第22話 王妃のお茶会 1
=逆境逆行悪役令嬢の侍女に転生しました=
22 王妃のお茶会 1
ベルン殿下と出会って、もうすぐ1年になる。
そう、王宮のお茶会のシーズンだ。
今年のお茶会は例年と違う。王子の妃の選定を本格的にはじめる。と言う噂があちらこちらを駆け回っていた。
学園の方々で殿下方の話やドレスの話で賑わっていた。
招待客も令嬢は多く招かれているが令息は高位貴族の方ばかりだ。
後1年と少し経てば、エリンシアは女侯爵様になる。
養子縁組の手続きを済ませるために、共に領地を訪れた際に色々な内情が見えてきた。
エリンシアの両親と弟は、日和見な方達で
エリンシアが侯爵位を継いでも、お小遣いを減らさないでほしい、とお願いをしていた。
「勿論、何事も無ければ、そう致しましょう。」
エリンシアは扇子で口元を隠して、そう言った。
(いらん事をするなよ!)と言う意味である。
そしてエリンシアと同じ遺伝子を持つ弟は、私を大変気に入りいきなりプロポーズをしてきた。
容貌もエリンシアに似て美しい青年になる事間違いなしの男の子だが、転生前から含めても私にショタの趣味はない。ましてやショタどころか、正真正銘本物の子供、9歳だと言う。
エリンシアに嗜められて下がって行ったが、ただひたすら「ごめん。」としか言いようがなかった。
最近になってシルヴィアがエリンシアに接触してくる回数が増えた気がする。
お茶会でのエリンシアの装いが気になるのだろう。
「御機嫌、エリンシア様。ッ痛。」
「御機嫌様、シルヴィア様。」
エリンシアはいつもの様に挨拶をして、素通りするつもりだった様だが、目を見開いた。
目線の先を辿ると、てんとう虫がシルヴィアのスカートの裾に止まっている。
私はヤバいっと思いエリンシアの指先を自分の方へ向けた。
玉砕覚悟だった。しかし、レーザー光線は少し放たれて私の中へ吸収された。
「何をなさるおつもりですか?」
シルヴィアは顔を青ざめていた。一点の魔力の集中は凄まじいものがあった。しかしシルヴィアに放たれた訳ではない。
ヤバい。早めに虫対策をしなければ・・・。嫌な予感がする。
私達は急いでその場を後にした。
「エリンシア、お茶会の衣装の事で提案があるの。」
今日はセルネオ様の都合で研究がなくなり、早くに帰宅した。
「今回は私に全部任せてくれない?度肝を抜いてあげるから。」
ルキノがこう言う表情をする時は、大抵の場合私と意見が合わない。頭を悩ませたが、結果エリンシアは了承した。
別に今更、誰に何を言われようが構わない。
そもそも私とルキノの評判は最悪に近い状態にある。
それならば、好きにするだけだ。
私は、シグルド様にさえ軽蔑されなければ良い。
そしてシグルド殿下に好意を持って貰う機会は、他にもあるのだから。
「ルキノの好きな様になさい。」
そう言うと、ルキノは早速仕立て屋とデザイナーを呼び出し何やらコソコソと話を進めている。
時折りデザイナーが
「本当に良いのですか?」
「王妃のお茶会なのですよ?」等と、驚愕の声を上げる。
(ルキノだからね。諦めなさい。)
私は心の中で、デザイナーを嗜めた。
いよいよお茶会本番当日
「ル、ルキノ・・・。本当にこのドレスで行くの?」
少し抵抗をしてみたが、ルキノの満面の笑みが頷く。
この笑顔には、勝てない。エリンシアは渋々とドレスに着替えた。
今日のお茶会は、前回と違い5つのテーブルにシグルド殿下、ベルン殿下、セルネオ様、辺境伯のご子息アレク様、神官長のご子息ヘイロン様が格テーブルに座っていた。
魔導士高位長のところは、令嬢の参加らしい。
令嬢がお目当てのテーブルに行き、交友を深めるのだ。
主催者側には王妃、宰相、近衞騎士団長、辺境伯様、そうそうな面々が一堂に会す姿は見ていて圧巻だった。
令嬢達はお目当てのテーブルを確保するために、早くから来て陣取り合戦をしていた様だが・・・。
私達は令嬢の中で1番最後に到着し、美しいカーテシーを披露。入場する姿に注目を一斉に浴びる。
ゴスロリ双子コーデで登場だ。
1回やってみたかったのよね〜。
デザインの最中には、渋い顔をしていたエリンシアも試着の段階では「可愛いわね。」と気に入った様だったが、当日着て行くとなると少し抵抗もあった様だが。
令嬢達は、ドレスを被らない様に工夫すると言う常識が一気に覆された。2人お揃いのドレスを着た私達に。
ざっと周りを見回す。殿方達はただ驚いている様だったが、令嬢達の方は明らかに悔しそうな顔をしている。
シグルド殿下のテーブルには、シルヴィアと魔導士高位長の令嬢のマリエッタ様がご着席されていた。
私達はアレク様のテーブルに案内された。丁度良かった。
辺境伯様の地位は伊達ではない。
隣国との国境を見事に治めていらっしゃる、とても優秀なお方だ。勿論アレク様も御嫡男として、遜色ないとの噂だ。
「アザルトル侯爵家の嫡女、エリンシアと申します。」
「この度アザルトル侯爵家の養女に入りました、ルキノと申します。」
エリンシアが学園に入学してからの10ヶ月、マナー講師を付けて学習した。それは王妃教育にも劣らない厳しいもので、元々完璧に近いエリンシアも一緒に厳しいレッスンに付き合ってくれた。
私達の隙のない挨拶を篤とご覧あれ。
「今日のお2人の装いには吃驚致しましたが、とてもお似合いですね。」
アレク様は微笑みながら言った。
社交辞令かも知れないが、嬉しい事に変わりはない。
各テーブルでは、談笑が始まっていた。
この様なお見合いの席での会話としては、不躾な質問だとは思ったが聞いてみる事にした。
「お褒めのお言葉、有難うございます。」
「アレク様は剣に魔力を纏わせて攻撃をするスタイルだとお聞き致しました。魔法具の中には魔力をコントロールする事が出来る物があるのですか?」
「ええ、色々ありますよ。魔法に興味がおありですか?」
「はい。私は魔力も少なくコントロールに悩んでおります。」
「それでしたら、普段から魔力を溜める事の出来る宝石を使ってはいかがでしょう。」
「まぁそんな便利な道具が?逆に魔力を抑制する道具も有りますか?」
「そうですね。タイプにもよりますが、指輪かブレスレットを利き腕に付けると良いかも知れませんね。手から魔力を放出するタイプの人なら、効き目があると思いますよ。」
「流石は辺境の地で活躍されてる方。アレク様は、お詳しいのですね。国境線が護られているのも、辺境伯様とアレク様のお陰です。感謝に絶えませんわ。」
「ええ、そうですわね。私達はまだ学生なので、至らぬ事ばかりで御座います。アレク様にご教授願えるなんて、光栄で御座います。」
丁度雑談を終えたタイミングで、宰相が
「これでお茶会は終了です。後は王妃殿下が庭園を開放なされて下さいました。ご自由に散策をなさって下さい。」
と言って、お茶会を締め括った。
ところが本番はこれからだ。ここからが本当の争奪戦が始まるのだ。
(後は若い者同士で)と見合いの仲人がするやつだ。
(お庭を散歩でもしましょうか?)
(ご趣味は?)
などと積極的にターゲットをロックオンするという展開が始まってしまった。
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