第3話 DAY3
美緒は、朝、強い日差しの中、ベットから目を覚ました。
「あれ、何もなかったの? 今頃、死んでるはずなのに。」
「なんだろうね。ネットで調べてみよう。」
ネットを調べると、月は、地球の引力でより遠くに飛ばされ、火星に衝突して粉々になったということだった。スィングバイのようだと書いてあったけど、スィングバイってなに? いずれにしても、昨晩、星空を見た時は、地球に向かっているのではなく、火星と衝突直前だったみたい。
火星も1/5ぐらいは粉々になって、土砂が空を舞い、月の破片と一緒になって、また火星の地上に降ってくるらしい。日本では見れなかったようだけど、どこかの国で、月と衝突した火星が光ったという記事がネットで出ていたわ。
おそらく、火星に移住した政府要人や大富豪達は全滅したのだと思う。悪どいことをすると報いを受けるのね。神様って、いるのかもしれないわ。
「ということは、地球は月がなくなって引力とかの影響はあるだろうけど、月と衝突することはなくなったということだよね。助かった。」
「良かったわ。ブラジルとか荒野になってしまった地域はあるらしいから、これから、どうなっちゃうのか分からないけど、死なないということだもんね。まず、東京に戻ろうよ。」
彼の自動車で東京に戻る中、彼とは昨晩、最高の時間を過ごしたと言った私が言うのもなんだけど、これから長い時間過ごすのに、本当に彼でいいのかなと変なことを考えていた。彼は、優しいし、いつも、私を抱擁してくれるし、イケメンなのは認めるわ。でも、優しすぎて、ビジネスで成功してお金持ちになるような感じはしない。
政府の要人や大富豪とかがいなくなっちゃって、これから、世の中はどんどん変わっちゃうと思う。今までのルールじゃなくて、ルール自体をひっくり返すような悪どいことも考えられる人じゃないと勝ち残れないんじゃないかな。
学生の時だけ一緒にいるならいいけど、これから何十年も一緒にいるなら、それなりの人じゃないとね。少なくても、お金を稼げないとだめよね。昔から言われているけど、やっぱり愛情だけじゃ生きていけないわ。
なんか、毎日のように生きるか死ぬかという経験をしたから、ここ数日で、考え方が変わったというか。いきなり生き延びれたので、現実的になったというか。このままでいいのかって考えちゃった。
私の家に着くと、彼にはここ数日の充実した時間を過ごせたことにお礼を言って別れた。さあ、自分の人生を再設計ね。彼とは、あまりにここ数日が衝撃的すぎて、1人で考えたいからしばらく会わないって自然消滅を進めるわ。
世の中の人たちは、とりあえず、数日前の状況に戻り始めた。月の影響がなくなり、水位が落ちてきたとか、少しの変化はあったけど、みた感じでは、それ程の変化はしばらくなかった。
でも、半年ぐらい経ってから気づいたんだけど、1日の時間が短くなってきた。1日が大体8時間ぐらいって感じ。私達は、そうは言っても8時間ぐらい寝るっていう生活してきたから、1日起きていて、次の日は遮光性カーテンで寝て、という生活になった。そのうち、4時間ぐらい起きて、4時間ぐらい寝るっていう生活になるのかも。
あと、まだ変化はないんだけど、将来、地軸が傾くかもだって。極端なケースでは、一方がずっと太陽に向かい、他方がずっと太陽には会えず、灼熱と極寒の世界になるかもとか。また、隕石とか落ちる可能性が高まるとか。でも、当面は、そんなことはなく実感できないって感じ。
そんな遠い将来のことはどうでもよくて、当面、どうしよう? まず、大学の教授に相談して、日本のベンチャーファンドを紹介してもらい、そこで、アルバイトをすることにした。狙いとしては、脈のありそうな起業家を探し、その人に私の人生をかけることにしたの。
最初のベンチャーファンドに行ってみたけど、結婚しているおじさんばっかりって感じ。もっと効率的に結婚する人を探さなくちゃと思ったけど、しばらく、投資のことを勉強してみることにしたわ。
おじさん達は、それなりの大企業や証券会社の経験があって、投資判断の時に何が必要なのかとか、投資の後に何をみて成果を評価するのかとか、若い女性って私しかいなかったから、親身に教えてくれた。
そこで2年ぐらい過ぎたから、次のファンドに行ってみた。そこで、私と同じぐらいの年齢なのに、おじさん達と同じ、高度なことを言う男性を見つけた。顔もイケメンだし、月の衝突の話題が出る前は、大学でバスケをやっていて、なんか大きな大会にも出たって。多分、体力もあるんだと思う。
一緒に外出している時に、彼のハンカチ借りたことがあるけど、そこについていた汗は、とってもいい香り。よく言うじゃない。女性は、自分の遺伝子に合わない男性の汗は臭く感じて、合う男性の汗は、若草のように爽やかに感じるとか。そんな感じ。
ハーバードとか出ていて頭も良さそう。きっと、優秀な子供ができそう。ある日に、シンガポールのバーで飲んでることを突き止めて、後ろから声をかけた。
「あれ間宮さんじゃないですか。こんなところで会うなんて、びっくり。」
「坂本さんじゃないか。どうして、こんなところにいるの?」
「ちょっと、海外旅行しようと思って、一人でシンガポールに来たんですよ。でも、1人だと、夕食とか寂しくて。一緒に飲みませんか。」
「それはいいね。ご馳走するよ。」
「太っ腹。嬉しいわ。」
私は、お酒には強いから何杯も飲んでたら、間宮さんもそれに付き合ってくれて、かなり酔っ払っちゃった。そこで、間宮さんを部屋に連れて行ったら、入った途端、彼はベットで寝ちゃったの。これはチャンスということで、服を脱がせて、私はシャワーを浴びた後、横にちゃっかり入り込んだ。
「おはよう。あれ、寝ちゃってた。」
「嫌だ。昨晩は、あんなに激しかったくせに。」
「全然、覚えていないけど・・・。」
「そうなんだ。そんなに酔っているようには見えなかったけど。でも、嬉しかった。彼女とかいるんですか?」
「いないけど。」
「じゃあ、これも何かの縁だと思うし、付き合ってみませんか。合わなければ、別れればいいし。気さくに考えましょうよ。」
「そうだね。坂本さんがいいのなら。今日は何か予定あるの?」
「今日はないけど。行こう、行こう。私、シンガポール初めてだし、いろいろ教えてくれると嬉しいな。せっかくだから、いつもは坂本さんって呼ばれているけど、美緒って呼んでくれると嬉しいな。」
「わかった。じゃあ、僕のことは祥一と呼んでね。」
こんなとんとん拍子に決まるとは期待していなかったけど、なんとか上手くいった。波長も合うんだと思う。
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