第12話 共通点

◆◆◆ 第12話 共通点 ◆◆◆



 ベルツ領から馬車で6日。

野宿と小さい村に寝泊まりを繰り返し、辿り着いたのはベルツ領とは比べ物にならない程大きな町、デロイトの町だった。


ベルツの町頑丈は城壁も腰までのブロック塀の様なものだったが、こっちの城壁は持って立派な物で、かなり大きな都市だと言う事が分かる。


一人一人門兵に身分を調べられ、俺もギルド証を見せると直ぐに確認が終わった。



 国とは別の組織であり、国境を跨いで存在するギルドの存在価値を改めて感じた瞬間だった。



このデロイト領地は近くに小さな火山があり、その周りには森もあった。


温泉、魔物は確実。

町中には煙突も見える事から鍛冶屋なども期待できる。

パッと見はルナバックよりも大きく数万人はいるような大都市であった。



時間は昼過ぎであるが、取り敢えず宿を確保しないといけない。


ルナバックからベルツに行くまでの野宿は味わいたくない。テントなりの道具などもパクッっておけば良かったと今でも思う。


お金は持っているが、普通の宿を予約して今夜の野宿を回避する事に成功する。


後は飯と仕事、たまにチョメチョメだ。



ふと気になって自分を鑑定してみた。


ピピッ


・マキシ

・15歳

・レベル25897

・ば◆◆◆(呪い、進化中)

・健康

・眷属あり(不完全)



うん…………へ?


レベルは一切上がっていない。

これは大した魔物を倒していないせいか、想定済であるが、最後の眷属?

これはなんだ?


眷属って神様などの手下って言うか下僕と言うか、下っ端と言うような意味だろ?しかも不完全って。


いつどこでそんな仲間ができたんだ?

もしかしてマジックバックに入れたコカトリスの卵?

茹でた温泉卵は死んでいるんだろうが、生のまま入れている物も沢山ある!


ティマ―みたいにピヨピヨとコカトリスの雛を育てないといけないのか?


まあ、それも楽しそうだ。

悪く無いな。



何処かのゲームみたいに大きくなったら背中に乗れないかな~育ってからは食べらラナイよなとか、色々考えながらギルドへと向かった。



夕方近くのギルドは徐々に混雑している最中だった。


日中の討伐や採集を終えて帰って来る冒険者。

買い取りカウンターは列を成し、隣にあるであろうデカい解体倉庫の前にも台車などが列を作っていた。



忙しそうなので、挨拶は明日にするとして、依頼書の欄でも見ようと入って行った。


中はルナバックと同じ様な作りで、奥は酒屋になっていた。



「お前、知らない顔だな。早く帰らないと怖いお兄さんたちから金を巻き上げられるぞ」



依頼書の張ってある壁と俺の間に入って来る薄らデカい男がいた。

何時かはこんな事があるとは思っていたが、これが今だとは。


「俺お金持ってないから大丈夫だよ。だって取られるモノがないんだもん!」


冗談を織り交ぜて言ってやった。

俺は冗談が分かる良い男なのだ。



「それにしちゃあ良いマントを羽織ってんな。俺に貸してくれよ」


男は汚い手で俺のマントを羽織った肩を握って来た。


その瞬間、俺は男の手首を握り、外側へと練って足を軽く払い倒した!



「下郎が、汚い手で俺を触るな。ブッ飛ばすぞ」


倒した後だが、問題無いだろう。


言って聞かせてダメならば、実力行使するしかない。

冒険者なんぞ、ほとんどが脳筋の集まりだからな。



一瞬で倒された男は、自分の状態に気が付くと声を張り上げて来た!


「てめえ!何しやがうああああああ!」


立ち上がった所にベルトを掴んで外へと放りだす。


開けっ放しのドアから道へと転がっていく。



「ゴミ掃除終了っと」


俺は出来なかった依頼書を見ようとした。

だが、男はそれをさせてくれなかった。



「てめえ!外へ出てこい!俺が分からせてやる!」


腰から剣を抜き、俺を恫喝していた。



「ねえねえ、お姉さん町中で剣を抜いてるよ。殺しても良い?」


俺たちの行動を見ていた栗色のショートカットのギルド職員に聞いてみた。


「ダメです!」


「だって道で剣を抜いてるよ? ダメなら半分殺す?」


「半分って何ですか!それもダメです!」


「じゃあ骨数本折って黙らせるのは?」


「ダメ! 働けなくなるでしょ!」


「じゃあ腕一本!」


「う…………それくらいなら……って言うか、あなた勝てるの?相手はBランクなのよ?」



俺はドア前で指をクイクイと出してこっちに来いとジェスチャーしている男を見つめた。



ピピッ


・ザンバル

・24歳

・レベル35

・冒険者

・軽い疲れ



「問題ないよ。売られた喧嘩だからね。きちんと買ってもらおうかな」



「おらっ!来いよ! 待ち長げえんだよ!ビビッてんのか?」


「おっさん、剣を抜いたって事は良いんだよな。その覚悟があるって事で」



さあ、ギルド職員の言質も取ったし、回りへの見せしめにしてやろうか。

いつまでもこんな輩が来るんじゃ面倒だからな。



「口だけは一人前だな、腕の一本で済ませてやるよ」



俺は後ろに下がっていくザンバルに続いて外へと出て行った。



「掃除屋! やっちまえ!」

「そいつ生意気なんだ!」


おー、俺を知ってる奴もいたか。

ルナバックの冒険者か?


暇を持て余しているのか、ギルドの中から冒険者がゾロゾロ出て来て俺らを囲みだした。



「得物が無くてもいいのか?」


「使うまでもないだろ。一瞬で終わらせてやるよ」


「死んで詫びろ!!」



ザンバルはいきなり上段から斬り掛かって来た!


俺は殺したらダメで、こいつはいいのか?

だが、俺には分かっていた。

動きがみんな遅い。

スローモーションに見える斬撃に、寸前で真横から裏拳を当てた。


バキンッ!  グサッ!  バキバキッ!



剣を根本から叩き折り、折れた刃が地面に突き刺さっていた!


動きを止めたザンバルの腕を掴み、少し強く力を入れて肘を握り潰す!



「うぎゃああ!」



喚いている男は膝を地面に付いて肘を押さえていた。

その男の目の前に立った。



「今なら許す。プライドの為に死ぬか?それとも謝るかを選べ」


男の前に突きだした人差し指の前に火球を発現させる。

それは徐々に大きくなり、男の頭の大きさを超えて直径50cm程度までになっていく!



俺の中の残虐性のある顔が出て来た。

コントロール出来ない事は無いが、心の中の声が、『殺せ』『威厳を見せつけろ』と叫んでいるみたいだった。


いつの間にか冷たい風が吹き始めていた。

火球を黙って見ている男に粉雪が当たりだす。


「さあ、答えを言え。魂となって地獄の迷宮で彷徨うのか、それとも地上で奴隷となって鞭を打たれるのか?」


火球は更に大きくなり、直系1m程までになっていく!


火球の表面にはプラズマ化したイオンが火花を散らせている。その様はまるで生きているようだった!



「す…………すまなかった。二度としない…………助けてくれ」



「…………つまらん! やるなら全生命力を掛けて掛かって来い。いつでも相手をしてやる。次は命は無いがな」



火球を両手で握りつぶし、俺はギルドへと戻っていく。


入口にデカい独活の大木が邪魔をしていた。


「退け」


それでも退かなかったので、俺はそいつの腕を取り引き寄せた上で髪を握って地面に叩きつけた!


2m以上はある大男だったが、意外に簡単だった。


鼻くらいは折れただろうが、身動きしていない。言葉が分からなかったんだろう。


俺は開いた入口からギルドへと戻った。



「骨は一本ですよね。守りましたよ」


「それでもやりすぎです! あなたは……全く。見かけない顔だけど他から来たんですか?」



ショートカットの職員は、飽きれた顔で俺に言ってきた。

丁度良い、一応拠点を移動して来た事を言っておこう。


「マキシって言います。今日から此処を拠点にするんで宜しくです」


「マキシさん、ギルド証を見せてもらえる?」


俺は首からギルド証を外してお姉さんに渡した。それを見たお姉さんは、飽きれながら俺に返してくれる。



「マキシ…………ルナバックの生き残りって訳ね。夜の掃除屋、オーク宅急便、ミノタウロス便…………噂はここまで来ているわよ」


「そりゃどうも。で、この町で美味しい飯屋を教えてくれないかな?一緒にどお?」





「んまいんまい!」


俺は仕事終わりのリンに連れられて美味しいと評判の飯屋に連れて行ってもらった。


リンは、栗色のショートカットの振ギルド職員だ。

俺が冗談で言ったのを本気にしたのか、もう直ぐ仕事が終わるからと言って掲示板を見ていた俺と合流し、町へ案内されながら飯屋へと連れて行ってもらった。


ミノ肉のステーキなんだが、何か違う。油も乗っていて、上品な味がしている。


「これ美味いよね。ミノ肉だろ?何でかな」


「この辺にはミノタウロスの変異種がいるのよ。強さも上だけど、味はもっと上ね。だいたいお金もってるの?私そんなに持ち合わせがないんだけど」


「掃除屋を舐めるなよ。一晩で金貨1・2枚は余裕だったよ。台車さえ大きなモノがあればオークやミノも、もっと狩れたんだけどね。ねえ、おっぱいが風邪ひくよ」


「出してるの!そう言うファッション!」



リンは仕事着のスーツから私服に着替えていた。

すると、中身はデカかったのか、胸元が広く開いたシャツに上着を羽織って出て来た。スカートもタイトなミニでロングブーツを履いている。

冬にしては気合の入った服だった。


「へーお肉冷めないうちに食べれば?」


「食べます!言われなくても……はむ……もぐもぐもぐもぐ」


美味しいと評判だけあってお客は多かったが、少しお高い店だけあって室内は快適で、混雑するまでは無かった。


そこで一番高い肉を頼んだ。二人一緒の物を。


リンの言葉は少しキツイが、顔は次第に綻んでいた。

美味しい証拠だ。


ゆっくりとご飯を食べ、支払いは俺が全部払った。



「金貨3枚よ。そんなに稼いでいたの?」


「まあね、そんなに贅沢しなかったし、貯めてたのもあったからね」


「そお…………でもごちそう様でした。美味しかったわ」


「じゃあ次は俺の宿に行こうか」


「え?ちょっ ちょっと……強引ね。私マキシよりずいぶん年上よ」



確か21歳と言っていた。

本来であれば俺の年上なんだろうが、元々の年齢は24歳だったんだ。

アノ時の記憶からすれは少し年下って感じに見える。


「問題無いよ。年上って感じじゃないし、可愛いから全然OKだよ」


「もう、今回だけですからね。余り軽い女じゃないんだから」


そう言って付いてくるリン。

やっぱり軽いんじゃないのか?




宿に連れ込み、追加料金を支払ってお湯まで出してもらった。

恥ずかしいからとオイルランプを消して真っ暗に近かったが、夜目が利く俺には全く問題無かった。


童貞を卒業して少し女性を喜ばせる事も出来るようになっていた後の事だったので、リンは喜んでいた。

俺も埃だらけの荒野と、商人や幼児のある男だらけの馬車だったので、柔かい身体に夢中になっていた。


リンは何度も求める俺に疲れ果て、桃源郷を感じながら眠りに付いた。




早く目が覚めた俺は、桶に入っていた水を捨て、新しいお湯を魔法で出して身体を拭いていた。



「その細い身体なのにスゴイ体力ね」


確かに俺は食っても食わなくても、余り体形が変わらなかった。

体力が落ちると言う事も無かった。


この大地から湧き出るように力が入り、常に体力がマックスの状態が続いているのだ。

エッチくらいでは全く問題無かった。



「リンさんも良かったよ。俺の心が潤った、ずっとやっていたいね」


「バカね、本気にするわよ」


俺は新しいお湯とタオルを出してあげると、リンは隠しながら身体を拭き出した。

昨晩全部見ているのに……可愛いな。

そして自分のバックから例の薬を出して中へと…………


常習犯か?


「女性の常識なんだから。これを持っていないと避妊の魔法はお金が高いでしょ」


おー心を読んで来た。


あっちの世界で女子がコンドーさんを持っているのと同じか。


そのまま際どいパンツを穿くと、一旦アパートへ帰ると言って軽くキスをして帰って行った。



「これは俺が原因なのか…………」


帰った後で俺が見ていた事を確信していた。


起きて直ぐに分かった事だったのだが、リンは一晩経つと、確実に綺麗になっていた。

幾らか腰は欲しくなり、身体にもメリハリが付いていた。


この世界には鏡は高価な物らしく、あの娼館、エリザベスの館にも一つしか置いて無かった。

こんな安宿に鏡何かある訳が無い。


リンは職場か知り合いに会ってからこの変化に気が付くんだろう。


でも何故だ?

おれとエッチしたカレにリン。

エッチしたと言う事しか共通点は無いと思うんだが。

一体何故なんだ…………

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