第5話 聖剣女伝説Ⅱ 編

聖剣女伝説Ⅱ_1

 うさみがドラゴン(正体はトカゲだったが)の討伐を終えてから

一週間程たったある日。

今日もまた、黒魔女亭に来客を知らせるドアノッカーの音が響く。

「はーいですミ……あら?」

「どうも、お久しぶりです! うさみ様!」

 そこに居たのは聖剣女クラウソラス、通称ソラスであった。

「そんなにお久しぶりでもないのですミ。ソラスさん、勇者を探す冒険の旅に出たのではなかったのですミ?」

「冒険には出てるんですが基本日帰りで、今も寝泊まりは教会です」

「なんだ、そうだったんですミ。それで、また何かお館様にご用なのですミ?」

「いえ、今回は直接うさみ様にお願いしようかと」

「うさみにですミ?」

「ええ、実は緊急の事案があるのです」

ソラスは改まった表情で言う。

「緊急の事案となですミ?」

「この国から離れた所にあるハテーノ大陸に、剣の祠というクリアすると

武器に新たなスキルを付与できるダンジョンがあるんですよ。

で、今そこで期間限定で開催されている新しい力をを得られる試練の期限が

迫っていて、終わる前にどうしても取っておきたいんです」

「スキルを付与ですミ?」

「要は新しい能力を得られんです。それで、今回のダンジョンクリアで得られる

スキルは装備者の全ステータスを上げさらにあらゆる状態異常を無効化できる

という、超優秀ないわゆる人権スキルという話でして、あったら便利どころか

これなしでパーティに参加したら地雷扱いされるレベルだとかで。となれば世界を

救う聖剣女としては、これを取り逃す手はありません。それでうさみ様にまた是非

ご協力頂きたく」

「えー、なんでまたうさみですミ? 他に組めそうな人は見つからなかったの

ですミ?」

「いやそれがですね、冒険者ギルドに紹介して貰って何人かと面談したんですけど、

この人だって人がなかなか見つからなくて、特に男の人だと、抱えると気に胸触られるんですよ!事故だとか言って、絶対わざとですよね? 完全にセクハラですよね?」

ソラスは身振り手振りで怒りを表現しながら話す。

「いやー、それは不可抗力じゃないですミかねぇ? この前の時はうさみも何度か

ニアミスしてましたミ。自意識過剰なのではないですミ?」

「絶対そんな事無いですって! セクハラですって!……まあとにかく、

そう言うわけなので今回もお願いしますよ。毎日お暇だと聞きましたし……」

「だっ、だから、別に暇ではないのですミ!」

うさみはそう声を荒げるが、暇だった。

「それに、今回はきちんとお礼もさせて頂くつもりです」

「お礼ですミ?」

「1時間1800円で夜10時以降は25%アップ、

交通費は全額支給でそれプラス出向手当2000円でいかがでしょう?」

「中々に割のいいバイトですミ……うーむですミ」

 うさみは腕を組んでしばし考える。

 ちょうど今月のお小遣いの残高に難儀していた所だった。

「でも、ハテーノ大陸ってすごく遠いですミよね? うさみは人造人間ゆえ、

週一でメンテナンスを受けないと生命活動を維持できないのですミ。ゆえに

一週間以上の出張は無理ですミが」

「行き帰りは大砲なので往復で1時間かかりません」

「なるほど大砲ですミか、それなら早そうですミ……って、どういう事ですミ!?」

「大砲で目的地まで飛ばしてくれるサービスがあるんですよ。聖剣だけに」

「なんかそれあんまり深く突っ込まない方が良い奴ですミ?」

「あとダンジョンも順調に行けば、だいたい3時間くらいでクリアできるって

話ですから。日帰りで大丈夫なはずです。それにダンジョンの開催期限が

3日後なので1週間かかる事はありません。」

「そうですミか。なるほど、まあそれなら良いですミ。やってみますミ」

「わあ! ありがとうございますうさみ様。じゃあ早速向かいましょう!」

そう言ってソラスはうさみの手を掴んで引き寄せる。

「え? 今からこのまま行くのですミ?」

「ええ、ダンジョンに向かう前に他にもパーティーメンバーを集める必要が

ありますし、善は急げです!」

そのままうさみはソラスに引きずられるようにしてハテーノ大陸まで向かうの

だった。

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