第7話 同盟国の陥落
「古くからの友が涙をたくわえて逃げてきた。先の台風、洪水による災害、その混乱に乗じた帝国資本主義諸国によるショック・ドクトリンにさらされ彼女の国が食い物にされて今まさに滅びようとしている。我々としても彼女の
クララが、ボロをまとった小汚い少女を紹介しようとする。目には何かに対する恐れと明確にこの場所に対する猜疑心に満ち溢れ、クララの後ろにかくれたまま、前に出てこようとはしない。なお、ギークというのは何か特別なスキルを持つ人物につく尊称のようなもので、この少女の名前はノラさんということだ。
「同志諸兄すまない。早朝満身創痍の状態で逃げ込んできたばかりで必要にして最低限の治癒は間に合ったが人前に紹介する身だしなみは整えてる余裕はなかった。そちらはおいおいなんとかするとして、本日の
実現可能性の制約を議論の場に持ち込む事は本来は禁忌だ。それは極東にあるとされる利権腐敗テクノクラート政府の役人がよく口にするという「現状を鑑み前向きに善処出来る可能性について関連省庁の担当者とよくよく検討致します」そのものだからだ。あの腐れどものように堕ちてはならない。
しかしクララにとっては古くからの友の故郷がまさに列強帝国資本主義の食い物にされようとしている一刻を争う事態であり、その財力を活かして単身乗り込みしたいくらいのところをグッと我慢して読書会メンバーに紹介、相談してくれたのだ。いや、我慢というのも違う。何をしたら良いのか想像もつかないほど困惑しているので、それを聞ける相手として読書会メンバーが選ばれたというのが実態に近い。
「
「何かをやるという結論が先にあって、そのための議論などナンセンス。問題の持つ構造と、こちらにあるリソースを洗い出し、最小の活動で最大の効果が得られる組み合わせを冷徹かつ合理的に決めてから行動を開始すべきです」
クララもギーク・ノラもハッと気付かされたような様子で、ひたすら焦って走り回っているうちに資本主義の狂気に憑依されていた事を自己批判し、建設的な討論が開始され、結果として今回の行動に向けたテーゼとして「侵略戦争を帝国主義諸国の内乱に転化する準備は大衆のオルグから。確保しよう衣食住。」に決定し、パン籠の集中投入と水源の確保、難民キャンプの住環境整備行動となった。何?資金?クララ、カネを出せ。
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