第12話 切り札獲得計画

 切り札を求めて迷宮へ宝探しに行く事になったが、当てはあるのか?そもそも迷宮って?


 オレは乗り合い飛行魔道具に乗るためにチケットアンケートを印刷してる。ゲバ字を学んでガリ版で刷った手作りの印刷物だ。パッと見た目アジビラと区別がつかないようになるまで何回やり直したかわからないが、ようやくゴーサインが出たので刷ってる。このチケットは飛行魔道具に乗るときではなく、乗ってから目的地を変更させるときに使う。


 どの飛行魔道具に乗るのかはクララが決める。交渉に有利になる搭乗者が複数いること、目的地までの魔石油が用意されていることなどを条件に探すので、機体別の運行情報や政財界大物の動向や予約センターデータベースにアクセスできる子飼いのスリーパーたちのネットワークを持っているのがクララの強みだ。


 そしてロザとチヒロは中庭で魔法の訓練をしている。魑魅魍魎が跋扈する迷宮に入るには飛んでくる火の粉を払い除ける実力が必要なのだそうだ。いくつもの魔術の詠唱と打撃音が矢継ぎ早に聞こえてくる


「当事者意識を持って主体的チュチェに行動せよ!」

バス!

「自己批判!」

ドス!ドス!

「総括!鉄拳制裁!」

パチーン!

「造反有理!」

ボコっ!

異議あり!ナンセーンス

ゴンッ!


うん。聞こえなかったことにしよう。何やってんだあいつら?


そして正装に着替える。顔らヘルメットにサングラスと防塵マスク、下は白衣だがその下にチェーンメイルを着込み、左手に共産党宣言、右手にゲバ棒。怪しい奴らいっちょ上がりだ。

―――

 前日に飛行魔道具のトイレに爆発物が見つかったとのことでお目当ての便が決行の日は欠航になった。


 「これは隠密部隊からの情報提供ね」ロザがポツリとつぶやく。


「だってそうでしょう?特定の機体のトイレから爆発物が見つかったなら別の機体で運行するだけの話なのに、わざわざ欠航になるっていうのは誰のための配慮?」


 機体運用が変わったら成立しない可能性の高まる我々のために他ならない。


「イアン同志、魔法の属性を挙げてみよ」


「えーっと、土、水、光、気ですか?」


「そう。この世界の魔法学ではその4系列の魔術体系をもって四大属性と呼んでいるが、我々はその4つの系列と同じかそれ以上の威力を持つ第五列を発見し、それを有意義に使えるように仕込んできた。機体運用や予約センターには我々の隠密が潜伏してる。」


えっ?第五列……ってそっち?スパイとか裏切者とかの。

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