聖剣女伝説Ⅱ_4

 うさみ達は先程の2組に声をかけ、パーティを組み共に剣の祠に向かっていた。

「いやしかし奇遇だね。まさか3人も剣の一族が集うとはね」

 そう話すのは先程の黒髪の女性。

名前をシュヴァーと言い、貴族のような高価そうな赤い服を纏っている。

 同伴していたスーツの男性はクロイランスと言う名の、槍に変身する事が出来る、ソラスと同じ剣の一族であった。

「こんな事もあるんですね」

 と続けるのは先程のツインテール少女と共にいた青年、イーテ。

 明るめの茶色い髪を後ろで無造作に束ね、片方の肩と胸にだけ皮鎧をつけた

軽装をしている。

 少女の方はアーチェと言う名の弓に変身出来る剣の一族であった。

「やはり、同族は惹かれ合うのでしょうね」

 ソラスは満足そうにしみじみと頷く。

「それにしてもすごいね、ソラスさんが伝説の聖剣女だなんて

本物を生で見れるとは思ってなかったよ」

 アーチェはくるくるとソラスの周りを回りながら眺める。

「ソラスさんって有名人なんですミね?」

「そりゃあそうだよ、聖のつく、いわゆる聖シリーズの血統は

アタシらの一族の中では最も格式が高くその中でも聖剣女は

勇者と共に魔王を討伐したんだから私たちの一族で知らない人はいないよ」

「いえいえ、あれは勇者様たちが偉大だったんです」

「それに、聖剣女はその力の強さ故、選ばれし者にしか扱えないと聞く」

「ああそれ、僕も聞いたことあります」

「となると、ソラス君と共にいるうさみ君も相当の使い手ということだね」

「いや、別にそんな事はないと思うのですミが……」

 そんなやりとりをしながら進むと、やがてうさみ達の前の山壁に神殿の入口が

取り付けられているのが見えてきた。

「あそこですミ?」

うさみが指を差して尋ねる。

「ああ、そうだよ、あれが今回私たちが挑む剣の祠だ」

シュヴァーが答えると、一同はその大きな入口を見据える。


「では、入る前に我々は武器の姿になる事にしましょう」

 入口の手前までたどり着くと、クロイランスがそう言い。アーチェとソラスも

頷く。

 まず、アーチェの体からは赤い光が放たれるとクロイランスも続き漆黒の光を

放ち出す。

 最後にソラスも両足を揃え両手を左右にピーンと伸ばすと金色の光を放ってゆく。

 うさみはそれを眺めながら想像する。前回ソラスは仰々しく変身したかと思いきや頭から刃が生えるだけであった。

 となれば槍、クロイランスはソラスと同様に頭から巨大な槍が生えるのだろうか。

 それはまあわかる。しかし弓になれるというアーチェの方はどうなるのだろう、

 頭から弓の弦でも生えて足先につながり背中を逸らせるのか。

 しかしイーテの体格では彼女を片手で抱えるのは難しそうである。となると、

床に置いて使うのだろうか。

 それに見た所、イーテは矢を持っていない。まさか体の一部が矢になって、それを

飛ばすとなると怖い。

 うさみは好奇心と不安を抱えながらそれぞれの変身終了を待つ。

 やがてそれぞれの光が完全に全身を覆い、大きく光った後、四散して

その光の残滓の中から武器となった各々が姿を現す。

 クロイランスは高級感のある黒い柄に金色の装飾が施され、さらに所々

深い緑の宝石が施された豪奢な槍となっていた。

 アーチェは流線形の赤いハンドルに白銀のリム、所々にスタイリッシュな装飾が

施された美しい弓になっていた。

「なんか思ってたのと違いますミ!?」

 うさみはソラスの方を見る。

 ソラスだけは前回同様、頭から巨大な刃を伸ばし両手と両足をピーンと伸ばしていただけである。

「ちょっと!? なんであっちの2人はちゃんと武器に成れてるんですミ!?」

「えっ、なんでって、それじゃ私がちゃんと成れてないみたいじゃないですか?」

「頭から剣の刃が生えただけですミよ!?」

「それだけ、元の姿の時点での完成度が高いってことですよ。

頭から刃を生やすだけで武器として完成する、ですが、故に聖剣女たる私を

扱えるのは選ばれたごく一部の者だけなのです」

「いや、めちゃくちゃ持ちにくいだけなんですミが!?」

 うさみはそう言いながらソラスを抱え、武器としての扱いづらさを周りに

アピールする。先程ギルドで話していた通り、以前より明らかに重くなっていたが、それは口に出さずにおいた。

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