第73話 ちょっとした夜の小話

「寝る」


「おお、寝るぞ!」


 翌朝に備えて、その日のヴァンは早めに床につくことにした。

 しかし、ベッドに入ってすぐに眠ることはない。

 新しい妃である鳥獣人のルーガをベッドに引き込んで、小柄ながらもたわわに実った肉体を貪った。


「ふあ……あ……はふうううううううううううっ!」


 嬌声を上げているルーガの身体を撫で、揉み、責めて堪能する。

 すでにルーガのことは何度となく抱いている。泣き所は全て知り尽くしていた。


「ふやあああああああああああああああっ!」


「ね、ねえ……本当にここに入るの?」


「そ、そうしろって言われたけど……」


 そんな寝室の外では、二人組の女性が怖々倒した様子で中を窺っていた。

 妙齢の女性である。二人とも、よく似通った顔立ちをしていた。

 彼女達は姉妹だった。どちらもこの町を治めている代官の娘である。


「国王陛下に取り入るようにってお父様に言われたけど……コレ、無理じゃないかしら?」


「……うん」


 姉の言葉に、妹が深く深く同意する。

 代官の娘である姉妹であったが……二人はヴァンに抱かれ、取り入るようにと父親から命じられていた。

 せっかく、国王が町にやってきているのだ。

 上手く娘を送り込むことができれば、今後の立身出世にもつながるだろう。

 だが……二人は寝室のドアの前で、完全に尻込みしていた。


「ひゃあああああああああああああああっ!」


「な、中に入ったら、私達もあんな風にされてしまうのかしら?」


「すごいよ、お姉ちゃん……身体があんなに上下して……あ、浮いた!?」


「ひっくり返って、回して……すごいわね。女の子の身体ってあんな方向に曲がる物なのかしら?」


「それよりも、大きすぎない? どうして、国王陛下はお股の間に棍棒を付けているの……?」


 いずれは政略結婚に使おうと大事に育てられていた二人であったが、それ故に男性経験は皆無である。

 彼女達は激しく交わっているヴァンとルーガに衝撃を受けて、部屋に踏み入ることができないでいた。


「んにゃああああああああああああああああああっ!」


「……無理ね」


「……無理だよ」


 そして……一時間以上も行為を見学してから、扉をそっと閉めた。

 自分達があれに混じるのは無理だろうと判断した。

 そして、それは大正解の英断だった。


 その後、二人は身の丈の合った男を見つけて結婚することになる。

 背伸びをすることなく、自分達と釣り合う相手と結ばれた二人はそこまで裕福というわけではないが、それなりに幸福になることができた。


 海賊との戦いの前。

 ほんの余談の話であった。






――――――――――

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