第11話 歴史ある(笑)昨日できた王家

 民主主義による選挙で選ばれた新政府を、民主化要求する謎の勢力に倒される珍事のあと、急に王位請求者が現れたw。メガネザル3世という、古くから続くこの地の王家なのだそうだw。昨日でっち上げたくせに。

 不思議なことに欧州の王家たちがこぞってそれを王家認定してる。うわぁ、わかりやすい。現地人が聞いたこともないなって言ってる。そして知らないのはモグリだと学者たちがレッテル貼りをする。そういうシステムなのねハハハ。

 世界五分前仮説というのがある。世界はそこまでの記憶を持った状態で五分前に創造されたという説だ。これは一応否定できないのだが、ここの場合、その過去の記憶に食い違いがあるんだよ。

 それにしてもどこの馬の骨かわからないのを連れてきて歴史ある王家だと言われてもね。


「で、メガネザル3世って誰なのこいつ?」


イアンは全くわからないので、この地域の生き字引であるクララに聞く。


「知りませんわ。列強がよくやるでっち上げ王家でしょう。一応公式の情報としては、紀元前600年頃にこの地域に君臨したネブカドネザル2世の末裔ということにしてるみたいね。」

クララは列強のやり方に精通してる。よくやるパターンのようだ。


ノラも見え見えの列強プロパガンダに笑いながら「バカじゃねえの?その時代からいくつの政府が出来ては消えてを繰り返したと思っとんねんw」と言うが、それで動き出した政府は現実の力を持つ。笑い飛ばしても実力行使をしてくるだけだ。


ロザも列強のやり方でよくあるパターンだと類型を教えてくれる。そしてその罠に嵌った国の住民の悲惨な行く末も。

「その年代から続いた王家っていうのは彼らの符牒なのよ、だいたいそれくらいの起源を持つということにした傀儡王朝を立てて、国体ということにする。国民は紀元前から続くというナラティブに酔い痴れて良いように使われる。場合によっては奴隷として差し出されても嬉々として売られていく。

そうね、しばらくしたら歴代の王や家系図もでっち上げるわね。たいていはじめに言った何代目というのと辻褄が合わないから家系図の途中で異様に長寿なの人が登場するのも特徴ね。

◯◯◯◯◯王国もそうだし、○◯◯◯◯王国も、◯◯国もそうだったわね。この、古い王国というストーリーと国際金融資本のステルス支配は昔からお約束のセットよ。」


チヒロも、ウンウンと頷く。


ロザはここからひとつのジンテーゼを引き出した。

「切り札が必要になる時期は少し前倒れるかもしれない。出す出さないはともかく、その時にサッと出せるように先に確保しましょう。」


―――


この物語はフィクションです。登場人物、国、王家、組織は架空のものであり、現実のそれらとはなんの関係もありません。

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