第54話 戦いが終わって……
アイドラン王国との間で結ばれた条約を破棄して、突如として北征をしてきた異民族軍。
『翼の一族』、『牙の一族』、『鱗の一族』を中心に構成された獣人軍はいくつもの村を焼き、物資を奪い、人を攫って行った。
しかし、すぐさま駆けつけた国王ヴァン・アーレングスと国軍、そして近隣の領主らが派兵した領軍によって、異民族は打ち破られることになる。
異民族は火薬という名の兵器を使用していたものの……それは雨天では使用することができなかったらしい。
火薬という魔法に似て非なる攻撃に翻弄されていたアーレングス軍は、すぐに反撃して敵を返り討ちにした。
異民族のリーダーであるガラムという名の男はすぐさま大森林に帰還しようとしたが、神速のごとき行軍でヴァンは軍を回り込ませ、これを補足。
ガラムが率いていた兵士を
ガラムと他数人を捕虜として捕らえて、捕まっていた人間達を解放した。
取りこぼした残党はいるものの……異民族の襲撃から一週間とかからず、彼らは敗走を強いられることになった。
今回の事件により、ただでさえ悪徳領主によって荒廃していた王国南部はさらに荒れることになってしまった。
まだ決定ではないが……生き残った人々は難民として、王都を始めとした他の地域に引き取られることになっている。
住民達には災難なことであるが……実を言うと、これは為政者であるヴァンの側からすれば、そこまで悪いことではない。
今回の一件により、南部の大森林との付き合い方を改め直すことになってしまった。
元からいる住民にはいなくなってもらった方が、新しい施策を実行するうえでの妨げが無くなる。
また、内乱や貴族の粛清などが原因で土地に空白が生じており、労働力が足りていない地域があった。難民はそこに送られることになるだろう。
かくして、大森林の異民族との戦いはひとまず終結した。
だが……戦いが終わっても悲劇は続く。
敗残兵の末路は明るくない。
捕らえられた獣人の兵士はおそらく、犯罪奴隷として労働を強いられることになるだろう。
大勢の無抵抗な村人を殺害したのだから、厳罰を与えなくては民が納得しない。
異民族との間では捕虜の引き渡しなどの国際的な条約も交わされていないため、手加減をするつもりはなかった。
そして……もちろん、罰を与えられるのは、もちろん兵士だけではない。
敗戦の将もまた、相応の責任を取らなくてはいけなかった。
転生者である黒翼の獣人……ガラムという名の少年に、裁きの刃が振り下ろされる時がやってきたのである。
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