第48話 反撃開始 2

=逆境逆行悪役令嬢の侍女に転生しました=


48 反撃開始 2


シルヴィアがゆっくりと立ち上がり息を整えた。

「静電気・・・と言う言い訳は承知致しました。こじつけの様な気も致しますが、納得します。ですが、私が2回も参戦した功績は国からは認めて頂けないのでしょうか?」


アートゥンヌ伯爵が続く。

「そうです。シルヴィアが癒しの魔法の使い手だと言う事も重ねて申し上げます。」


「宰相、私から一言宜しいでしょうか?」

今日初めて口を開いたアレクが宰相に目を向けた。


宰相が頷く。


「アザルトル侯爵エリンシア様に申し上げます。あなた様は本日侯爵家をお継ぎなされました。今まで秘密裏にしていた事を公開しても宜しいのではないですか?」


エリンシアはアレクの言わんとしている事が良く分かっていた。成人し侯爵家を継ぐまではと秘密にしていたが、どのみちもう直ぐ公開される情報である。

エリンシアは言葉短く「はい。」と答えた。


「私の矜持にかけて申し上げます。」

アレクは一礼をして語り出した。


「2回の対戦、私も最前線で参加を致しました。そしてアザルトル侯爵も2回参戦致しております。」


アートゥンヌ伯爵とシルヴィアが声を上げた。

「エリンシア様も2回?」


アレクは目を閉じ一呼吸ついた。

「アザルトル侯爵の助力を得なくとも、辺境を継ぐものとして身を挺しても国を守る覚悟で御座いました。戦には必ず勝利していたでしょう。しかし、民に被害を及ぼす事なく速やかに収集出来たのは、アザルトル侯爵の魔力のお陰で御座います。」


初めて知る事実に、シルヴィアは目を丸くして驚き動揺した。

アートゥンヌ伯爵も慌てふためきならがら発言した。


「属性は?エリンシア嬢の属性は何でしょうか?」


「雷で御座います。」

エリンシアは淡々と答えた。


「ならば驚く事はない。よくある属性だ。シルヴィアは他とない光の属性ですぞ。」


アレクは首を振りやれやれと言った様子だ。

「確かに属性は大切です。ですが・・・シルヴィア嬢は魔力があまりにも乏しい。私も含め部下達も、シルヴィア嬢に傷を治して貰った者は1人もおりません。」


乏しいと言う言葉に反応する様に、シルヴィアの顔はみるみる赤く染まった。


「シグルド殿下が負傷の時も、シルヴィア様の魔力では通用しませんでした。」

アレクと同じくセルネオまでがシルヴィアを睨んでいる。




一同言葉を使い切ったのか、妙な間が空気を漂っていた。


今こそ出番と王妃が立ち上がった。

「話はもう尽きたのではありませんか?」


宰相と高官達が頷く。


「待って下さい。」

シルヴィアは最後の切り札を使う。


「エリンシア様は両陛下の御前で攻撃魔法を使いました。許される事ではありません。何卒処分を。」


「そうですか・・・。では、アリベル。」


王妃に指名されて、アリベルが立ち上がった。

「問題のGの作り物は、私が持ち込みました。」


皆が騒つく中、アリベルが爆弾発言をした。

「シルヴィア様に頼まれました。」


「アリベル、なっ何を・・・!」


「エリンシア様の弱点が虫である事をお伝えしました。その時に、両陛下の御前で魔法攻撃を使わすには丁度良いと、虫を用意する様に言われました。」


「アリベル、黙りなさい。」

シルヴィアは、アリベルの元へ向かい押さえ付けた。


すかさず護衛の騎士がシルヴィアを引き離した。


宰相が木槌を打ち鳴らし、皆を黙らせた。

「もう答えは出ましたね。」


高官達も宰相の方を見て頷く。


「アートゥンヌ伯爵並びにシルヴィア様の異議申し立ては、認められません。今回、アートゥンヌ伯爵を含めた証人方の処分につきましては後日沙汰があるでしょう。」


王陛下が立ち上がる。

「これにて閉会。」


アートゥンヌ伯爵とシルヴィアは護衛騎士に促され、体良く会場から追い出された。後に残された高官たちとアザルトル侯爵の一行。王妃殿下が、今一度の確認を行う。


「貴方達はこの国を担う高官です。アザルトル侯爵に対する反対意見がありましたら、この場で・・・。」


「シグルド殿下、アザルトル侯爵。婚約おめでとう御座います。」

宰相のガザルディア公爵が礼をとった。

神官長、魔法高位長もそれに続く。


辺境伯がアレクと騎士団長を連れて、エリンシアの元に行った。


「アザルトル侯爵、これからも宜しくお願い致します。」


エリンシアは少し緊張した面持ちで、礼をした。

「こちらこそ、お願い致します。」


少し緊迫していた空気の中、ルキノがエリンシアに駆け寄った。駆け寄ったとは言っても、早歩きの範疇でだが。


「エリンシア、乗り切ったわね。安心したわ。」

ルキノはエリンシアに軽くハグをした。


「ありがとうルキノ。今私が生きているのは、貴女のおかげよ。」


「良かったわ。2人とも生き残れて。」


「今日は帰ってお祝いをしましょう。2人とも死んでない記念パーティーを。」


近くにいたベルンが会話に割って入った。

「生き残った?死んでない?今日の会議は婚約の異議申し立てですよ?そんな物騒な話では無かったと思うのですが・・・。パーティーは私も呼んで貰えますか?」


エリンシアとルキノは、顔を見合わせて笑った。



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