蛇足

第34話:リバデネイラ王家

すみません。アルファポリスの方で、その後を望む声が多いので、追記します。

但し、あくまでも蛇足ですので、サラリと読み流していただけると……(^_^;)

第一王子視点(一人称)の過去と、本編のその後です。

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 私の母は、隣国の公爵令嬢だったが、政略でこの国に嫁いできた。

 幼い頃からラローチャ王国へ嫁ぐ事が決まっていたので、自国の勉強と共にラローチャの事も勉強しなくてはいけない立場だった。

 幼い母にはどれ程の負担だっただろうか。


 それでも良き王妃になろうと、我儘も言わずに、夫となる人と良い関係を築く為にと、頑張っていたそうだ。

 しかしその努力が無駄だったと知ったのは、嫁いできたその日の夜だったとか。

 所謂いわゆる、初夜と呼ばれ日だ。



「お前を抱いてやるのは1年後だ。子が出来ない事を理由に俺の最愛を側妃に迎えた後、お情けで抱いてやろう。あぁ、愛しい妻が月のモノの時には、しょうがないから来てやるか」

 最低最悪の宣言をした夫である当時の王太子は、有言実行。本当に1年間も母を抱かずに過ごし、伯爵家出身の側妃を娶った。


 関係の修復……いや、そもそも初めから壊れていた夫婦関係は、母の努力でのみ成り立っていた。

 それでも幸いしたのが、側妃より先に母が懐妊した事だった。

 愛欲に溺れた王と、国の事など露程つゆほども考えていない側妃の子供など、後継者に向いているはずが無いからだ。


 しかし、その先に産まれたという事でさえ、私の有利には働かなかった。

 筆頭公爵家の令嬢を妻に迎える事を条件に、第二王子であるロレンソが王太子に内定した。




 絶望の知らせは、側妃本人が母の所へ告げに来た。

「ちょおっとごめんなさいねぇ」

 王妃の執務室へ先触れも無く突然現れ、一方的にロレンソと公爵令嬢フランシスカの婚約が成った事、それにより王太子になる事を話し、「やっぱり愛は全てにまさるのよねぇ」と高笑いして帰って行った。


 おそらく室内に私が居た事にも気付いていなかっただろう。

 ノックも無く扉を開け、勝手にまくし立てて、こちらの反応も見ずに勝手に勝ち誇って帰った側妃に、室内にいた母も私も、文官も、そして偶然居合わせた宰相も、ぽかんと見送ってしまっていた。


「王太子に決定では無いはずですが……」

 宰相がポツリと呟いた言葉に、私と母は彼へと視線を向けた。

「その件で、本日はこちらへうかがったのです」

 そう言って彼は、ロレンソとフランシスカの婚約と、それに伴う王太子の話を説明してくれた。


 私は、絶望した。

 王太子になれないからでは無い。

 私はフランシスカが好きだったからだ。



 元々建国に携わっていたパディジャ公爵家は、筆頭公爵家の地位にあった。

 これ以上の地位を望まないと、下手に王家と繋がると、要らぬ憶測を呼び国が混乱する恐れがある、そうパディジャ公爵家は公言していた。

 だから、私はフランシスカとの結婚を諦めたのに……。


「殿下」

 宰相に呼ばれ、ハッと意識を戻した。

 あまりにも辛い精神的な衝撃に、意識が飛んでいたらしい。

「何?」

 宰相の顔は、私の予想に反して明るかった。


「パディジャ公爵は、今までと変わらず勉強を続けてください、とおっしゃってました」

 王太子になる為の勉強を続けるようにと、パディジャ公爵が?

 3歳下のロレンソは、どちらかと言うと残念な子供だ。

 十説明して、五理解出来れば良い方だと言っていたのは誰だったか。


 途中で勝手に解ったと思い込み、明後日の方向へ行ってしまうのだ。

 そしてそれを正そうとしても、「俺に逆らうのか!」と激昂してしまい話にならない、典型的な悪い王族を体現していた。

 ある意味、父である国王と母である側妃によく似ている。



「私は、まだ諦めなくて良いのだろうか」

 呟いた私を、母がそっと抱きしめてくれた。

「期待をすると、裏切られた時に悲しくなります。何も期待しなければ、あぁやはりそうだったのか、と納得出来るものですよ」

 当時の幼い私には、意味が理解出来なかった。


 しかしその言葉は、私に向けたというよりは、自分に言い聞かせていたのかもしれないと今なら思う。

 母は立派な王妃であり、素晴らしい母親だったが、決して妻にはなれなかった。



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