第6部 第2章 魔法使いの定義とは

「しかし、こちらには、あんたは戻ってこないつもりだったのではないか? 凄い年月が経ってしまって誰も身内はいないだろうしと……」


「いやいや、そのつもりじゃった」


「ではなんで? 」


 などと颯真と魔法使いの爺さんの話は続くが、すっかり、学校の雰囲気が変わってしまった。


 前なら、私と颯真がいるなら、皆は避けて行っていたのに、私の聖女と言う話が広まる事で、颯真も思ってたより勇者としてのイメージが広がっていたのかもしれない。


「魔法使いが来た」


「魔法使いだ」


「聖女様の仲間に加わるのでしょうか? 」


「は? 」


 いきなり、祈るように私に質問してきた女生徒を見て殺気立ってしまう。


 ふざけんなよ。


 何でこれを魔法使いって事で許容するんだ。


「なんじゃ、やっぱり、この姿で魔法使いでいいんじゃないか」

  

 そう魔法使いの爺さんは呟いた。


「はあああ? 」


 私は周りの生徒の、魔法使いだ、認めたぞとか囁く声を聴いて不機嫌になって声を上げた。


 本当に勘弁してくれ。


「いや、別に聖女で皆に認められてるならいいじゃん」


「いちいち、こちらの心を読んでくるんじゃない! 」


 私が怒鳴った。


「いやいや、わしはな。女神様にお前も魔法使いとして勇者に続いて欲しいのだが、ちょっと荷が重いかもって言われてな。こう見えても120年近い年月を生きておるが、肉体再生と維持で60歳くらいの身体は維持しておる。爺だからと馬鹿にしてとムカついて、こちらの世界に戻ってみたのじゃ。そうしたら、驚いた。魔法使いと言うのは今は少女がするようになっておるんじゃな? 」


「はああ? 」


「女神さまの心は流石に読めんからな、魔法で使い物にならないと馬鹿にされるとは思わなかったと勝手に想像して腹を立てていたのだが、今は少女が魔法使いをするようになった世界では、わしみたいな老人の魔法使いが現れてもなぁと思ってな。この世界も変わったのぉ」


 ちょっと悲しそうに魔法使いの爺さんが呻く。


「いや、魔法少女とか言うやつか? 」


「それじゃ! なんで? わしのいた時は老婆とか爺だったのに、少女が魔法使いをするのはなんでじゃ? 」


「爺の姿を見たくないからだろう」


 颯真がストレートに話す。


「いやいや、魔法と言うのは突き詰めて見ればいろいろと長い年月をかけて術を練らねばならぬ。だからこそ、歳を食ってしまう。それなのに、そんなの少女に出来るわけがなかろうに。それとわざわざそんな苦行みたいな事を少女にやらせる理由もわからん。道々で若い奴に聞いてみたら、爺なんかより見た目が良いからとか、そこの馬鹿みたいな事を言いよる。おかしいじゃろ? 少女が魔法使いをする理由が無いわ。少女の見た目が戦うための魔法に何の関係があると言うのじゃ? 」


 そう魔法使いの爺さんが首を傾げた。


「少女なら相手が油断するでしよ。少女なら敵が侮るし。そこを魔法の一撃で勝つからじゃないの? 」


「おおおおぉぉおぉぉぉぉぉぉ! そ、そんな理由が? 確かに戦いで相手の油断を招くのは大事じゃ! 」


「でも魔法を持ってて遠距離から攻撃できるのなら、何も陰から隠れて撃っちゃえば良いと思うんだけどね」


「なんじゃ、お前。なるほど、お前もあの世界からの帰還者じゃな。聖女と呼ばれているだけあって見事な外道振りじゃ。これならあの女神の寵愛を得てもおかしくないわ」


「知らんがな。私はバイトだ。ああ、そうか内職になるのか? 」


 私が腹立ちまぎれに答えた。


「やっぱり、聖女なんだ」


「間違ってなかった」


 そう女生徒の大聖寺の信徒が跪く。


「いや、だからバイトだって! 」


 私が騒ぐ。


「何を騒いでいるのと思えば……」


 それをまた金髪パーマの優斗が何故かそこを通りかがるというか、こちらに会いに来たようだ。


 なんだよ、この盆と年末年始が一緒に来たような状態は……。


「き、貴様っ! エゲレス人か? 」


「いやいや、日本人だ! クォーターで……」


 優斗がカチンときた顔で魔法使いを睨んだ。


「クォーター? 」


「なんだ、コイツ? 」


 優斗が魔法使いの爺さんを見て私に聞いた。


「向こうの世界の魔法使いらしい」


「はあああ? また変なの来たのか? 」


「変なのだと? 」


「変だと思わないのか?  そんな格好の奴なんて」


「昔から魔法使いと言えば、こうじゃろうに! 」


「日本にそんな魔法使いなんてハロウィンの時くらいしかいません! 」


「ハロウィンだぁぁぁ? 」


 馬鹿にされたと思った魔法使いの爺さんがキレて杖を構えて、変な呪文のような言葉を呟きだした。


 光の輪が拡がって異様な力を感じる。


「面白れぇ。やる気か? 」


 と優斗までキレて例の弓を出したので、流石にあたりが騒然としてきた。


「弓だ」


「弓使いだったんだ」


 などと周りが騒ぐので思いっきり嫌になった。


 これ以上不思議なパーティーがいると認識されたくない。


 それで、仕方ないから私が優斗と魔法使いの爺さんの両方を連続の回し蹴りで一瞬に蹴り倒して気絶させると、颯真を急かして運んで逃げた。


 まあ、なんだ、空手はやってるので、そういうことは出来るのだが、「聖女が回し蹴り! 」とかで感動するのは止めてほしかった。


 何で、聖女が空手を使ったって皆が感動しているのか、訳が分からん。




 


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