第65話 兎獣人はたくらんだ

(さあ、堪能させていただきましょうか……夜に負け無し。百戦錬磨の夜の姫である、このカボスが食べて差し上げますよ!)


 寝所にヴァンを連れ込みながら……『耳の一族』の女、カボスはニヤリと笑った。

 外見こそ年端のいかない幼女に見えるカボスであったが……実のところ、ヴァンよりも年上だったりする。

 小さな体格、可愛らしい容姿。それはいずれも『耳の一族』の武器だ。

 彼らはその武器を使って過酷な大森林を生き抜いて、『影の族王』としての地位を確立しているのだから。


 大森林には七つの獣人部族があり、何百年も争いを繰り広げている。

 彼らが争うことはあっても、滅亡するまで今日まで生存しているのは……『耳の一族』が秘かにパワーバランスの調整をしているからだった。

『耳の一族』の兎獣人は可愛らしい容姿をしており、他者に取り入ることに長けている。

 その長所を利用して部族間の争いを調停することにより、大森林に平和をもたらしてきた。

『牙の一族』と『爪の一族』のように仲の悪い部族が本格的な戦争をしなかったのも、そのためでる。


(あの男……『翼の一族』のガラムが高転びするのは予想通り。アレに取り入る価値はなかったけれど、この男にはある)


 ヴァン・アーレングスという男を篭絡することができれば、大森林を人間の侵略から救うことができる。

 それだけではなく……彼らの国を手中に収めることだってできるかもしれない。


「おーさま、よろしくお願いしますねー」


「……ああ」


 ぶっきらぼうなヴァンの手を引いて、カボスが寝所に入る。


「キュウン……」


「へ……?」


 そして、そこに転がっていた物を目にして目を丸くした。

 寝所には先客がいた。

 カボスとは対照的に、背が高くてメロンのような乳房を持ったセクシーな女が全裸で転がっていたのである。


「か、彼女は……?」


「ミルミール」


「あ、ああ……『蹄の一族』の姫ですよねえ。知ってますよお……」


 知っているが……まさか、こんな姿になっていようとは。

 ミルミールは全身を汗やら牛乳やら何やらでグッショリと濡れている。

 寝所はミルク臭くなっており、ちょっと気になる。


「起きろ」


「はう……」


「彼女もいっしょで良いだろう。問題ないな」


 ヴァンが一方的に言う。

 どうやら、巨大なおっぱいを丸出しで横たわっているミルミールを見て、食指を刺激されてしまったようである。


「わ、私は構いませんけどお」


「なら、良し」


「きゃあっ!」


 ヴァンが乱暴にカボスを押し倒した。

 ミルミールのことも抱くつもりだが、カボスのこともしっかり抱いてくれるらしい。


「ああん、おーさま……乱暴にしちゃダメですー」


(フンッ……他の女と一緒だなんて屈辱だけど、まあいいわ。よそ見をしていて勝てるだなんて思わな……)


「フエッ!?」


 得意げに笑うカボスであったが……ヴァンがズボンを下ろして『剣』を取り出すと、引き攣った声を上げる。


「ど、ドラゴン……!?」


 あり得ない……カボスは愕然とした。

 これまで、ヴァンは幾人もの女性を抱いてきた。

 彼女達はいずれも他の男を知らない乙女であったが……カボスは違う。

 カボスが身体を重ねてきた男性は三桁に届く。獣人だけではなく、外の人間にも媚びを売って情報や食料を分けてもらっていた。

 だからこそ、その異常さを理解してしまう。


 だが……その誰よりも、ヴァンの『剣』は大きかった。

 比べるのも烏滸がましくなるほど、あまりにも巨大で雄々しく、それでいてグロテスクで醜悪な形状。

 女性をイジメるために作られた拷問器具のようである。


「ま、待ってください! ちょ、ま……」


「やるぞ」


「きゅひ……ヒイイイイイイイイイイイイイイイイッ!?」


 男性経験があるからこその恐怖。

 アレが差し込まれた時のことを想像できてしまうがゆえに、カボスは誰よりも大きな声で絶叫した。


 結局、結果はいつもと変わらなかった。

 すでに性の喜びを知っている分だけ、その兎獣人の少女は早く堕ちることになったのである。

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