第6話 ギルド…じゃなくてアジトにて

ロザとクララ、そしてチヒロは挨拶かわりに他愛もない話をしていたが、一線を越えそうになったところで、ロザがギルドハウスに場所を替えようと提案する。


 ギルドハウスはクララの屋敷内の小屋である。クララは貴族のご令嬢でこのあたりではひときわ目を引く大きな屋敷だった。


 イアンは、左翼活動も所詮金持ちの道楽かよ迷惑千万なと否定的に見ていたが、まるで宮殿かと見紛うばかりの豪華絢爛重厚長大超弩級の屋敷にはもはや想定を遥かに超えすぎていて、驚き呆れるほかなかった。


お嬢はカギを持ち、小屋へと案内する。

小屋には「革命的マルクス…云々冒険者ギルド本部集会所」と書かれていて、思わず冒険者ギルドじゃなくて冒険主義アジトじゃないの?と突っ込まずにはいられない。

 案内されて中に入るとスライド式書架の一番手前にあるノートばかりが固めておいてあるコーナーが気になっていたら、クララに気付かれてしまった。

「うちのギルドの定期集会の議事録よ。過去分まで読んどいてくれたほうがいいけど、はじめから読んでたらそれだけで数年掛かるわ。必要なのは過去5年分までね。」

ギルド開きして以来、初代からずっと残ってるらしい。一部100年分ほど抜けがあるのは十字軍の焼き討ちによる焼失だそうだ。

 とりあえずいわれるがまま、5年前からの議事録を読み込む。新入研修といったところだろう。

ロザたちは最近、隣国で起きた白昼堂々の爆発事故について話しているようだ。

「なるほど今回も偽旗グラディオ作戦か…、最低だな。」そして、続ける

「偽旗を見抜くのは難しい。何かこういうのは偽旗だという見抜くポイントとかを同志の大衆たちの共通認識、常識として埋め込めればよいのだが。よいテーゼはあるか?」

極左冒険主義者はテロを行う平穏な生活の敵だとばかり思っていたら、そうではなかった。彼らこそが平穏な社会を築くために日夜努力してるのだ。

今読んでいる議事録を見て、この期間の過激派テロとされる事件の実に8割が白色テロルであると結論付いていた。残り2割が不明だが、こちらから仕掛けた作戦の記録も議事録も皆無だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る