第76話 海賊退治は簡単だがやっぱり泳げません
かくして……ヴァンは海賊が根城にしている小島へと侵入した。
適当に見張りを片付けて、アジトに侵入したのである。
「ぶっ殺せ!」
ヴァンのことを認識して、ボッドマンの行動は早かった。
即座に部下に命じて、自分自身も手斧を振りかぶってヴァンに襲いかかる。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「ああ、抵抗するんだな」
「グベッ……」
ヴァンが即座に足を出した。
手斧を振り切る時間を与えることなくボッドマンの胴体を蹴りつけると、巨体が大きく飛んでアジトの壁に衝突する。
「ガッ……グ……」
そのまま床に滑り落ちたボッドマンであったが、どうにか息はあるようだ。
大海賊の名前は伊達ではなく、それなりに鍛えていたようである。
だが……岩盤を砕くような蹴りをまともに喰らったことで内臓が破裂してしまっていた。ボッドマンの目と鼻、口から血がドバドバと流れ落ちた。
「お頭!」
「チクショウ! やりやがったな!」
手下の海賊達が怒声を放ちながら、次々とヴァンに武器を向ける。
ナイフを、剣を、棍棒を、手斧を手にしてヴァンに襲いかかった。
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオッ」」」」」
「そうか……じゃあ、殺そうか」
ヴァンが短くつぶやいて、両手を振る。
襲いかかってくる手下の海賊を殴り、はたき、叩き、打ち、投げる。
それは戦いと呼べるようなものではなかった。一方的な殲滅。あるいは害虫の駆除だろうか。
海賊達の武器はヴァンにかすりもしない。ヴァンはバシバシとリズム良く敵を片付けていった。
「ウワアアアアアアアアアアアアアッ!」
「とても敵わねえ! おっかねえよお!」
「助けてえ、母ちゃあああああああん!」
ヴァンは次々と海賊を倒していき……最終的には泣きが入っていた。
「逃げろ、逃げろオオオオオオオオオオオオオッ!」
最終的に……海賊達は泣きながら逃げ出した。
アジトを飛び出して、我先に船に乗り込んで……そのまま、島を出ようとする。
だが……海に出ようとした彼らは、すぐに息を吞んで固まることになった。
「なっ……!」
「う、海が……!」
彼らは見た。
海が牙を剥いて、小島を呑み込もうとしているところを。
小島の四方から十メートル以上の高波が生じて、島を呑み込もうとしていたのだ。
「これは……」
適当に海賊を蹴散らしたヴァンはアジトの外に出て、異変に気がつく。
島の中央にあるアジトからでもハッキリとわかるくらいの大波だったのだ。
「波が……まるで壁みたいだな」
「キ、キヒヒ……テメエもおしまいだあ……」
アジトの壁際でボッドマンが呻く。
全身から血を垂れ流し、死を待つばかりの海賊の首領であったが……その手には海鳴きの宝珠が握られている。
「逃がすものかよ……道連れにして……ガフッ」
「…………」
ヴァンが無言で足を上げて、ボッドマンの頭を踏み砕いた。
卵が潰れるようにして頭部がぺしゃんこになり、血液や脳漿をぶちまける。
ヴァンが死体が握りしめた宝珠を拾い上げるが……押し寄せてくる大波は消えてなくならない。
海に出ようとしていた海賊達を船ごと潰して、押し流しながらヴァンめがけて迫ってくる。
「……困ったな」
ヴァンは困り果てる。
自分は金槌なのだ……そうつぶやいて、眉をハの字に歪めたのであった。
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