第2部 第1章 パーティーって
その悪夢は突然に始まった。
その日は教室に行くと、朝礼まで静かに座って待っているつもりだったのに、何故かあの男がスキップしてこちらに来た。
クラスにどよめきが広がる。
厨二でやばい奴と言うだけでなく、病気なのでしょうがないがダブりであるという事で、皆から浮いていた男がスキップである。
しかも、満面の笑みだ。
また、魔物と称して沢山人を殺しでもしたのだろうか。
そうして、目の前でスキップをやめた。
私をじっと見ている。
思わず、目を背けた。
なんで、私を見ているんだろうか。
ラーメンを一緒に食べたのが悪かったのかな?
やべぇな。
そうしたら、ポロポロ泣き出した。
クラスがざわざわしだす。
「あの、何でしょうか……」
あのラーメンの時にしくじったとはいえ、私に記憶があるのはバレて無いはず。
こんな奴を導くものなどとんでもない。
無理に決まっているだろ。
正直、震える。
「見た? 」
そう颯真がいきなりフォログラフィみたいな真っ黒なモニターみたいなのを出して見せた。
「ちょっと! こんなとこで変なものを! 」
私が慌てて叫ぶ。
皆に変な能力があるのを見せてはいけないからだ。
だが、それは杞憂だったようだ。
「何か出してる? 」
「わかんない……」
まわりからサワサワと聞こえた。
まわりを見回すと、目を反らされた。
なんてこった。
私とこいつしか、この真っ黒なモニターは見えてないのか?
だが、もっとヤバい話は目の前にあった。
どうやら、表示にパーティーメンバーが載っているらしい。
そして、そこにあろうことか私の名前があった。
しかも、<聖女>として。
「はあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 何これっ! 私はパーティーメンバーになるなんて言ってないよ? 」
私が席から立ちあがって机をバンバン叩いた。
なんで、私の名前があるんた。
目の前がぐるぐるする。
「いやいや、これは志を同じくするものだけがパーティーになれるんだ。別になりますとか宣言はいらないんだ。心で思うだけでいいんだ」
そう颯真が微笑んだ。
「待て待て待て待て! 何時、そんなの私が思ったよ! 」
だが、私は叫びながら心当たりがあった。
そうだ。
確かに私は大きい兄の敵討ちにこいつは使えるんじゃないかとか考えていたのだ。
馬鹿な!
そんな馬鹿な事でパーティーメンバーだと?
「ラーメン屋でも俺の名前を覚えていたからさ。おかしいと思ってたんだ」
「いやいや、あんたなんかを導くものじゃないし」
「分かっているよ。<聖女>だろ? 」
などと颯真がピッと微笑みながら親指を立てた。
待て待て、それはどうなんだ?
「あんたを導くのは<聖女>とは違うの? 」
「当たり前だ。私を導くのは女神の使徒だ」
そう明快に颯真が断言した。
それを見てほっとした。
だが、事態はそうはいかなかった。
「<聖女>? <聖女>って言った? 」
「ええ? 日葵さんってダブりと付き合ってんの? 」
「勇者に聖女かぁぁぁ」
「やべぇな」
そう、まわりで囁く声がする。
私の震えが止まらない。
転校生の心得。
クラスで浮いてる奴とは付き合うな。
付き合うならクラスで人気の人と付き合え。
友達が多い人にしろ。
喧嘩の強さも力だが、友達が多いのも力だ。
仲間が多い人間と付き合う奴には嫌がらせは来ない。
何故なら、敵が増えるから。
いじめをするものは常に孤立しているものを狙うのだ。
それは同じ転勤を繰り返した兄達の言葉だった。
兄達は力をつける……空手を習う事でいじめられる転校生の立場には陥らないようにしていた。
私は空手は習っていたが、女の子が武力で返すというのは無理があるから、それで、友達の多い奴と友達になるのを常に言っていた。
集団的自衛権と言う奴だ。
仲間が多いと、向こうも大変なんでチョッカイ出してこない。
なのに、この状態は……。
いじめられているボッチとか浮いてる奴とかと付き合うと、そいつが虐められたり無視されてる場合は同じ扱いをされちゃうのだ。
すでに、昨日までちやほやしてくれてた男子生徒まで、ドン引きした目で私を見ていた。
ああ、高校二年の冬からは受験勉強でクラスの問題とか起こってほしくないのに……。
まあ、二人ほどクラスメイトの女子の存在を消してるけど……。
震えが止まらない。
しかも、この最も危ない男が私のパーティーメンバーだと?
クラスメイトの関係性でも最悪なら、人間として考えても最悪じゃないか。
あまりの展開に途方に暮れた。
どうしょう、知らないふりをしようか?
などと考えていたが、もう遅かった。
「ああ、朝礼するぞ」
そう先生が出席名簿を持って教室に入ってきた。
それで、颯真が鼻歌とスキップをしながら自分の机に戻って行く。
おいおい、お前、今までとキャラが違うじゃん。
マジで震えが止まらん。
そのスキップと笑顔と鼻歌は十二分に朝礼後のクラスの話題をさらった。
勿論、消えてしまった美緒と優愛だけでなく、私をイラッとして見ている女生徒も結構いた。
何しろ、転校してきたばかりで、男子生徒にちやほやされているのだ。
私がちやほやされてるのがむかつくのだろう。
だが、彼女たちの目ですら私を見る目が哀れみを持った目に変わった。
やっちまった。
転校生として一番最悪の方向だ。
幸い、この高校は真面目で有名な進学校らしいから、とりあえず虐められる事は無いのは助かるが……。
ぶっちゃけ、私も思いっきりクラスで浮くことになった。
悲しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます