第4話 襲われるマキシ
◆◆◆ 第4話 襲われるマキシ ◆◆◆
寝る時は簡易宿泊所での雑魚寝が殆どで、朝から夕方までは採集仕事が毎日の俺は、身体を綺麗に洗ってギルドへと向かった。
俺の考えではスタンピードが起こった後だけに、薬草の値段が高くなっていると思ったからだ。
カウンター前の依頼書が張ってある壁へと行くと、ランク別に分けてある依頼書コーナーには色んな札が掛けられてあった。
このルナバック領地ではSランクの依頼なんかはる訳が無い。
国を挙げての討伐などが中心の依頼がこの辺境にある訳が無かった。
同じくAランクもだ。
Bランクから徐々に増えだし、C,Dランクと中堅クラスが多くなっていく。
E,Fランクと言った初心者コーナーは町中の掃除、手伝い、薬草採集から、小型魔物の討伐依頼が殆どだ。
それと、常設依頼ではゴブリンやコボルトの討伐が掛けられていた。
俺と一緒の事を考えていたザルツは、撃ち漏らした残党のゴブリンやコボルトを狙い、俺は高騰している薬草を確認し、いつもの町の外へと出て行った。
町の外はいつもより数の少ない人しか見当たらなかった。
それもそうだろう。
子供から婦女子にでもできる採集仕事だが、スタンピードが終わったとは言え、逸れた魔物はいつもより多く見られた。
戦力の無い婦女子や子供が相手だと、ゴブリンやコボルトと言った魔物に対応が出来ない。
以前は俺もそうだったんだが…………
「はっ!」
ズシャアア!
薬草よりもゴブリンの方が多い。
繁殖力の強い魔物だけに散発的に出て来る。
今や大森林近くの草原は、ゴブリンの狩場となっていた。
1m程度の子供と同じような姿ながら、攻撃性が高く、引っ掻き、噛み付き攻撃をしてくる。
通常ではたまに武器を持っているが、今は武器を持っている総数も少ないのか、俺が転移してからと言うものは見た事が無かった。
見える範囲のゴブリンを倒し、討伐証明である右耳を薬草とは別の袋へと入れていく。
後は纏めて山積みにしてからギルドで配っているオイルをぶっかけて火打石で燃やす。
灯油のような匂いがするが、これは死体が他の魔物を呼ばない様にする為の策だった。
お金を取ると放置する人が増えるので、ごく少量で燃える事が出来る小さい油の入った小瓶をいつでも貰える。
夕方になろうとしている中で、あちこちからゴブリンなどを燃やす火が見られていた。
結局、ギルドへ戻ったのは暗くなってから。
そして薬草は1束5本が銅貨6枚と倍に値段が増えて、5束で銅貨30枚。ゴブリンは逆に安くなったが、32匹の討伐通常1匹で銅貨4枚だが、今は半分に減って銅貨2枚。全部で銅貨64枚になった。
お金は下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨で、10枚になると一つ上の硬貨に変わるらしい。
今回は銅貨94枚になったので、銀貨9枚に銅貨4枚となった。
ただし、ギルド職員と言えども計算は苦手なのか、パッと貨幣の計算が出来なかった事を見ると、この世界での学校レベルはそれなりだと思った。
調子が良いと薬草が80束程採集できるので、通常16束の銅貨48枚程なので、一気に収入が倍に増えた。
毎日との比較ではそれだけに留まらなかった。
簡易宿泊所はギルド経営の大部屋での雑魚寝になるが、夜になっても目が冴えて眠れない。
昼間疲れて昼寝をしたせいも考えられるが、深夜になっても眠れず、感覚的に3時か4時に漸く眠りに付いた。
そしてあっと言う間に朝になったが、疲れは全く無かった。
教会に居る時はいつも一番遅くに起きて周りに迷惑を掛けていたのが嘘のようだった。
スイッチが切れるように眠り、いきなり入るように目が覚めた。
これも戦闘の興奮のせいなのだろうか。
それから俺はいつものように薬草とゴブリンの討伐に向かった。
変化があったのはそれから2日後。
騎士の言っていた報奨金とやらが貰えるという日だった。
「ああ、マキシ君だね。領主からお金が出ているよ」
名前の後にFランクの鉄で出来たタグを見せると直ぐに確認されてお金を出してきた。
それは金貨5枚!
特に前線に行っている冒険者に出やすいと言われる報奨金が俺に出ていた!
「こんなに?」
「ああ、騎士達は視野が広いからね。何人かに名前を聞かれただろ。アレは優秀な冒険者に他に行ってもらいたくないか、金銭的価値があると見て報奨金を出すんだよ」
「俺まだFランクですけど」
「それだけの価値があると見てるんだよ。これからも頑張って!」
ギルドカウンターで俺は固まっていた。
働けば働く程にお金が入る。
勿論、怪我をしたり働かない者は収入を絶たれる事にはなるが、以前のように倉庫へと行って適当に仕事を行い、定時で変える。いつも変わらない毎日よりかは数段、お金のありがたみがあった!
大体毎日一日2食。
屋台で買う硬いパンと僅かな肉の入ったスープを食べているが、今回は奮発しても良いだろうと食事の出来る店へと入ってステーキの定食を頼んだ。
銀貨1枚の大盤振る舞いだ!
出て来た肉を鑑定すると、それは直ぐに出た。
ピピッ
・名無し
・5歳
・レベル7
・オーク肉(食用)
おおッ!これが噂に聞くオーク肉か!
ピピッ
お?もう一度音が鳴った
・マキシ
・15歳
・レベル16
・◆◆◆◆(呪い、進化中)
皿を持って鑑定していたからか、俺の腕も鑑定に入っていたらしく、レベルアップしていたのが腕に映っていた。
それもレベル10から16へと伸びている!
ゴブリンを楽に倒せるはずだわ。
しかし、一番下の呪い・進化中の文字は消えていない。
少しへこみながらもこの世界に来て初めての肉を頬張った。
「んッ! んまい!」
肉質は柔らかく、肉汁が溢れる程ジューシーで、噛めば噛む程に美味しさが溢れて来た!
パンも柔らかく、スープに付けなくても簡単に噛みちぎれる!
銅貨1枚のスープと同じ値段で買える黒パン2枚とは全く違うものを食べて感動していた。
これは毎日頑張って食べたくなる味だ!
ペロッと夕食を食べた俺は、気分良く武器屋へと向かった。
短剣でゴブリンの耳を斬る作業が面倒だったのだ。
ここらで剥ぎ取り用のナイフでも買うとスムーズに剥ぎ取りが出来る!
冒険者に成りたての頃に買った短剣を買った店へと行き、剥ぎ取り用のナイフを見せてもらい、使いやすそうな刃渡り20㎝程度のナイフを銀貨2枚で買った!
感覚的に2千円程度なので惜しくは無かった。鞘付きと言うのも魅力だった。
そしていつもの簡易宿泊所へと向かい、寝る事にした。
娼館もあるので、行って見たい気はあったのだが、一体幾ら掛かるかも分からない。
お金が足らないと恥をかくのもイヤなので、娼館は今後の目標として寝た。
しかし、いつものように眠れない。
寝たふりをしながら何時かは寝れるだろうと身体を休めていた。
ひょっとしたら転移者は眠れなくても問題ないとか?
そう言う変なスキルは要らないと思いながらも呪いの事を忘れて娼館の事ばかりを考えていた。
すると、俺のズボンを触る感触が伝わって来た。
寝込みを襲う痴女だったら嬉しいのだが、この大部屋に寝る女性はいない。
じゃあホモ?
しかし、その男は俺の股間では無く、明らかに俺のポケットを探っていた。
こいつ、泥棒だ!
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