第10話 大人の階段上る

◆◆◆ 第10話 大人の階段上る ◆◆◆



「ここは良いな~ずっといても良いなあ~」


俺は露天風呂の中に入っていた。


場所はルナバックから南に行ったカトラ山の側にあるベルツ領地。



露天とは言っても自然に出来た湯貯まりであり、誰も使っていないので、勝手に入っているだけだ。


他の野生動物である鹿や野兎、熊にネズミと飲水として来たり、中へと入ったりもするが、不思議と襲ってはこなかった。



動物と風呂を一緒にするなんてとも思ったが、俺も多分生まれて初めての風呂だ。仲良くやろうぜ汚い物同士。


熱すぎるお湯に魔法で水を入れ丁度良い湯温にして入っていた。

逆上せるのもイヤなので、そろそろ上がろうか。


真新しいタオルで身体を拭き、冒険者らしい服に皮の防具、チラつく雪を遮るように漆黒のマントを羽織り、腰には帯剣していく。


勿論、怪しまれないように背中にはリュックを背負い、中には色んな物を入れていた。

タオルにロープ、携帯食料の干し肉、油に火打石、剣を砥ぐ研石に油。


まあ、ほぼ使わないんだがな。



俺はあの記憶を失って気が付いた後、町中を散策していた。


かなり広いと思っていた5万人は住んでいると言われたルナバックは城壁の外まで凍りついていた。


生き物も全て。



不思議と罪悪感は一切なかった。



人は無人の町に出くわすと何をすると思う?


俺は誰も生きている人がいない町だと確認をすると、元居た領主の城へと戻り、城中を漁りだした!



出るわ出るわ!

お宝の山が!


そこで遂に見つけた!


何でも入る四次元ぽけ…………マジックバックを!



宝物庫の中に厳重に入れられていた何でもない皮のバック。開けて見ると中はそこが見えず、入れた手も見えなくなっていた。


それもマジックバックは一つだけでは無く、全部で3つあった!


宝物庫の中の物を全て入れたのは言うまでも無かった。


後で発見した中年の領主らしき者を優しく粉々にして、金目の物は全て頂いて来た。



誰でもするだろ? イヤまじで。



目撃者は誰も居らず、完全犯罪とはこの事だ!


ついでに冒険者ギルドと商業ギルドへも向かい、金目の物を全て頂いて来た。


そして服や新しい防具、マントなどをあちこちで見繕い、小綺麗な姿の新マキシが誕生したのだった。


服は中古しかなかったが、それでも真新しい服は着心地が良かった。

ブーツも穴が開いて無くて足にフィットしている。


パンツなんかは新品だぜ!


領主の奥さんのパンツを一枚貰ったのは秘密だけどな。ついでに金髪の娘のパンツも頂いてきた。


あんな落ち着いた綺麗な顔してあんなドキツイのを…………いや、これは俺だけの秘密。


凍り付いた人々が溶けたらどうなるかは知らない。

多分死んでいるんだろう。


何故ならば……



ピピッ


・マキシ

・15歳

・レベル25897

・ば◆◆◆◆(呪い、進化中)

・健康(破損部位の修復中)



なんてことでしょう!

こんなにもレベルが上がっています!

最早、レベルに何の意味も無いでしょう!


だが、一つだけ分かったモノがあった。

職業の欄だと思うが、塗りつぶされて分からなかった所の一つが見えていた。

それも“ば”!


バーモントカレーしか思いつかなかった。



まあ考えても無駄だ。

呪いは継続中だが、そう簡単に死なない事は分かった。


地面からの力を感じ、無くなっていた左腕は肉が盛り上がるように再生している。


いったい何の呪いなのだろうか。

それにあの悪魔と俺の間に何があったんだろうか。



そう思いながら俺は旅の準備をして一人温泉を目指して南へと旅立ったのだった。




そして見つけた温泉に入り、サッパリしてからベルツ領の町へと入って行った。



「おい、少し待て」


門兵に呼び止められた。

ギルド認識証を見せて通過した直後だっただけに、少しドキッ!としていた。


「何か?」


「お前、何処から来たんだ。ここじゃ見ない顔だよな」



流石は門兵、顔をよく覚えている。


「ルナバックだよ。ここまで20日以上も掛かったんだ。行っていいか?」


「もう少し! 大変だったとは思うが、アレは本当なにか?皆死んだってのは」


「ああ、俺は大森林に遠征してたから大丈夫だったけど、誰も生き残ってないよ。だからこっちに来たんだ」


「…………それにしちゃちょっと汚れてないぞ。そのバックの中身を見せてもらおうか」



俺は背中のリュックを渡した。


「その腰のポーチもだ」


仕事熱心だねえ、俺は何も考えずに渡す。


「おまっ!これは金貨!100枚以上あるじゃねえか! お前、盗んで来たな?」


「ふざけんな、俺はマキシ、夜の掃除屋とかオーク宅急便と言われた男だぞ。それくらい稼ぐわ!」


言われたくない二つ名を言うと門兵はビックリした様子だった。


「ここにもお前の二つ名は届いているぞ。こんな子供たったなんて…………」

「ミノタウロスの祭りもしたばかりだと聞いたが」


「ミノ祭りもしたよな。だが、誰も生き残っちゃいねえよ。親も友達もみんな居なくなった。そのポーチは兄の形見、よそ様のお金を取る訳ねえだろ!同じ市民だったんだぜ!」


「あ、悪かった」

「疑ってすまない、行っていいぞ」



俺はポーチを腰に付け、リュックを背負う。



「なあ、この町に娼館はあるか?」


「は?」


「娼館だよ娼館!女の人が良い事をしてくれる。分かるだろ、ずっと一人で旅をしてたんだ。さっき山で温泉に入って綺麗にしてきた。次は何をしたいか分かるだろ?」


「あ、ああ、娼館ね。あるぞ。南の方に行けば飲み屋とかがある繁華街だ。そこで聞けば幾つかの娼館がある。まあ…………楽しんで来いよ」


「ありがと!いっぱい出して来るぜ!」


俺はスキップしながら門を離れて行った。



 このベルツ領地は火山であるカトラ山の恩恵を受けて割と温暖な地域だった。

流石に冬になるとチラつく雪は見られるが、積もる事はないらしい。


地熱で育てる数々の野菜などの農作物と山の麓に広がる森にいる魔物などの討伐、そして温泉などの観光でも人々は来ているらしい。


いわば観光地!



リュック下に隠した何でもバックも見つからなかったし、娼館とは言ったが先ずは飯だ!


道中は魔物を倒し、集めた木々にこれまた発現した火の魔法で火を付け、塩や香辛料を塗しただけで食っていた食事には飽きていた。

鮮度が良いと生肉でも食べられる事は分かっていたので、面倒くさくなってからは、身体から肉を削いで、塩を振りかけて食ってた。


まるで原始人のようだったのだ!



「じゃあ単品でオークのロースカツとミノ肉のステーキとモツ煮、パンは白パン二個とミノテールスープにモロコシ酒でお願いします」


「ありがとうございまーす。御注文を繰り返します!……………」



此処はファミレスか?


大型店舗の中で忙しなく動く店員が何人もいた。


お品書きには安くない料金が書かれてあるが、食べている人は結構多く見られている。

今がお昼どきだからか?


出て来た肉は流石に美味かった。

直接冒険者に依頼を出して持って来てもらったりもするらしいので、鮮度は抜群だ!


更に食べているとみんながご飯を食べていた!


お品書きを良く見てみると、そこには飯の文字があるではないか!


俺は速効で飯(大)を注文し!お品書きには無いコカトリスの生卵も追加注文した!



皆はどうやって食べる?


うちの家では黄身だけを使っていたんだ。

卵の殻を割って、殻で綺麗に白身だけを落としていく。

そしてご飯の中央に窪みを作り、そこに黄身だけを乗せる。


此処には醤油な無いので、ミノ肉のステーキ汁を卵に垂らし、グチャグチャにかき混ぜて暖かい内に書き込む!


「ぐぎょえええ!」


女中が変な声を出していたが、この卵掛けご飯がメッチャ美味かった!


前の世界では身体も弱く、たまに作っては食べていたが、この世界で食べられるとは思わなかった!


何か周りの客が一斉に俺を見ているが関係無かった。



「御代わり下さい!ご飯大盛りに同じ生の卵を!」



その変人を見る様な目を見る限り、この世界に生卵を食べる習慣は無いんだろう。


野蛮人か原人、焼く時間も惜しくて生で食べているんじゃないのかと言う声も聞こえていた。

この世界へ来てから俺は一度も体調が悪くなった事が無かった。

生水を飲んでも、生肉を食べても、裸で寝ようとも。

ポツリヌス菌だか、炭素菌だか知らないが、生卵の菌所で負ける訳がない!


俺は一切を無視して二杯目を掻きこんだ!



結果、腹も膨れて大満足だった。


銀貨を4枚程支払い、また来るとだけ伝えて店を出た。


先ずは宿の確保か?


思えば大変だった。

寒いのは問題無かったが、何も無い荒野でマントに包まって寝る。

時々現れる魔物に土魔法の弾丸で寝たまま撃ち殺し、ハゲタカの様な鳥を凍らせて落として食う!


幾らショートスリーパーの俺でも疲れは溜まっていた。


「宿だ宿、それからだなお楽しみは」


結局ルナバックでは行く切っ掛けが無く、悶々とした日を過ごしていた。

頭の中は24歳だし、身体は出したい盛りの15歳なんだ。

どっちも出したいだけなんじゃと思うかもしれないが、魔法使いになった今、30まで童貞じゃなくても良いんだと思っていた。


コミュ障な為、恋人が出来るのを待っていられない。


俺はそこそこの宿を決めると、速足で南の繁華街へと向かった。



旅の恥はかき捨てと言うではないか。


俺はすんごく香水の香る店舗の前に来ていた。


夕方から酔っぱらっている輩に何となくどこの娼館が良いかを聞いていた。

すると高くてサービスの良い所はエリザベスの館。

そこそこの値段では良いと思うのがミランダ屋敷。

絶対に行くなと言われたのはベッキーの庭だった。


俺は迷わずエリザベスの館へ来た。


強い香水の匂いに包まれながら俺は大人の階段を上る。



「いらっしゃいませ。当店は初めてですか?」


「あ、あの、ああ、あん、はい……初めてです」



中年のおじさんがにこやかな笑顔で対応してくれた。

そして俺が初めてだと知ると、ロビーのソファーへと連れて行って紙に掛かれた利用料金を説明しだした。


「先ずは入場料です。これに金貨1枚掛かります。次に指名料ですが、これはその女性のランクに依って変わります。概ね銀貨3枚から金貨1枚と思ってください。そして女性へのチップです、これはお客様の心がけですので、銀貨3枚から上は幾らでも、このチップは対応してくれた女性が全部貰えるお金ですので、次に来られるならば大きい金額の方が覚えも良いですので、サービスに違いが出るかもしれません。

全部含めると、安くて金貨2枚程度からと思って頂くと良いと思います。」


「あ、なーるほどですね。で、その女性はどうやって選ぶのですか?」


「基本的にはあちらの部屋に並んでおります。その中に居ない場合は出勤していないか、現在サービス中のどちらかになります」


「ふむふむ、実際見て選ぶと。して時間は?」


「基本的に90分でございます」


「お、お、オプションとかは?」


「個人で違いますので聞いてみた方が宜しいかと。賞金も嬢によって変わりますので」



ぐへへ、夢じゃ、夢の国じゃ!


「あと、店内で他のお客様や錠とのトラブルがあった際は出入り禁止になりますので、ご注意を」


おじさんは奥へ指を伸ばした。


そこにはゴッツイ身体の男が椅子に座ってこっちを見ていた。


冒険者の用心棒ね。


「了解っす! じゃあコレは入場料って事で」


腰のポーチから金貨を一枚出して渡した。


そして楽園の花園の扉を開けて入った。



そこは正に楽園の花園だった!


綺麗な服と言うかドレスを着た女性たちが長細い部屋の中の椅子に座って待っていた!


それぞれ、待機の時間を潰せるように小さいテーブルが横にあり、編み物や読書をして待機している。


俺が入って来た事が分かると、一斉にアピールが始まった。


サービスするわよ、可愛いわね、一度指名してみて、一緒に天国へ行きましょう……等々



俺は色んな声に惑わせられる事無く、俺の好みの女性を探した。


そうだ、この世界に転移する直前にいたコンビニの店員は可愛かったなぁ。事故に巻き込まれてないかったかな?

そうだ、俺は基本的に可愛い子が好きなのだ。

胸は大きすぎる事も無く、、小さすぎる事も無く、お尻は小さく、細い感じが大好きだった!


その並んでいる中に、俺の希望にあった人がいた!


「あら?指名してくれるの?」


編み物で一生懸命になっていたその人の前に立った。


名前はカレ。やせ型の少しおっぱいの膨らんだ茶髪ロングの青い目の可愛い子。

ちなみに指名料はまだ経験が少ないので銀貨3枚だった。



細い身体を俺に寄せて一緒に部屋に入って行く。


ああ、大人の階段はこうやってのぼるんだなぁ


俺はたっぷり90分間楽しんだ。


この世界には当然ゴムと言うモノを見た事が無かった。

当然、コンちゃんなどある訳も無い。

ではどうするかと言えば、オタマジャクシ君を殺す薬があるらしい。


しかも体には無害。確実に避妊できるとあってこの世界では必需品であった。


俺は細くやわらかな身体の余韻を味わい、シャワーへと行くリアの後ろ姿を見ていた。


貧乏な家に育ち、食いふちを減らす為に実家を出て近いこの町にたどり着いた。

そうして給金の良いこの世界へと入って来たらしい。

まだ17歳と言うのに、ギルドを通じて実家に仕送りまでしていた。


嘘かもしれないが、俺は満足だったので、チップを弾んで金貨1枚渡した。



「はあ、えがったわ~」


朝帰りをすると太陽がまぶしいと言う噂を聞いていたが、今は夜。

あちこちの店先にぶら下がっているランタンを目印に俺は宿へと戻って行くのであった。



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