盛り上がってる。お尻もブルブルのプリップリ。顔はもっと可愛くて…………エロ可愛い?うん、綺麗になった」


「よし!明日も…………今日も頑張って!」


「うすッ!」




一段と可愛く綺麗になったリンを褒め、今日も仕事を始める。


相変わらず身体は絶好調で、リンも調子は良いみたいで、隠れながら着替えて部屋を出て行った。


今日はギルドに行かないで、直接台車を借りて速効でダンジョンへ。


お金にならないゴブリンは蹴りの一発で殺して台車で轢いていく。


一階層でオークを狙いながら二階層への坂を探し、発見した時点で一旦ギルドへと戻る。


「また直ぐ持って来るからな、査定しといて!」


待っている暇がもったいない!

速効で戻り、一直線で二階層への坂へと向かう。


御飯などは現地調達!

オーク肉を削いで焼いて食う!

半生だけど、力がモリモリ湧いて来る!


二階層は半分程ミノタウロスが出て来るようになってきた。しかも霜降りA5ランク級だ!



ピピッ


・名無し

・3歳

・レベル31

・ハイミノタウロス(食用、特級)

・怯え



出くわした途端に怯えているのが解せん!


首をへし折り、順番にジャイアントスイングで血抜きをしていく。

オークとミノタウロスが台車一杯になったら速効で引き返す!


忙しいが、何と充実した生活だ!


夜は食欲、色欲に塗れ、昼は汗一杯に……ん?汗は掻かないが、一生懸命に働き稼ぐ!


前世では無かったこの充実感!



だが、そんな時に悪い知らせが入った。



「え?誰もいない?」


それはこの町に来て六日後のリンとの夕食時だった。

綺麗を通り過ぎて妖艶な色っぽさに変わって来たリンがポツリと言い出した。


「ええ、マキシが来たベルツ領に定期便を送っているんだけど、町は閑散としていて生きている人は誰も居なかったらしいわ。領主であるシュナイダー男爵も、護衛の騎士達も一緒にミイラになっていたらしいわね」



「それって病気?ミイラにされる魔物っていたっけ?俺がいた時は何も変わった事は無かったけどな。それにその事って俺に言っても良かったの?」



リンはニヤッと笑いながら気にしている様子は無かった。


「どうせ、明日になったら町に公表するわ。ギルドマスターは今頃シュタイン伯爵に面会しているわよ。原因はこれから調べるはずだからまだ何も決定していないわ」



「シュタイン伯爵って?」


「…………知らないの?このデロイトの町の領主である伯爵よ」



A5ランクの血の滴る程のハイミノ肉のタルタルを二人で食べていく。

俺に合わせてか、最近生肉のようなレアな肉をリンも食べるようになっていた。



「伯爵…………名前が良いな。俺も変な二つ名じゃなくて伯爵って呼ばれたいわ……じゃあベルツはこの町から調査隊が出るのか」


「そうね、一番近いからそのはずよ」



セクシーな唇に付いた血を舌で舐め取るリン。


「1万と少しの人間が僅かな期間で死ぬだなんて…………興奮するわね」


その目は俺を誘っているようだった。



そしてリンはその日特に激しかった。

獣の様に髪を振り乱し、後ろから強引にされるように誘ってきた。

俺も身体は興奮しているが、頭は冷静で乱れるリンを見て楽しんでいた。


最後にリンの目が金色に光っていたが、俺の頭の中はそれが普通だと認識しているように気にも留めず、自分で買った真っ赤なドレスを着て少しお腹が減ったからご飯を調達してくると言って部屋から出て行った。



俺はそれが当たり前と感じたのか、明け方になって軽く眠ったが、リンは明け方になっても戻ってこなかった。


勿論ギルドにも出勤してこない。


リンは消えるように俺たちの前から姿を消してしまった。



カレに続いてリンも居なくなった。


何となく理由は分かったが、それを自分で認めたくなかった。



リンの時とは違い、俺は変わらないダンジョンでの狩りを続けていた。


少し張り合いが無くなったので、休日を設けて町に繰り出す。


お金は腐る程ある。

新しい日用品を買い、久しぶりに武器屋へも行って見た。


実はこの町はダンジョンとは別に鉄鉱石や砂鉄などが産出されるようで鍛冶屋などの店も多かった。

色々な剣を飾っているが、今となっては武器を持たずに狩りをしているので、ビビッと来る武器は今一無かった。


だが、その中で俺の目を引く物があった!


「ステッキ?」


「お、お目が高いね。それも武器だよ」



爺さんが使う杖とは違い、握る所に髑髏のオブジェが取り付けられている。


店主は飾っていたそのステッキを持つと、髑髏の持ち手を捻る。

すると、それを引き抜き出した。


その髑髏の先から出て来たのは細身の剣だった!



「隠し武器って奴か?」


「分かってるじゃねえか。カッコいいだろ、魔物向きじゃねえが、これは男のロマンだ。分かるか?」


「男のロマン…………………………買った!」


「売った!」




その店主はロマンが分かる男だった。

実用品じゃねえ?

魔物向きじゃない?


そんなのはどうでも良かった。

どうせ一人で持って、引き抜いて、ニヤニヤしているだけなんだ。


店主は俺のロマン好きが分かったのか、奥から隠し武器や暗器を出してきた。



シルクハットに隠された刃物

カードに見える投擲武器

指輪に隠された毒針

ローブの裏に隠された武器を入れる隠しポケット

ブーツの先から出て来る刃物



俺は店主とロマンを語り合い、有るだけの男のロマンを買い取った。



「この店は贔屓にしよう」


俺の心の中は暗黒伯爵な気分で、雪が降る中を風を切って帰りながら自分自身に酔っていた…………



やっぱり男は形から入らないとダメだよなと、服屋へも行き、オーダーで武器に合うようなスーツ、タキシードを幾つも作った。

冒険者が作る物でも無く、そんな服を着る機会など無いと思うが、これは趣味だ!


一人でニヨニヨする為の趣味だ!


一日の収入の半分程の金貨を支払ったが、痛くもかゆくもなかった。


良い買い物だった。



ギルドへ行くと五月蠅い室内が一気に静まり返る。

いつもの事だ。


帰って来た肉屋などと言われているが、もとカッコイイ二つ名を付ける奴はいないのか?


最近のギルドはベルツ領の不振死の話題で持ち切りだった。

その情報を調べに来たんだが、調査に行ったグループもまだ帰って来ていないと言う事だった。


リンが居なくなって2週間。

何かあれば早馬で知らせが来るはずと言っていたが、多分全滅しているんだろう。


そしてその飛び火はダンジョンへも来ていた。


最下層の五階層にヤバそうなボスの様な魔物が居ると報告されていた。


俺はその事を確信し、聞かなかった事にしてそれから二日後にこのデロイトの町を出て行った。

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