第111話 帝城に入るよ
進む。帝国兵が現れたら斬る。
進む。帝国兵が現れたら斬る。
進む。帝国兵が現れたら斬る。
「貴様、何者……ギャアッ!」
「この先は許可された者以外、通すわけには……グハッ!」
「よくも仲間を……ガハアッ!」
「鬱陶しい。どけ」
目の前に立ちふさがる兵士を次々と大剣によって斬り伏せて、ヴァンは前に進んでいく。
ユーステスと別れたヴァンが向かったのは、シングー帝国の中枢にある帝城だった。
途中で何人もの帝国兵が行く手を阻んで、ヴァンの足を止めさせようとするが……ヴァンは一切速度を緩めない。
走りながら普通に敵兵を斬っていき、とうとう城門の前までたどり着いた。
「街で暴れている賊の仲間か!?」
「ここは皇帝陛下のおわす場所、通すわけには……」
「五月蠅い」
「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
城門を守っていた警備兵も当然のように斬る。
ついでに、閉じていた城門をザクザクと切断して破壊した。
「邪魔をする」
「キャアアアアアアアアアアアアアッ!」
「曲者よ! 侵入者が来たわあっ!」
「逃げろオオオオオオオオオオオオオオオ!」
帝城の中に入ると、アワアワとメイドや執事が逃げ惑っている。
ヴァンはそんな使用人の一人……年配の執事の襟首を掴んで捕まえた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアッ! 殺さないでええええええええええっ!?」
「殺さない。皇帝はどこにいる?」
「こ、皇帝陛下……!?」
「隠し立てするようなら……」
「い、言います言いますっ! 玉座の間に……この廊下を真っすぐ進んだ場所にいますっ!」
「そうか、感謝する」
ヴァンは執事を放り捨てて、言われたとおりに廊下を進んでいった。
ヴァンが帝城に侵入した目的はシングー帝国の首魁、皇帝を捕らえることである。
どうして、皇帝を捕まえる必要があるのか……その理由をヴァンは知らない。
連れてきて欲しい……そうモアから頼まれたから、それが唯一の理由。
妹にやれと言われた、それだけの理由でヴァンは帝国の中枢へと押し入ってきたのである。
「皇帝、皇帝はあっちか」
「待てい! 侵入者よ!」
「ム……?」
「これより先はこの我……『六皇剣』が一人である、『虹色聖槍』のアーノルドが通さぬぞお!」
突如として、廊下の真ん中に一人の男性が荒らされる。
身長二メートルを超える大男だ。金属製の鎧を身に纏っており、白銀色に輝く槍を両手で持っていた。
「『六皇剣』……知っている、皇帝の側近か」
ヴァンがつぶやく。
彼らについて、事前に情報は得ていた。
『六皇剣』はシングー帝国が皇帝の側近。選び抜かれた六人のボディーガードである。
いずれも戦闘のエキスパートであり、一騎当千の達人。あらゆる暗殺者や追っ手を撃退し続けてきた帝国最強の戦士。
六人そろえば、小国を壊滅させられるとまで言われている。
皇太子であるガイ・シングーが父帝を忌々しく思いながらも、力ずくで排除に踏み切れなかったのは、彼らが護衛として侍っていることが理由として大きかった。
「如何にも、如何にもである! 貴様がどのようにして帝城に侵入してきたかは知らぬが、これ以上は一歩たりとも通さぬ!」
『虹色聖槍』と名乗った男……アーノルドが槍をヴァンに向けると、その切っ先が極光のように輝きだした。
「火、水、風、土、光、闇、無……七つの属性を込めた我が槍、神殺しの一撃をその身に受けてみるが……」
「邪魔だ」
「いい…………ガハッ!」
ヴァンがするりと槍の横をすり抜けて、大剣を振るった。
アーノルドの肉体が鎧ごと両断されて、斜めに崩れ落ちる。
「馬鹿、な……」
「馬鹿はお前だ……口数が多い」
敵を前にして、どうしてダラダラとしゃべっているのだろう。長口上が終わるまで敵が待っていてくれると思っているのか。
ヴァンは呆れながら、真っ二つになったアーノルドの上を跨いでいく。
「無念……」
七属性を込めた神殺しの一撃とやらを繰り出す暇も無く、『虹色聖槍』のアーノルドはあっさりと絶命したのであった。
――――――――――
限定近況ノートに続きのエピソードを投稿しています。
よろしければ、読んでみてください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます