第52話 リーナの気持ち
=逆境逆行悪役令嬢の侍女に転生しました=
52 リーナの気持ち
今日は朝からバタバタと忙しい。
先日婚約式を終えて、アートゥンヌ伯爵とシルヴィアの処遇を決め、それぞれ行き先が決まり送られたそうだ。
アートゥンヌ伯爵は、南の地方の就労場。
シルヴィアは北の国境近くの修道院。
シルヴィアは未だに、「納得いかない。」と暴れているらしい。
そんな事より私達の事だ。
昨晩突然にシグルド殿下とセルネオ様から、王宮に呼び出しがあった。領地へ行く筈だった予定を変更して、ドレスアップをしている。
「何なのかしら・・・ねぇ。」
ルキノはエリンシアの隣で、髪を結って貰いながら言った。
急な呼び出しに、怪訝な想像をしてしまう。
「厄介事でなければ良いのだけれど。」
エリンシアも同様の感情を抱いていた。」
◇◆◇ ◇◆◇
リーナは2人のやり取りを見ながら、ルキノが現れた日の事を思い出していた。
今思えば、あの日がルキノが転生をしてきた日なのだろう。
エリンシア13才の誕生日。
この日を境に、急にルキノが役立たずになったのだ。
エリンシア様の髪を結う事もできない、お茶も満足に入れられない。
急にエリンシア様に、生意気な口を利くようになった。
そんなルキノ様の事をエリンシア様は怒るでもなく、呆れるでもなく、寧ろ重用し始めたのだ。
王家の影というお役目があった為目立たない侍女を演じていたのだが、こともあろうにエリンシア様はこの私にルキノ様のお世話をする様に言ってきた。
・・・メイドの侍女?
訳の分からない言い付けではあったが、背く訳にはいかない。
その日から、ルキノ様に連れ回され図書館に入り浸りとなった。時間の許す限りあらゆる本のページを巡っていくルキノ様のサポートに徹した。
王族であるベルン殿下にも、言いたい事をハッキリと言い友達の様に接する。
ルキノ様の破天荒な行動は、段々とエリンシア様を巻き込んで行った。
幾ら王家の為とはいえ、まだ幼いエリンシア様を参戦させたりもした。国を揺るがす大事だから、仕方なかったと言えばそれまでなのだが・・・。
王族を巻き込んで、何回トラブルを起こしただろう。
ルキノ様が頬を腫らして帰って来た時には、エリンシア様は大層ご立腹で土下座をさせていた。
仕返しに、バリデン様には3倍の時間の土下座をさせておきましたわ。
時にはマリベルを買収したり、シルヴィアにほんの些細な嫌がらせをしたり、勝手に忙しく過ごしていた日々も今思えば、懐かしい。
エリンシア様もルキノ様も、立派な淑女になられた。
今日は2人の集大成が見られるかも知れない。
(ふふふっ、ばっちり拝見させて貰いますよ。)
リーナは自然に緩む表情を引き締め直して、無表情を作った。
「さぁさぁ、お2人とも準備は出来ましたね。王宮へ急ぎましょう。」
リーナは2人を急かすように、馬車へ案内した。
3人で馬車に乗り込んだ。エリンシア様とルキノ様は、領地の話に花を咲かせている。
今日も美しく聡明なエリンシア様。
シグルド殿下のお妃候補になった時も、驚きはない。寧ろ他の候補者が居る事に驚きを隠せなかった。
エリンシア様と誰を比べるつもりであろうかと。
案の定、他の候補者に圧倒的な差を見せつけた。
シルヴィア様やアートゥンヌ伯爵などが、悪足掻きをするであろう予測はしていたが、まさか最後に暗殺者まで雇うとは。
いつの日か地味な嫌がらせをしてやろうと考えている。
今日の2人の装いは、我ながら渾身の出来だ。
・・・振り返れば、王妃のお茶会でお披露目をした双子コーデも中々良かった。ルキノ様から提案を聞いた時は、不安しかなかったが、令嬢達の度肝を抜く事に成功したと言えるだろう
王妃の采配であったとは言え、エリンシア様にお仕え出来る事は幸運でしかない。
こんな楽しいお役目が頂けるなんて。
(そろそろ王宮に着く頃だな。)
無表情の仮面を貼り付けた。
「さぁ、ご案内致します。こちらへどうぞ。」
リーナは、2人を王宮の庭園へと案内をした。
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