第41話 レオス・ヴィダールと迷宮
縁談の申し込みだって?
いらんいらん。誰がハーレム欲しがったよ。
レイン一人で十分だっていうの。
そもそも俺の価値観思いっきり日本人に引っ張られてるし、二人以上愛しますとか無理!
そりゃ浮気するやつとかいるから絶対とは言わないけど、俺は純愛派なの。
そんなことよりまた開拓かあ。
この五年で大方の整備は終わっていたし、ちょうどいいと言えばちょうどいいんだけど、ちょっと急すぎない?
なんか怪しいというか臭うというか、アクシデントの予感がする。
何もなければいいけどなあ。
***
なんかありました。
もお何だよ、少しは休ませてくれよ。
調査団の報告によれば、山中にて洞窟を発見。
探索を試みようとしたところ、何かに弾かれるように中に入れなかったとのこと。
しかし数名は入ることが出来たため可能な範囲で調査を行ったという。
その結果、複数の魔物を確認。
その後戦闘になり、負傷者が出たものの撃退に成功。
これ以上の探索は不可能と判断し帰還したらしい。
……話を聞く限り魔物の巣か?
しかし何かに弾かれて入れない。
侵入できるものを何かで識別している?
とりあえず現地に向かってみないと分からないな。
俺は現地にいくのをやめるようにいう父さんを説得して、カモールを連れてその洞窟へと向かった。
馬を使って半日程度、山中と言っても平地のすぐ手前にそれは存在した。
外から見た感じただの洞窟にしか見えない。
そもそも俺も洞窟に入れない可能性も充分にある。
「ではまず私から」
カモールが先陣を切って洞窟内へと入ろうとする。
すると特に問題なく入ることが出来た。
なら俺も大丈夫だろうと、さっそく洞窟内に侵入する。
入るとき、少し違和感を感じた。
これは……魔力?
なにか薄い膜のようなものが一瞬張り付いたように感じた。
侵入条件は魔力の有無か?
それなら大半の兵士が入れなかったことも頷ける。
むしろ魔力を使える素養のあるものが数名いたのが驚きだ。
気付いていないだけで魔力を使える人はもっと多くいるのかもしれない。
まあこういうのは俺が考える事ではないし、今は目の前のことに集中しないとな。
洞窟内は薄暗くも周りの石が発光しており、そこまで視界が制限されることはない。しかしやはり見辛いということには変わりはないのでダークアイを発動させ周囲を警戒する。
カモールは微風を周りに拡散させることで地形の把握をしているようだ。上手いものだ。
洞窟の中は本当に洞穴で、人工物が見当たらない。最初は定番のダンジョンか? とか思ったけど違うかもしれない。まあ広域な意味で言えばダンジョンでもいいだろうけどそもそも概念としてダンジョンが認知されないだろうな。
なんて名前付くんだろうか、迷宮かな?
そんなことを考えているとキーキーという鳴き声と共に、猿が魔物化したような生物が二体こちらに向かってきた。手には剣、どこで手に入れたかは分からないが、無駄に殺傷能力が高い。
「一体は任せたよ」
「畏まりました」
俺がまとめて相手してもいいが、何もかもが未知だ。慎重にと手前にいる猿に斬りかかる。意外と素早く簡単に避けられてしまう。まあなら魔法でね。
「ダークバインド」
猿の影から無数の触手が出現する。しかしここは明かりの少ない暗闇、闇に紛れた猿はその拘束から抜け出していく。
そして俺の側面に回り込み器用に剣を振るってくる。こいつ人間か? いやまあ猿から進化したのが人間だからあながち間違ってはいないけど。俺は進化論派なので。
これからどれだけ戦闘が続くか分からない、出来るだけ魔力は温存したいところだ。俺は猿の剣を受け流し、無防備になった腹を蹴り上げる。猿が手に持った剣を落とすのを見て剣を相手の頭上に振り下ろす。
ぐしゃという嫌な音を立てて猿は死んだ。カモールの方を見るとあちらも問題なく倒せたようだ。
すると猿の死体は地面に吸い込まれるように消えていった。残ったのは小さな魔石、魔物に存在する魔石だ。あの大きさの猿ならこの程度だろうと言えるくらいの大きさだ。
「カモールどうだった? かなり弱かったと思うけど」
「そうですな、多少素早いだけの猿でしたな。魔物になってもそれほど脅威ではありますまい」
まあそうだよな、もっと筋肉がついてオラウータン並みだったら怖かったかもしれない。猿でもまあまあ筋力あるけど、剣を振り回すにはあまり向いていないのかもしれない。
「とりあえず、先に進もうか」
俺は先の見えない洞窟の中を進んでいく。出て来るのは猿の魔物ばかり、そんなに苦戦することなく洞窟内を侵攻していく。途中で宝箱が見つかったけど、罠かもしれないので諦めて通り過ぎたりもした。
そんな感じで洞窟の奥の方まで進み切ると、大きな扉が見えてきた。ボス部屋かな?
「なんでしょうな、洞窟には似つかわしくない扉ですな」
「あー多分あそこにいる魔物を倒せばいいんじゃないかな」
「おや、どこでそのような知見を?」
「えーと、どっかで見たかな? 勘かも」
ゲーム脳です、とは言えない。それにこういうのは定番だろう、普通なら。
「ふむ、では開けてみましょうか」
「え、待って」
俺が制止するのよりも早くカモールは扉に手をかけた。すると中に吸い込まれるようにカモールが扉の奥に行ってしまった。
「強制エンカウントかよ!」
俺はその後を追うようにボス部屋らしきところへと向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます