第7話 100g200円

◆◆◆ 第7話 100g200円 ◆◆◆



 ギルドでの騒ぎがあった次の日、相変わらずショートスリーパーの俺は明け方まで剣や防具の手入れを行い、それから少し休んだ。


朝日と言うか、昼の太陽を感じながら屋台で串焼きを買い、食べながらギルドへと向かう。



「ああ、マキシさん!ちょっといい?!」


珍しく名前を呼ぶ声が聞こえた。

それは暇をしているギルドのカウンターの女だった。


「なんでしょうか?」


カウンターに近づくと、そばかすだらけの女は身を乗り出すように俺の事を見て来た。


「貴方が昨日倒した男は盗賊の賞金首だったらしいわよ!」


「ああ、そうですか。良かったですね」


「一応賞金が出てるんだけど……いつ犯罪者リストなんか見たのよ」


テーブル下からお金を出しながら聞いて来た。


見ている訳ないじゃん。

鑑定に出てたんだよ。


「暇な時に……買い取りを待ってる時とか」


「ああ、そうね。職員も夜間業務に入ってるからね。そうか、冒険者に見ている人がいるって驚いたのよ。はい、これが賞金ね」


カウンターには金貨が7枚置かれていた。


「受け取り書に名前を書いててね」


俺は賞金の金貨7枚を受領したとの箇所にマキシとサインをしてポケットの中の小銭入れに仕舞った。


「どうも」


俺は一通り依頼書を見て回り、いつもの大森林へと向かった。



時間は昼過ぎ。

俺の仕事はこれからだった。


いつも通りに大森林の中へと入って行く。

道は適当。

同じ様な木々が覆い茂るが、迷った事は一度も無かった。


時々現れるゴブリンやコボルトを締めとつつ、今まで入らなかった更に奥へと入って行った。


時々立ち止まり周りを見ながら更に奥へ。


足音を立てずに進んでいくと、バキバキと枝を派手に折りながら進むデカい奴を発見!


ピピッ


・名無し

・3歳

・レベル17

・オーク

・健康(空腹)


単独オーク!

しかも手には太めの木しか持っていない!


俺は足音を立てずに一気にダッシュして近づく!

右へと向かうオークの右背後から近づき一気に水平に斬り裂く!



「グオオッ!」


怯んだ隙に膝の腱をぶった切る!


臓物を横から吹き出しながら倒れるオークを下から上に首を跳ねた!



「うーん、2秒で終わった。強いかどうか分からないじゃん」


しかし、体格は2m程ある。

コイツは討伐よりも食用として価値があった。


「マジックバックとか無いんかよ。クソ思てぇだろうな、一応血抜きくらいはしとくか」


準備していたフックを背中に掛け、ロープを太い枝に通して引っ張り上げる!


〆たてなもんで、血が腹からドボドボと出て来る。


「ついでに足首もやっとくか」


スパッと足を斬るとそこからも血がドボドボと流れ落ちていた。


その間にどうやって持って帰るかを決めていた通りに俺は近くの木まで行き、大ぶりな枝を切った。

それを持ってこようとすると、今度は何かの集団が近寄ってくる。


ピピッ


・名無し

・4歳

・レベル15

・ブラックウルフ

・健康(空腹)


おー血の匂いで来るわ来るわ。大量祭りだな!


俺は木を背にして近寄って来るブラックウルフを一匹づつ斬っていく。

デカい木ならば真後ろは完全に防御出来る。後は死角になりそうな左右の端さえ気を付ければ無問題!

10匹近くいた魔物は物の数分で全部倒れていた。


「えっと、討伐場所は尻尾と! ん?」



今度は狼ならぬコボルトの群れだった。


「祭りじゃ、これは祭りの匂いがする」


それから暫くは得物のお祭りが途切れる事が無かった。



「往きはよいよい帰りはキツイ~」


昔の歌を唄いながら俺は枝の葉っぱの上に乗せたオークを引っ張っていた。


葉っぱが抵抗を少なくして滑りやすくしてくれる。

ついでにオークを引きずる事も無い為、獲物がいたまいと言う二重の効果があった。



「一度に一匹しか狩れないのが難点だな。やっぱりマジックバックか、収納バック、ストレージ…………何か売ってないのか?金貨30枚までなら一括で買うぞ」



凡そ一ヶ月で順調に稼いだ金額が金貨30枚と少し。プラス賞金7枚も合わせれば金貨40枚近くあった。

元の世界で換算したら40万円ってとこだ。

倉庫番の仕事からすると倍以上の稼ぎ。


ふふふふ、金持ちや、俺は金持ちや!


「ぶははははははは!何でも買うたるで!!」


夕闇迫る中、鳥たちがバサバサと一気に離れて行った。


「さあ、運ぼ」


当然ながら、思いオークを運びながら更に寄って来た色々な魔物も討伐していく。

よって夕方にもなっていなかった時間がどんどん過ぎていく。

終いには閉門の時間ギリギリとなって走りながらブラックウルフとの生存競争を行っていた!


「てめえ!食うな!」


キャンッ!


「お前もだ!」


キャイン!


はみ出した足に食らいつくブラックウルフの首を跳ねて走り出す!


頭が付いたままだが、野宿するよりはまだいい!



やッと門が見えてくると、そこからは全力ダッシュだった!


「まだ閉めないでえええええええ!」


砂塵を上げながら近づく俺とオーク(死体)と無数のブラックウルフ(敵)!

異変に気が付いた門兵の騎士が慌てて武装して近寄って来た!


「お前らの餌じゃねえんだよ!シッシ!」


剣で振り払いながら騎士に狼を擦り付け、俺は更に加速して門の中へ!


「ぬおおおおおおおお」


「おッ!おい!これはなんだ!!」





「ふへええ。間に合ったぁ」


付いてくるブラックウルフの首を跳ね、サッカーボールの様に遠くへ蹴り捨てる。



「ちょっと君何してんの!」

「ああ、夜の掃除屋か。いったい何を……オーク?」



枝の上に乗せて来たオークには無数のブラックウルフの頭だけが噛みついていた。


「オークを仕留めたんだけど、持って来るのに苦労しちゃって」


「あのなあ、大型の魔物の時はギルドから台車を借りるんだよ。森の外に置いてても車体番号を登録してあるから他人は使えないんだよ。借り賃も銀貨3~5枚でそれほど高く無いし、次からは台車を借りるんだな」


「なーるほど、頭良いじゃん。俺もそうしよ」


「ほらそこに臨時の台車があるから乗せて運ぶと良いよ」



そこには大型のリヤカーが置かれてあった。


門兵にお礼を言い、リヤカーにズルズルオークを引きずって乗せて運び出した。


タイヤは付いてないが、気の車輪が良い働きをしていた。


24時間営業の振ギルドへと行き、カウンターへ向かい外にオークを持って来たと知らせる。


そのまま横の解体場へと持って行き捌いて肉片に分けるらしい。


「10kgほど分けてよ、持って帰るから」



暫く待って査定が出た。


「100gで銅貨2枚だから食べられる肉が120kgで金貨12枚。台車利用と捌いた手数料を引いて金貨11枚よ」


「売った!!」



別にゴブリンとコボルトの討伐箇所も持っていたので、それを合わせて金貨12枚にもなった。

今までで一番の稼ぎになった。



俺は頬を緩ませながらミノタウロスのステーキを頬張り、涎を垂らしながら貪り食った。


「マジックバックと娼館……バックと女…………」







その日の夜に、教会の十字架の下にオーク肉10kgのブロック肉が置かれており、神父様が朝の礼拝をした時に気が付いて、その日の番にみんなで美味しく食べていた。


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